ブラッディバードの女王と騎士団
「あんな個体、どこに隠れてたんだろう……」
私は目を細めながらブラッディバードの女王を見る。高さはブラッディバードの親玉より少し小さいくらい。
「洞窟の中だそうですよ。じっと隠れて卵を産み落としたそうです。親玉は人間を巣の近くに近づけさせないために襲ってきたのかもしれませんね」
ベスパは腕を淡々と話した。
「無きにしも非ず……。ヤクザの親玉が綺麗な女王を守るか……。で、よく知らない冒険者さんが金のエッグルを持って逃げたと」
「そのようですね。金のエッグルを探しますか?」
「あの女王が金のエッグルを見て、そうそうに帰ってくれるのなら、探した方がいいかも。探せる?」
「はい、出来ます。金のエッグルは普通のエッグルと同じ大きさらしいので探すのに苦労しそうですけど、数の力で探しきります」
ベスパが地上八○メートル付近で光ると、ビー達が街や森の中から一度集まり、街全体へと広がっていく。
『グギャアアアアアアアアアアッ!』
女王の鳴き声は品があるかと言われればそう言う訳でもない。脳裏にしっかりと突き刺さってくる騒音だ。
「あれがブラッディバードなのか! あの数はいったいなんだ。昨日、冒険者から聞いていた個体数よりも多いぞ」
先に西門に到着していた騎士さんは武器を持ちながら冷や汗を垂らし、足裏で地面を擦り、脚をじりじりと下げている。
――一人では到底太刀打ちできる相手ではないよな。もっと人数がいないと……。
そう思っていたら騎士達が沢山集まってきた。
数ヶ月前よりも練度が上がっており、皆の表情は凛々しい。強大な敵にも臆さず、我先にと集まってきた行動力が彼らの成長を物語っていた。
私達は邪魔にならないよう、壁際に待機する。すると大柄で顔が結構イケメンな男性が前に出て大声を出す。
「これより、ブラッディバードの討伐を行う! 大型のブラッディバードは七番隊のロミア、トーチ、マイア、フレイの四名に任せ、他の一から六番隊、八から一〇番隊は通常個体の討伐を行え!」
「了解!」×騎士達。
私の視界には女騎士の四名がはっきりと映っている。
四名はそれぞれの武器を持ちながら、堂々と立っていた。あちらからは私の方が見えていないのか、真顔とは言わないが、集中しきっている顔をしており、女性とは思えないほどカッコいい。
「では、火属性魔法にを使ってブラッディバードの進行を抑制する。その間、各部隊に別れ、攻撃を開始せよ!」
イケメンな指揮官が的確な指示を出し、騎士達に命令する。
「了解!」×騎士達。
多くの騎士達が西口から駆け出していく。その間、女騎士さん達は私の姿に気づいたらしく驚いた表情をしていたが、すぐに真剣な表情に戻り、前を向きながら行った。
騎士団の人数は八○名ほど。対してブラッディバードは一五○頭くらい。一人一頭では足りない。女王がどれほど強いのか分からないが、苦戦を強いられそうな雰囲気はある。
騎士達が走り出して数分後。花火が打ち上げられたのかと思うほど大きな爆発音が響く。どうやら魔法を使える騎士が火属性魔法を使い、爆発を起こしたらしい。西門に近づけさせないよう、炎の壁が生まれていた。
火属性魔法はブラッディバードにとって効果は覿面のはず。魔法使いよりも威力は劣ると思うけど、燃えれば羽に引火して焼き鳥になるはずだ。
『グギャアアアアアアアアアアッ!』
女王は火の壁など気にせず、脚の振り上げで火の壁を割り、突進してくる。
「火をもろ共せず、突っ込んできてる。肝が据わってるな。肝っ玉母ちゃんだ」
私が女王をのんきに眺めていたところ、冒険者の方達もゾクゾクと到着し、騎士団の後方に着く。どうやら、騎士達の連携を崩させまいと取りこぼした個体を狙う作戦らしい。姑息な様な、理にかなっているような……。とりあえず、冒険者が到着し始めたことによって、人数は何とかなりそうだ。
「ん~、ベスパ。まだ見つからないの、黄金のエッグル」
「すみません。探しているんですが、なかなか見つかりませんね。街も広いですし、エッグルの大きさを考えると木箱の中とかに入っていてもおかしくないんですよ。普通のビーでは開けられませんから、私が見て回っているんですけど、今のところ、見当たりません」
「この街にはあるんだよね?」
「そう聞いてます。持ち出したにしても、昨日の今日で移動しますかね?」
「王都に向った可能性はなくもない。ある程度探してなかったら、女王も倒すしかないかな。不本意だけど、そうしないと街が危ないし」
「了解しました。もう少し探してみます」
ベスパはシュンッと移動し、街の中を飛び回り、黄金のエッグルを再度探す。
『グギャアアアアアアアアアアッ!』
女王は翼を広げ、巨大な体を更に大きく見せながら全力で走ってくる。
「三人とも、一斉に飛びかかるぞ!」
トーチさんが槍の先を少し下げ、体勢を低くする。走りだす前の構えだ。
