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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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翼の記章

 ガッリーナ村の人から借りた荷台に素材を入れていき、パンパンに詰める。荷台が壊れないか不安だったので、ベスパに頼んで全体を補強しておいた。


「よし! 詰め込み終了だ! あとは街に帰ってバルディアギルドに話を通すだけだよ」


 ニクスさんは大量の肉が落ちないよう、縄でしっかりと固定し、出発の準備を整えていた。


 ――ベスパ、お願いがあるんだけど。


「はい。何でしょう」


 ――今から、川の上流にまで移動していたら時間が無いから、ベスパが試験管の中に入っている特攻薬を流してきてくれる。


「了解しました。ついでに、上流の様子も見てきます」


 ――お願いね。


 私は試験管ホルダーに刺さっていた試験管を八本、空中に投げる。ビー達が完璧にとらえ、川の上流へと飛んで行った。


 私達は帰るが、他の冒険者さん達はもう少し滞在するそうだ。


 まだ見つかっていないエッグルや大量発生の原因などを調べるのだとか。


 残る人はベテラン冒険者らしく、バルディアギルドに所属して長い方々らしい。ランクはBランクやCランクの方が多いため、強さの指標ではなく仕事が出来る人達だと言うとしっくりくる。


 おじさん達が多いけど、皆さん凄いやる気がみなぎっていた。巨大なブラッディバードを倒したのはニクスさんと言う新米冒険者であり、ベテランの自分達が負けていられないと言った感情がひしひしと伝わってくる。


 仕事が出来る大人とは新人に闘争心を燃やせるような人なんだろうと思う。


 冒険者は特に覇気が無いと続けられない職業だ。皆さん、面構えが違う。


 ――仕事を終わらせてお酒を早く飲みたいぜと言っているが、さっき飲んでた気がするんですけど……。大丈夫なんでしょうね。


 ただ一人目を引くのは無駄に赤いマントに派手な装飾品の付いた剣、黒い靴、金髪ロン毛の冒険者だった。どこか見覚えのある姿だったが、全く思いだせない。つまり、記憶に残らないほどどうでもいい相手と言うことだ。


 私はレクーの引く荷台の前座席に乗り、革の手袋をはめた。


「キララ様、ただいま戻りました」


 ――お疲れ様。どうだった。


「はい。綺麗な川でした。ですが、魔造ウトサの影響を大きく受ける前に特効薬を流せたので、すぐに元に戻ると思われます。この辺りの森や山で魔物たちが暴走すると言った事件は起こりにくくなりました」


 ――そう。ありがとう。じゃあ、帰ろうか。今日は沢山の収穫を得たからね。素材に戦い方、魔物、仲間。これだけ一気に手に入るなんて運がいいのかな。まぁ、今まで散々運が悪かったから、やっと運が回ってきたのかもしれない。でも、この運は私が手繰り寄せたもの。そう思えるよ。


「キララ様の行動が無ければ何も得られなかったわけですからね。キララ様が手繰り寄せたと言っても過言は無いでしょう」


 ――だよね、だよね。あと、転移魔法陣の中に長時間いるとクロクマさんがぬいぐるみのような可愛らしい姿になってしまう。加えて、魔力を注げば復活すると言うのもわかった。ついでにベスパのテイマー契約みたいなよくわからない資格も取れたし、万々歳だね。


「ちょ、ちょ! 最後のやつが一番大きな手柄ですよ! テイマーと言う資格を取れたんですから、もっと喜んでください!」


 ベスパは自分の活躍以上に、私の下部の証とでも言いたげな表情でテイマーの首飾りを指さす。


 胸もとに私の名前とベスパの名前が彫られた銅板があり、いつか白金になるのかなと思ったりもする。


「じゃあ、皆さんは一人で引っ張って来てくださいね~」


「き、キララちゃん。バートンを交代で……」


「あ~、私は一人で荷台を引くなんて絶対に出来ないので、交代できません。皆さんなら出来ますよ。私が応援します!」


 ニクスさんとミリアさん、ハイネさんは荷台を一名で引っ張っている。荷台の構造は人力車の荷物を運ぶ形状に特化した形をしており、主に農業で使われているものだと思うが、今はブラッディバード素材を運ぶために使っている。


