闘技
初めは人同士の戦いだった。
会場は熱狂につつまれ、会場の空気がそして地面が揺れている。
私も初めて見るのだが、手に汗握るほど白熱した戦いが繰り広げられており、凄く楽しい。
殺し合いではなく、何方かが戦闘不能になれば終了するので、ボクシングやプロレスのように健全なスポーツだ。
戦いはトーナメント方式で行われており、エントリーした挑戦者たちが戦うという仕組みだった。
優勝者には賞金が出るらしく、挑戦者たちは皆手を抜くことが無い。
今年エントリーしたのは150名。
しかし、既に予選が行われており20人まで減っていた。
少ないように思えるが、どの人も王都や街で有名な冒険者さんらしい、私は1人も知らなかったけど。
どの試合も凄くいい試合ばかりで私は応援し疲れてしまった。
そして決勝戦が終わり、優勝者が決定した。
「優勝は、ブレイクさんです!おめでとうございます!それではこちらが優勝賞金、金貨100枚です。再度皆様でブレイクさんに大きな拍手をお送りしましょう!!」
会場から多くの拍手喝さいが贈られる。
「では続いて、討伐部門に移りましょう!討伐部門のエントリー者は5名!こちらも相当な実力者です!それぞれ討伐対象にはランクが割り振られており、ランクが高ければ高いほど、報酬が上がっていきます!今回用意している魔物は5体、ビッグラビット1体、シルバーウルフ3体、サラマンダー1体、ブラッディバード2体、ブラックベアー1体、というラインナップになっております!」
「うわ…」
ブラックベアーという名前を聞いただけで私の全身の毛が逆立つ。
「キララ様大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫、こんなところまで襲ってこないでしょ」
私は会場の中断あたりに座ってみている。
この状況で私の方に来るなんてことは100%ない。
いや、フラグじゃないよ!
――やっぱりもうちょっと後ろの方に行こうかな…。
そして討伐部門が開始された。
挑戦者は1人でビックラビットから戦っていき、最後のブラックベアーまで倒しきることが出来れば、最高額の賞金が貰えるらしい。
ブラックベアーを倒せれば、金貨500枚…。やけに賞金が高いな、きっとそれだけ倒すのが難しいんだろう…。
運営の想定道理といえば想定道理なのだろうが、4人中3人がブラックベアーまでたどり着くことが出来ず、リタイアしている状態だ。
今戦っていた5人目の冒険者もブラッディバードでリタイアしてしまった。
初めて見る魔物たちだったが、やはり人間1人だけで戦うには難易度が高いみたいだ。
どの選手も自身のスキルを使用しているらしいが、決定打には至っていない。
5人の中で唯一、ブラッディバードを倒せた冒険者の人が今の所、優勝候補になっている。
そして、リタイヤした冒険者がステージを降りていくのと入れ替わりで、ブラッディバードを倒した冒険者の人がステージ上に登場した。
周りは黄色い声援が飛び交っている。
「あの人…そんなに有名な人なの?」
派手な黄色の髪に対して、ぱっとしない鎧や装備ではあるが綺麗に磨き上げられており、しっかりと手入れをしているように見える。
腰には使い慣れていそうな、シンプルな剣が1本。
自身の身長に合わせて作ってもらったのだろう、長さ、形、どれをとっても綺麗に収まっているように見える。
身長は大きく180㎝くらい有るのではないだろうか、顔もまぁまぁイケメンである。
「皆!応援ありがとう!俺はここでブラックベアーを倒す!その姿を目に焼き付けて行ってくれ!」
盛大にその冒険者はブラックベアーを倒す宣言をし、さらに会場を盛り上げた。
初めて見た時は口だけかと思っていたが…ブラッディバードをあっという間に2体倒してしまっていたから、最後のブラックベアーもあっという間に倒してくれるかもしれない。
その剣筋はあの時見たアイクほどではないけれども、高身長から繰り出される点から見ると、威力はあの冒険者の方が上だろう。
「何と!ノルド・パトレイジーさんが最後のブラックベアーに挑むようです!ここの戦いがきっと、生誕祭の最高潮になるでしょう!皆さま、この世紀の一瞬を目に焼き付けて行ってくださいませ!」
「とうとう戦うんだ…どうなっちゃうんだろう…」
魔法によってブラックベアーの閉じ込められた檻が空宙に浮いている。
――中にいるブラックベアーは大人しい…いや…違う、あの目は絶対にやばい奴の眼だ…。
ブラックベアーは元々全身真っ黒だが…そいつの瞳は『黒』何て単純な色じゃない…もっとどす黒い…違う…深い…。この世界の光がその瞳に全く入って行かないような…そう!闇だ…。
「こちらのブラックベアーは今まで多くの人を葬ってきた憎きブラックベアーにございます。とある冒険者が捕獲した際、『生誕祭』恒例行事である闘技のために我々が買いとりました。そして捕獲してから今日までこのブラックベアーには食事をさせておりません!その為、大変凶暴になっております。最悪の場合、食い殺される可能性もありますが…ここまで進んできた、ノルドさんならきっと勝って頂けるでしょう!」
「なんかすごく怖いこと言ってるけど…大丈夫なのかな…そいつ絶対真面じゃないよ…」
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