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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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ブラッディバードの親子


「よし! 一体目のブラッディバードを討伐完了だ! ミリア、すぐに血抜きをして解体してしまおう」


「そうだね。腐ったらもったいないし、お昼にお肉を食べたいから、すぐに解体しちゃおう」


 ニクスさんとミリアさんは倒れ込んだブラッディバードに駆け寄り、短いナイフでさっさと解体していく。マグロの解体ショーを見ているわけではないが、似た楽しさを得た。


「皆さん、凄く早い手際ですね。戦うよりも解体の方が慣れているんですか?」


「うん。僕達は冒険者さんの付き添いが多いから、雑用ばかりやらされるんだ。こういう解体もやらされるから、いつの間にかうまくなっちゃって……」


 ニクスさんは喋りながら、ブラッディバードを業者かと思うくらい速く解体していく。腐りやすい内臓を取り出し、肉の少ない首を根本から落としたら、太い木に逆さに吊るし、血を抜く。血が抜けたら、体に纏わりついている羽をむしる。鳥の柔らかそうな皮が露出したら、脚や胸など、部位ごとに解体していき、綺麗な袋に入れて行った。ただ、柔らかく暖かそうな羽は捨てられていた。


「あ、あの。何で羽は集めないんですか?」


「え? 羽はあまり高く売れないから持ち物の削減で捨てていくんだ。内臓は燃やして土に埋める。魔石は取り出して保管。魔物の解体では結構いろんな作業があって面倒だから、何かを省かないと時間がなくなっちゃうんだよ」


 ニクスさんはメロンほどの魔石を持ち、乾いた布で黒い血を拭き、麻袋に入れていた。


「なるほど……。労働の削減のために羽を捨てているんですね。じゃあ、私が貰ってもいいですか?」


「え、いいけど……。ブラッディバードの羽を使って何をするの? 羽ペンを作って売ろうとしても、ブラッディバードの羽は高級品じゃないから売れないよ」


「いえ、ちょっと考えていることがあって、私には必要なんですよ」


 ――ベスパ、ブラッディバードの羽を『転移魔法陣』の中に入れておいて。


「了解です」


 ベスパは地面に落ちている毛が細く、柔らかそうなブラッディバードの羽を一か所に集め『転移魔法陣』で異空間に保管した。


「羽が消えた……。いったいどこに行ったんだ……」


 ニクスさんは何が起こったのか分からない様子で、私の顔と羽のあった地面を見回している。


「さ、気にしてないでドンドン行きましょう!」


「き、気にするなと言われても……」


 ニクスさん達は解体した肉や魔石を入れた麻袋を荷台に置いて行く。私は前側の帆を閉めて後方に回り、荷台の床に魔法陣を描いた。


「えっと……『フリーズ』」


 魔法陣に魔力を流すと、荷台の中は雪が降りそうなほど寒くなった。これで肉が腐るのを遅れさせられるはずだ。


 私は後方の帆も、しっかりと閉めて土埃や雑菌が入り込まないように心掛ける。


 私達は森の中を歩き続けた。するとブラッディバードが出てくる出てくる。一頭倒したらまた一頭、その一頭を倒したら、また一頭。


 もう、ブラッディバードの入れ食い状態だ。儲かって仕方がないのだが、人の体力と言うのは限界があるので『妖精の騎士』の三名はヘトヘトを越えて、フラフラになっている。


 もう、体を一歩も動かせないと言った状態だ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。い、いったい何頭いるんだ……。でも、これだけ素材があれば、一月は生きていける資金に十分なるはずだ。あとはガッリーナ村に戻って少し休んでから街に帰ろう」


 ニクスさんは森に入って二時間もしないうちに街に帰ると言う作戦を実行しようとした。


 私としては高級食材のエッグルも欲しかったので残りたかったのだが、三名の疲れ具合を見てガッリーナ村にいったん戻ろうと判断する。何事も速切りが大切だ。


 ――ベスパ、ガッリーナ村に案内して。


「了解です。ガッリーナ村は東の方向にあります」


 ベスパはレクーの前に移動し、進むべき方向を向いて移動した。レクーはベスパを追いかける。


 二〇分もしないうちに森を出て、ガッリーナ村に到着した。


 ガッリーナ村では冒険者さん達が昼休憩をとっており、半分宴会場のような賑わいを見せていた。


 昼間っからお酒を飲み、ふっくらと焼き上がったぷりぷりの肉にくらいついている。手に入れたエッグルを囲みながら酒を交わし、肉をたらふく食っていた。もう、花見ならぬエッグル見だ。


 冒険者らしいと言えば、それまでだが、周りには怪我をした冒険者さん達もいるわけで……、村人も普通に生活しているのだ。その点を考え、場を弁えてほしい。


「さてと、僕達はどこで昼食にしようか」


 ニクスさんは広場を見回し、開いている場所を見つけると我先にと走っていき、私達に手を振る。会社で行われる花見の会場を取りに行く新人じゃないんだから……、もう少し落ち着いた行動をだね……。なんて、心の中で思うが、きっと彼の善意だろう。ありがたく受け取っておこう。


