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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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弓と魔法の共通点

 ニクスさんが頑張っているところを、ミリアさんとハイネさんはしっかりと見ていた。自分達も何か出来ないかと考えているのか、ミリアさんは手のひらを握りしめ、拳をつくりながら震えている。


 ハイネさんは今も弓を引き、矢をいつでも放てるよう準備をしていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。やっぱり強いな……。ここまで強い魔物と戦った覚えがない。でも、戦わないと……、僕が変われるのは今しかない。大丈夫。僕は負けないっ!」


 ブラッディバードに蹴られ、地面を何度も転がり、服に大量の砂ぼこりがついているニクスさんは勢いが弱まったのち、すぐに立ちあがった。そのまま壊れた木剣を捨て、空中に浮く新しい木剣を握り、ブラッディバード目掛け、自ら走り出す。


 先ほどまで受け身だったニクスさんが攻め気だった。心境の変化が見てわかる。


 ニクスさんが歯を噛み締め、両手を大きく振り、大股で走っているとブラッディバードの親玉も、脚が治っていない状態で無理やり走る。


 両者共に目の前の生き物にしか興味がなく「戦って勝ちたい」と言う気持ちだけが先行している。


 凄くいい試合で、私は心臓の鼓動が高鳴り、呼吸が荒くなる。


 ――近接戦闘は死ぬ可能性が一番高いからか、得られる臨場感がたまらない。やばいな……、私、生と死が隣り合う戦いに染まりかけている。娯楽が無いせいで、身が奮い立つ感覚を得られないんだよな。殴り合いの決闘を見ているみたいだ。


 私も近接戦闘をしてみたいのだが、非力なので難しい。


 私が戦う時は魔法を使って遠くから攻撃しているので、毎回同じ効果が発動する。そのため、見る情景は同じなのだ。毎回同じだと戦闘に飽きてしまう。動ける砲台は強いが、ゲームだと毎回脇役だ。なんせ、地味だから。強いと楽しいは同じようで違う。強くて楽しいのは初めだけ、あとは虚しくなっていく。同じ強さの者と戦うと勝つか負けるかの勝敗が着く。負ければ死。だから奮い立つのだ。その時に勝てば、得られる快楽物質の量は計り知れない。 


 ――私もシャインくらい前に出て戦えたらいいんだけど、私の力と技術じゃな……。


 私には剣の技術が乏しい。


 剣道は日本の武道を体験する番組で何度か行ったが、素振りとちょっとした試合をしただけの本当に体験だけで極めたとは言い難い。なんせ、日本で武器を持っていたら銃刀法違反で捕まってしまう。そのため剣道はあまり実用できなかったと言うのが極めようとしなかった理由だ。逆に、柔道の方は結構やっていた。殴る蹴ると言った空手よりも柔道の方が相手を制すると言う点でアイドルだった私に利点が多かった。襲い掛かる男を何人か捕まえた経験もある。ただ、この死ぬか生きるかと言う戦いの中で柔道は魔物に使えない。対人の格闘術なので、大型の魔物には使用できないのだ。


「弓道ならどうだろう? 出来るかな……」


 私は体が小さいので長い弦を引いて矢を放つ弓を攻撃に使うと言った発想が今までなかった。魔法と弓、どちらも遠距離攻撃。ならば魔法と同じように狙いを定めて矢を放てば敵に当たったりしないかなと楽観しする。


 先ほど、最弱のビーがブラッディバードの脳天をぶち破ったのを見て、魔力で補強すれば非力でも物理攻撃が出来るのではと考えたのだ。ただ、私の身長が一四○センチメートルもないチビっ子に加え、細腕の非力な少女なので、矢を遠くまで飛ばせるほど弦を引けない。つまり、ハイネさんが持つ実物の弓を私は使えない。


「なら、魔力で作ってしまえばいいのでは……」


 私は数週間前から、魔力操作の鍛錬を行っている。魔力で何かを作り出すと言う行為はとんでもなく労力がかかり、その場に存在させておくためにはえげつない集中力がいる。一度、生み出せば勝手に存在してくれるようになるも、そこまで集中し続けるには綱渡りをしながら、折り紙を作るくらい大変だ。


 ――魔力で一匹の蜂(魔力体)を生み出すためには、私の魔力をほぼ使わないと不可能。でも、数秒でいいのなら、可能かもしれない。


 私はハイネさんの持っている三日月状の弓を参考に、魔力で形を模してみる。


「ふぅ……。集中……」


 私は左手に魔力を集中させて手の平から少しずつ放出する。放出された魔力を魔力操作によって弓の形を模っていく。すると、少しずつだが金色の光を放つ弓が模られ始めた。使えるかどうかはわからないが、八〇秒ほどで模造品が完成した。


「はぁ、はぁ、はぁ……。簡単なつくりでも、凄く集中力がいるな」


 私は肩で呼吸をするように大きく動かす。


「キララ様。いったい何をされているのですか?」


 私が魔力操作を行っているのを見ていたベスパが頭上に降りてきた。


 ――いや、私も成長したいなって思ってさ。物理攻撃の弓をやってみようと考えて魔力で弓を作ってみたの。


「なるほど。矢は魔法とよく似た攻撃ですもんね。キララ様は得意そうです」


 ――ベスパ、矢を一本だけでいいから作って来てくれる。


「了解です」


 ベスパは森に直行し、すぐに矢を持って来た。羽もしっかり三枚付いている。きっとブラッディバードの毛を付けたのだろう。ただ、矢先の形状が尖っておらず、丸っこい。


 ――ベスパ、矢なのに矢先がなんで尖っていないの?


