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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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ブラッディバードとの戦い

「せいやっつ!」


「ギャゴオオオオオオオ!」


 ミリアさんの短剣とブラッディバードの太い脚がぶつかり合う。辺りの草木が衝突によって生じた衝撃波に揺らされる。攻撃が当たる度に、大太鼓を叩いているような大きな衝撃音が鳴り、私の体を音波が振るわせた。心臓の鼓動か、音波による震えか、だんだんわからなくなっていく。


「おらっ! うらっ! おらっ!」


 ミリアさんは短剣をひるがえし、逆手持ちにすると腕を頭上に持ち上げ、ブラッディバードに穂先を突き差そうと試みる。


「ギャゴオオオオオオオオオオ!」


 ブラッディバーはミリアさんの攻撃を右前に飛び出し、華麗に躱すと移動先で身をひるがえし、太い脚の回し蹴りを繰り出す。


「くっ!」


 ミリアさんは両足の裏でブラッディバードの蹴りを受け、力を吸収しながら後方回転。猫のように音もなく、足下から地面に着地した。一連の流れを見る限り、ミリアさんには戦いの才能があるようだ。


 ブラッディバードは脚使いが上手く、蹴りの名手だった。ムエタイとでもいうべきか……。体つきは鶏とほぼ同じで丸っこい。だが、脚は異様に太く、骨太でしっかりしている。


 いっぽう、彼らの思考能力だが……。


 ――ベスパ、ブラッディバードの声が聞こえるように『聴覚共有』をお願い。


「了解です。でも、聴く必要は無いと思いますよ」


 ベスパは、メークル達を見るような瞳をブラッディバードに向けていた。


「え?」


「ギャゴオオオオオオオ!」

(雌、雌、雌、雌、雌、雌、雌……)


 ――はは……。バカってことね。


「はい、彼らの脳は小さすぎてメークル以上にバカなんです。虫にも思考できる個体がいるのに、彼らは大抵バカばっかですね。今、暴れているブラッディバードは雌を手にいれられなかった個体です。ゆえに、盛大に暴れております」


 ――はぁ、迷惑な話だよ。全くもぅ……。


「はっつ! せいやっ! そりゃあっ!」


 ミリアさんは短剣をブラディバードの急所である、首目掛け、振り続けていた。


「ギャゴオオオオオオオ!」

(雌、雌、雌、雌、雌、雌、雌……)


 簡単に死ぬわけにはいかないブラッディバードも、ミリアさんの攻撃を躱し続ける。


 ミリアさんとブラッディバードは死闘を繰り広げていた。


 人族の冒険者さんを二○メートルくらい吹き飛ばす蹴りを持っているブラッディバードの攻撃を受け止めているミリアさんは、やはり力持ちだ。だてに身体能力だけで冒険者専門学校を卒業している方じゃない。


 ミリアさんがブラッディバードを引き付けている間に、ハイネさんが魔法と弓で頭を狙いに行く。ただ、ミリアさんが動きまくるせいで狙いが定まらない。


「はぁ、はぁ、はぁ……。き、きつい……」


 ミリアさんは体力を大きく使い、ヘトヘトになっている。一方、未だに性欲が有り余っているブラッディバードは元気いっぱいだ。


 ――なるほど、性欲のせいであんなに暴れて……、ってそうじゃなかった。ベスパ、ブラッディバードから、魔力を吸い取って魔造ウトサの影響があるか調べて。


「了解しました」


 ベスパはブラッディバードの頭に針を刺し、魔力を吸い取る。


「ふむふむ……。薄いですが、微妙に感じ取れます。おそらく、魔造ウトサに感染した虫や小動物を食して体に蓄積されているようです」


 ――なるほど。やっぱり、この森も魔造ウトサに影響を受けているんだ。早く対処しないといけないけど、広い森を綺麗にするのは、ライトがいないとどうしようもないな……。


「いえ、キララ様。ライトさんの作った特効薬を河川に流せば魔造ウトサの影響を大きく減らせるはずです。魔力は森に滞在しますから、効果は薄くとも、魔造ウトサの影響も小さいのでまだ間に合うかと」


 ――確かに……。じゃあ、後で河川に流しに行こう。今はブラッディバードの討伐が必須だし、皆が危険になったらすぐに助けてあげないとね。


「はい、危険な場合は私達がすぐに助けられるよう、辺りに警ビーを配置しております」


 ――さすが、仕事が早いね。


「取柄ですから」


 ベスパは軽く会釈をする。自分の仕事ぶりを評価してもらいたそうな顔をしていた。


「ミリア、少し休んで。その間、僕が何とか持ちこたえるよ」


 ヘトヘトのミリアさんの前にニクスさんが立ち、ミリアさんを後方に下げさせる。


「わ、わかった。気をつけてね。人間のニクスがあの太い脚に当たったら痛いじゃすまないよ」


「うん……。大丈夫。攻撃をかわすのは得意だから……」


 ニクスさんは剣の柄を両手で握り、ブラッディバードと対面している。敵はニクスさんが出てくるのを窺っているのか、首を傾げたり、辺りを見回したりしながら警戒している。その仕草がやはりバカっぽい。