 レクーはニクスさんに近づいていき、停止した。


「じゃあ、キララちゃん。僕達は昼食の準備をしているから、遊んできてもいいよ」


「え……。あ、あぁ……、そうですね。遊んできます!」


 私も手伝う気満々だったのだが、自分が未成年であると言うのと、少々子供っぽい体型なので子ども扱いされてしまった。


 私は荷台から降りてレクーと荷台を繋いでいる縄を解く。


「うわっ! 荷台の中がまだ冷たいよ。キララちゃんの荷台、どうなってるの?」


 ミリアさんはキンキンに凍った肉を取り出し、荷台と肉を見回していた。


「腐らないように荷台の中に『凍る(フリーズ)』の魔法陣を付与してあります。新鮮な肉の美味しさが味わえると思いますよ」


「そ、そうなんだ……。でも、魔法ってずっと発動していられるものなの?」


「私は魔力量が多いので小さな魔法陣とかなら余裕で発動し続けられますよ」


「す、すごいね。まだ幼いのに魔力量が膨大なんて、産まれつきかな。って、さっきから魔力量が全然減ってないじゃないか。どうなってるの……」


 ハイネさんは瞳を光らせながら私の方を見て、またもや驚いていた。


「私は魔力が回復しやすい特異体質と言いますか、魔力を使ってもすぐにもとに戻っちゃうんです」


「そんな人間がいるのか。末恐ろしいな……」


 私はミリアさんとハイネさんに頭を下げて、レクーにまたがる。「遊びに行っていい」と言うことなので森の方へと向かった。


「キララ様、一人で森に入られるのは少々危険だと思います」


 ベスパは小さな警戒音を慣らしながら、私の右斜め上を飛ぶ。


「でも、高級食材のエッグルが欲しいじゃん。私は、エッグルはどうしても欲しいんだよ」


「そこまでエッグルを欲しがる理由は何ですか? 高い値段で売れるからですかね?」


「それもあるけど、やっぱり食べたい。大きなエッグルを熱々の鉄板に出して貪り食いたい。エッグルはどんな味がするのか確かめたいの!」


「そうですか。わかりました。では、キララ様。私達が総動員してエッグルのありかを探しましょう」

 

 私の熱意が通じたのか、ベスパもやる気を持った。

 

 ベスパは翅をブンブンならし、森の一八メートルを超える木よりも高く飛んで行く。ベスパが一瞬光ると森の中から大量のビー達が集まり、密集した。八秒後、空中でビー達が波紋状に広がっていく。


 ベスパは八〇秒ほど停滞していると、私のもとまで戻ってきた。


「キララ様。エッグルの位置がわかりました。私についてきてください」


 ベスパはレクーの前を飛び、先導し始めたので私はしっかりと付いていく。


 レクーの脚で三分ほど走ったあと、ベスパは止まった。私はレクーから降りて茂みに隠れる。


「いました、ブラッディバードの雌です……。あの巣の中にエッグルがあります……」


 ベスパは念話で私に話かけてきた。念話なら、ヒソヒソ話す必要もないと思うのだが、彼は雰囲気を作るために行っていると言う。


 私の視界の先には、地面に枯れ木や蔓を使って作られた大きな巣があり、そこに座っているブラッディバードの雌がいた。


 雌が血流を促進するために立ち上がった時、巣の中に大きな白い卵がいくつもあった。ただ巣から出ているエッグルも見える。


 私はエッグルに見覚えがある。パッと見、一〇〇パーセント、エッグルだ。ただ無精卵か有精卵によって価値が大きく変わる。無精卵なら高級食材。有精卵なら価値無し。


 ――ベスパ、巣から漏れているエッグルは有精卵、無精卵。どっち?


「あのエッグルは生きているので有精卵になりますね。母親に見捨てられているようです。巣の中にあるのは大半無精卵なので、温めても無駄な方を一生懸命に温めているようですね」


 ――やっぱり馬鹿だ……。まぁ、見た眼じゃわからないか。さてと、それじゃあどうやってあの母親を巣からどいてもらうか考えないと。倒してもいいけど、倒しすぎても自然が崩壊するからやめておきたい。出来るのなら、陽動で勝手にどこか行ってくれる方法だけど。


「ブラッディバードはあの場を動くと今まで何をしていたか忘れてしまうんです。ただ、餌を認識すれば勝手に追いかけていくと思いますよ」


 ――餌……。じゃあ、ビー達に餌になってもらおうか。ビー達を集めて陽動作戦を開始して。


「了解しました」


 ブラッディバードの雌の前に大量のビーが現れた。魔物にビーの食べ放題を提供する。


 すると、ブラッディバードの雌は立ち上がり、ビーに少しずつ少しずつ近づいていく。そのまま駆けて嘴を開け、ビーに食いつく。ビー達は私の魔力があるので通常より、何倍も早い。そのため、食べられる心配はない。


 ビー達は少しずつ移動し、ブラッディバードの雌を巣から離していった。


「よし……、行こう」


 私は茂みを出て巣に一直線に向かう。

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