 私はレクーの引く荷台に乗れるのでとても楽ちんなのだが、他の三名は荷台がミシミシ言うような重さの素材を乗せ、人力で引いているのですごく苦しそうだ。


 ミリアさんは獣族なので、力が強く、案外楽そうだ。


 ハイネさんも魔法を使い、自身を強化しているので、ギリギリ運べている。ただ、ニクスさんはほぼ人間なので、とても辛そうに荷台を引いていた。


 私は頑張っているニクスさんに力を付けてもらおうと、応援しながら、鼓舞する。


「ニクスさん頑張ってください! 街まであと一五キロメートルくらいですよ~。このままの速度だと絶対に今日中には帰れませんよ~」


「き、きつい……。腕と脚が破裂する……」


 ニクスさんの腕と脚に血管が浮かび上がり、汗がにじみ出ている。先ほど沢山動いていたのですでに体力が底をついているはずだ。


 その姿を見て私の応援が限界のニクスさんをどこまで動かせるのか、やってみたくなった。


「頑張れ、頑張れ、ニクス~! 頑張れ、頑張れ、ニクス~! 凄いぞ、凄いぞニクス~!」


 私は声だけでニクスさんを応援した。踊りや表情などのトッピングは無しで声だけで限界の人間がどこまで動けるのか、ニクスさんに研究対象になってもらおう。


「な、なんか元気が出てきた……。応援されると、こんな力が出るのか……」


 ニクスさんは歩みをじりじりと進め、調子が上がってきたのか、少々小走りしながらでも荷台を引けるようになった。自転車と同じで、動きだしたら止まりにくい構造なのかもしれない。あまり速度を出しすぎると、衝突しかねないので、ゆっくりと走る。


 ニクスさん達は一時間三〇分かけて一五キロメートルほど先の街に到着した。


 時計台を見ると、午後六時。ただ、九月ごろと言うのもあって日の沈みが早くなり、もう暗くなり始めている。後ろから着いてきた三名はヘトヘトで歩いているのがやっとの状態だ。


 私の荷台に乗っている素材は私が貰い受けける。私は素材を売る気が無いので、このまま村に向かうつもりだ。そのため、私がバルディアギルドに向う必要がない。『妖精の騎士』さん達がどれだけ儲けようと私には何にも関係がないのだ。


「ニクスさん、もう暗いですし、私は村に帰ります。また、何かの機会があればご一緒させてくださいね」


「あ、キララちゃん、ちょっと待って……」


 ニクスさんは汗だくの状態で息を整えた後、私を引き止める。


「どうかしましたか?」


 私は荷台の前座席から降り、ニクスさんのもとに向かう。


「えっと、色々と……ありがとう。キララちゃんがいなかったら、ここまで成長できなかった。僕、今回の戦いで自信が少しだけついたよ。これからも、依頼をたくさん受けてもっともっと強くなる。キララちゃんの枠も取っておく。いつでも戻ってきてくれていいからね」


 ニクスさんは冒険者パーティーの枠を渡しように開けておくと言うもったいない発言をした。私の枠に他の冒険者を入れた方が確実に楽になるのに……。


「ありがとうございます。でも、三人よりも四人、五人といた方が戦いで死ぬ確率は下がると思います。まぁ、人数が増える分、色々と考えないといけない問題も出てきますけど、ニクスさんなら大丈夫でしょう。じゃ、私はこれで失礼します」


「あ、ちょっと待って。やっぱりこれも渡しておくよ」


 ニクスさんは胸もとから小さい記章(バッジ)を取り出した。赤っぽいバッジで翼の形をしている。彼は私の右手を優しくつかみ、バッジを置いた。


「これはいったいなんですか?」


「えっと……、僕の実家の家紋だよ。ルークス王国の王都から北に少し行くとフレイズ領って言うの場所があるんだけど、そこの領主が僕の父さんなんだ。もし、訊ねることがあったら、この記章を見せたらすぐに門を通してくれる。これと言った使い道はないけど、チンピラに絡まれたら見せるといい。少しくらいはご利益があるかも……」


 ニクスさんは苦笑いを浮かべ、後ろのミリアさんとハイネさんも笑っている。


「あ、ありがとうございます……。なんか、カッコいいのでとりあえず貰っておきます」


 私は翼のような赤い記章を手に入れた。名前がある領土の記章、良いご利益があるといいけどって言っていたけど、お守りみたいなものなのかな……。


 私は記章をポケットに突っ込み、ニクスさんに一礼して荷台の前座席に戻る。


「よし、レクー。村に帰るよ」


「わかりました」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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