「スゥ……。はあっ!」


 ニクスさんは地面を蹴り、走りだし、剣を頭上に掲げ、ブラッディバードに振りかざす。


「ギャゴオオオオオオオ!」

(雌、雌、雌、雌、雌、雌、雌……)


 ブラッディバードは大きな体にも拘らず、身を左側に傾けて移動しながら剣をひらりと躱し、右脚でニクスさんの横腹に蹴り込む。


「くっ!」


 ニクスさんはカエルのように身を低くし、ブラッディバードの蹴りを躱すと太い脚に斬撃を加えた。


 ブラッディバードの太い脚から黒い血液が噴水のように吹き出す。結構深く切られたようだ。


「ギャゴオオオオオオオ!」

(雌、雌、雌、雌、雌、雌、雌……)


 ――ベスパ、もうブラッディバードの声を切ってもいいよ。脚を切られても同じことしか思わないなんて、ほんとおバカなんだね。


「了解です」


「はぁ、はぁ、はぁ……。一撃入った。これで、少しは攻撃が鈍るはず……」


 ニクスさんは攻撃を加えた後、二回から、三回、バックステップを踏んでブラッディバードから五メートルほど距離を取った。今、彼は蹴られたら死ぬかもしれないと言う緊張感の中、戦っている。そのため、額からの汗が尋常ではなく、滝のように流れ、眼に入っているのか服の袖で拭った。その瞬間、ブラッディバードは猛追する。


「ギャゴオオオオオオオ!」


「な! 脚から血を流してるのに! 加速が出来るなんて!」


 ニクスさんはどうやら、少々油断していたようだ。


 ブラッディバードは敵の隙を見逃さず、反撃に出ている。すでにニクスさんの体から一メートル圏内に入り、脚を鞭のように撓らせ、攻撃していた。


「くっ!」


 ニクスさんは咄嗟に腕を使って体を庇う。だが、その防御方法だと攻撃を確実に食らってしまう。腕に深刻な攻撃を受けるのは覚悟の上らしい。


 私が警ビーを使って助けようとした時、もの凄い低い姿勢でニクスさんに抱き着く、尻尾の生えた影が見えた。


 青髪の女性がニクスさんを抱き寄せ、ブラッディバードの蹴りを紙一重で回避すると、土煙を上げながら地面を転がり、距離を稼ぐ。


「このバカ、ミリア! 危険な行動するなよ! あのまま背中に攻撃を食らってたらどうするつもりだったんだ!」


 ニクスさんはミリアさんの肩を掴み、目をかっぴらいて叫ぶ。


「ご、ごめん。ニクスを助けないとって思って……」


「そ、そうか……。あ、ありがとう……。助けてくれて」


 ニクスさんは耳と尻尾がシュンとしているミリアさんの頭に手を置いて撫でた。すると、ミリアさんの耳と尻尾がグワッと上がり、嬉しそうに動きだす。単純な方だ。


 ブラッディバードの方は盛大に攻撃を空振り、貧血なのか、足下がおぼつかない様子だ。千鳥足と称するのが一番しっくりくる。


 その姿を見て、後方から弓を構え、魔法を放つ準備をずっとしていたハイネさんが、狙いを定める。


「これで……いっちょ上がり!」


 ハイネさんの矢先には小さな魔法陣が展開されており、光が緑っぽいので風系統の魔法だと思われる。きっと初速と貫通力を上げる算段だろう。


「ふっ!」


 ハイネさんは弦を離すと、矢が勢いよく飛び出し、魔法陣の影響によって風を纏う。矢は加速し、消えた。

 私は、ハイネさんが手を放した瞬間から、矢が早すぎて見えなくなっていた。どうやら魔法を使うと矢が早すぎて見えなくなるらしい。


 矢が放たれて一秒もしないうちに、木がバキバキと破壊される音が聞こえた。考えたくないが、きっと矢が木を貫通したのだろう。


 私はブラッディバードの方を見る。すると、頭が下がっていたブラッディバードの脳天を矢がいつの間にか打ち抜いていた。頭が破裂しており、首から黒い血液を吹き出している。結構グロテスクだった。


 ブラッディバードの脳天を打ち抜いた矢は後方の木を二から三本貫通し、四本目の木に巨大な罅を入れながら止まっていた。


 ――風魔法で矢の威力があそこまで上がるんだ。凄いな。


 脳天を打ち抜かれたブラッディバードは動きを止め、その場に力なく倒れた。

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