「了解!」×ロミア、マイア、フレイ。
ロミアさんは斧を持ち、マイアさんは剣を構え、フレイさんは大剣を振る。
『グギャアアアアアアアアアアッ!』
女王は敵意を放つ女騎士を発見し、大声を出しながら威嚇した。もう、騒音をずっと聞かされ、鼓膜が破れそうだ。
「掛かれ!」
トーチさんが叫ぶと、三人と一緒に走りだし、巨大な女王へと向かった。他の騎士達は通常の個体を倒しにかかっている。女王の討伐を任されると言うことは一〇番隊の中で一番強いと言うことだろう。出世間違いなしだと思うが、女性に対して厳しいこの世界だと強くても難しいかもしれない。
「はああああああっ!」×女騎士達
『グギャアアアアアアアアアアッ!』
女王は翼を広げさらに広げ、空に真っ白なカーテンを作り出した。そう思えるくらいに大きくふわふわなのだ。
「なっ!」×女騎士達。
女王の威嚇行動により、女騎士達はぎょっとし、身を固めてしまった。
女王がはためくと、小さな女騎士達は豆粒のように吹き飛ばされる。突風は木々を揺らし、根ごと、枯れ木を粉々にしながら吹き飛ばしてしまう威力をほこっていた。ただはためくだけでそれほどの威力は出ない。魔力が込められていると思われる。
――ジェット機のエンジンですら、木々を揺らす程度。いや、すぐ近くでエンジンを付けたらわからないか。
女騎士達は体をひるがえし、足裏から無事に着地する。だが、状況は芳しくない。羽ばたきの威力からして女王は魔法が使えるようだ。風属性魔法を無意識に使い、女騎士を突風に襲わせたと考える。
「トーチ、どうする! 風がありえないくらい強かったんだけど!」
ロミアさんは斧を構え直し、少々遠くにいるロミアさんに叫ぶ。
「おそらく魔法の類だろう。魔力を使って攻撃してきたんだ。ブラックベアーの咆哮のようにな。綺麗な見た目とは裏腹に威力がものすごいが、殺傷能力はそこまで高くない。風の合間を探れ」
「了解!」
ロミアさんとトーチさんはまたもやブラッディバードに向っていく。マイアさんとフレイさんも先行した二人に続いた。
騎士団の強さは軒並み上がっており、領主が操っていたブラックベアー一体に崩壊させられていたころの面影はない。騎士達の戦い方として盾を持った騎士が敵の前に出て攻撃を食い止め、後周りの仲間が武器で攻撃すると言った一呼吸置いた戦法だった。連携がとれているので、一つ一つの動作がとても滑らかに行われている。やはり、冒険者さん達よりも連携攻撃ならば、騎士団の方が、殲滅力が上らしい。
「キララ様、見つけました。金のエッグル」
ベスパは私の頭上に戻ってきた。
「ほんと。取って来れる?」
「いえ、とある冒険者さんが大事そうに抱え、放そうとしないので男性ごと連れてこないと難しいかと思います」
「はぁ、面倒臭い。なぜ、売りに出さなかったんだろう」
「金の卵から産まれる個体が知りたかったのか、単なる馬鹿なのかどちらかだと思われます」
「こらこら、知らない人を馬鹿呼ばわりしたらダメだよ。とりあえず、冒険者さんと一緒に金のエッグルを持って来て」
「了解です」
ベスパが光り、どこかへ飛んでくと、何やら空中で暴れながら叫ぶ男性の姿が見えた。
「ぎゃわわわあああ~! ど、どうなっているんだ! お、俺は何でこんなところを飛んでいるんだ! どわぁ、死ぬう~!」
「だれ……。いや、待てよ。どっかで見覚えがあるような、無いような……」
私の視界には高そうな黒い靴、高そうな赤いマント、高そうな冒険者服、高そうな装飾品塗れの剣、あまりに印象が強い見かけに、過去の記憶が舞い上がってくる。
「姐さん(レクーのお母さん)と戦っていた冒険者さんか……。まだ生きてたんだ。とっくに死んでると思ってたよ」
ビー達が、冒険者さんを地面におろす。すると、お尻から地面に落ちた。男性は声が出せないほど悶絶し、転げ回っている。
髪の色は金で、少々長い。顔立ちはまぁまぁ良いが、カイリさんよりも嫌悪感が強い。どこか鼻につく感じだ。匂いは五メートルくらい離れているのに、香水の匂いがプンプンする。はっきり言って臭い。何の香水なのか全く分からないがとにかく臭い。どれだけ良い匂いでも強すぎれば臭いのだ。
「いたた……。いったい誰が俺をこんなところに……、ん? お嬢さん、俺の愛好者かな? いや、すまないね。俺は子供に興味がないんだ」
――何言ってるんだ、こいつ……。
「はぁ、落ちた衝撃で割れていないだろうか」
臭い冒険者は革袋から、金色に光るエッグルを取り出した。すでに外は日が暮れて真っ暗にも拘わらず、なぜか輝いている。どれだけ魔力が込められているのだろうか。想像できない。だが、金のエッグルとか言うあまりにも高額そうな品を目の前の男が持っていると思うと、やるせない。
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