「弓の練習をされていないキララ様が、撃った矢が変な方向に飛んでも刺さりにくいようにしてきました。あと、この方が私もくっ付きやすいので」


 ――なるほど、安全の配慮ね。丸っこい理由はわかったけど、くっ付きやすいってどういう意味?


 ベスパは矢先の先端を持ち、お尻から針を出している。どうやら、ベスパ自身が矢尻の役目を果たしたいらしい。


 ――もしかして、ベスパが矢尻になるの?


「もちろんです。なんなら、他のビーにもお願いして、ビーの矢を作らせますよ。キララ様が放った瞬間にビー達が散乱し、敵をビーの巣にします」


 ――想像したら吐き気がしてきた。ビーの体を魔力で強化したら頭蓋骨も粉砕しちゃうくらい強くなるってどうなってるの?


「キララ様の魔力と私達の体がとんでもなく相性がいいのですよ。女王の魔力は部下を奮い立たせ強靭な体にします。死を全く恐れない者達の攻撃はさぞ強力でしょう。なんなら、キララ女王様のために命を捧げられるなど、ビーにとって最も喜ばしい散り方ですっ!」


 ベスパは熱弁し、なかなか狂った理論を言い放つ。


 ――命の価値が低すぎるせいで、全員が特攻を全く以て嫌がらない……。逆に喜んで飛んで行くなんて……恐怖だね。


「さ、キララ様! 私を早く撃ってください! キララ様のためになら、私はなんにでもなりますよ!」


 ベスパは、矢先にくっ付き、お尻を進行方向に突き出しながら、私の顔を見てはぁはぁと息を荒げ、傷めつけてほしそうな表情をする。顔がなまじイケメンなのが余計に気持ち悪さを助長していた。


 私に痛みつける性癖は無いのだが、ベスパが勝手にM属性になってしまっているのだ。


 ――まあ、ビーだから仕方ないか。「女王様の命令は絶対!」とか、どんな国家だよ。でも、よくよく考えたら女王蜂って滅茶苦茶S属性っぽいよな。私、Sなのか? はぁ、どっちでもいいや。


 私はベスパから受け取った一メートル八センチの矢を持ち、魔力で作った弦に掛け、矢と一緒にグググっと引く。弧の役割を果たしている魔力は元に戻ろうとする力もしっかりと再現されており、矢が飛びそうではあった。だが、狙いを定めていられる余裕が無い。


「グググ……。これ、結構力がいるなぁ……」


 私が弦を引いていると、矢先にいるベスパは魔力を凝縮させ、体が縮こまる。五センチほどの体長になり、矢尻になった。


「キララ様、私が照準を合わせるので、止まって放ってください」


 ベスパはスコープの機能でもあるのか、標準を合わせると言ってきた。今、私は眼を開けていられないくらい、弦を引っ張っているので正直ありがたい。


 私が弦を思いっきり引き切ったころ、ベスパは話す。


「キララ様、このまま止まってください。そのまま時が来るまで耐えてください」


「こ、これ、結構きつい……」


 腕の力が貧弱な私は弦を長い間引いているなんてほぼ不可能だった。すでに腕がプルプルと震えている。筋肉が悲鳴を上げているのだ。


『グギャアアアアアアアアアア!』

 

 ブラッディバードの強烈な咆哮が耳を劈く。視界が見えないので恐怖から身が縮み、余計な筋力を使ってしまった。


「くっ! こいつ、どれだけ硬いんだ!」


「ニクス! 体をどれだけ狙っても駄目! 弱点の頭を狙わないと、体の羽毛のせいで威力が分散してるっぽいよ!」


 ミリアさんがニクスさんに叫んだ。どうやらニクスさんが戦い、ミリアさんが状況判断をすると言う、役割を二分する作戦に出たのだろう。判断力の低下しているニクスさんにとってはいい作戦だ。


「わかってるけど……。ブラッディバードの体幹が強すぎて全然倒れないんだ。脚の骨を何度折っても再生される……。どうしたら」


『グギャアアアアアアアアアア!』


 ブラッディバードの咆哮が聞こえ、地面を移動する振動も足裏からはっきりと感じる。地面の振動が無くなったとたん、親玉が跳躍したのだとわかった。


「くっ! 何度も蹴りにあたるかよ!」


「キララ様、今です!」


「ふっ!」


 私はベスパの合図で右手の弦を離した。すると、私の耳元を魔力の弦が擦過。耳がじんわりと痛くなる。加えて矢が風を切る音を聞く。矢はベスパが発生させた風魔法で加速したのか、射出時に発生した風で私の髪が後方に靡いた。


 目を開ける暇もなく、硬い物質を拉げたような……、突き破るような……、身の毛がよだつ不快な音が遠くで鳴り響いた。想像するに放たれた矢が硬い硬い物質に当たり、物体を拉げさせて貫通したのだろう。


『ドドドドドドドドドドドドドドドガッツ!』


 矢は未だに飛んでいるのか、木々を突き破りながら移動し、何かに勢いよく衝突して止まった。目をつぶっていても感じ取れるベスパの位置は私から約八八八メートル先。どれだけ飛んでいるんだよ……。おかしいでしょ……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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