家族会議、大金を手に入れたと報告
ルドラさんが帰って来た日の夜、私は家族会議を開き、大金を受け取ったことを伝えた。
お父さんとお母さんはひっくりかえり、壁際までゴキブリかと思うほどの速さで移動したあと、息を荒くして驚いていた。
驚き方の癖がすごいが、二人が一生働いても稼げなかった金額が目の前にあるのだから仕方ないかもしれない。
シャインとライトは白金貨を手に持って親指で弾き、遊んでいた。どこの貴族の子だよと思ったが、二人にとって特に苦労もせず受け取ったお金に過ぎない。ただの金属の板としか思えないのも納得だ。
「姉さん。このお金を使って牧場を広くしろって王様が命令してきたの?」
ライトは白金貨を人差し指の上でクルクルと回し、聞いてきた。
「命令してきたというか……、支援してくれたってルドラさんは言っていた。ルドラさんの話を信じるなら、王様の考えに従ったほうが身のためだって……」
「ふぅ~ん、なるほどね……。ま、これだけの金額があるなら、土地は十分買える。でも牧場の土地はまだ余っているんだよ。お金を使わずとも計算上、一〇○○本を王城に出荷することは可能だ。でも、美味しい牛乳は取れなくなるかも……」
「それじゃあ、意味がないから、広い土地を買わないといけない。私は街まで向かう途中の広い荒野がいいと思うんだけど……、どうかな?」
「あ~、あそこね。確かに広いし良い所だけど開拓するのが面倒だよ。毒草とかも生えてるし、放し飼いにしてたら動物は死んじゃうよ」
「開拓なら、私のスキルがお手の物だよ。すぐには終わらないかもしれないけど、開拓は確実に出来る」
「なら、いいんじゃないかな。すぐ近くに街があるし、多くの人が新しい牧場で牛乳を買ってくれるかもしれない」
「そうだね。でも、出来るだけ価格は高い値段にするつもりだよ。そうしないと他の酪農家が潰れちゃう」
「そうか……。酪農をしているのは僕たちだけじゃないのか。なら、この村と同じ値段で売るのは難しいね。まぁ、街の方が、月収が高いから、値段を高くしてもそこまで問題はないと思う」
「街の月収は、お父さんが一人で働いていた時の月収の二○倍くらいあったんじゃないかな」
「確かそうだよ。街の方が仕事が多いし、人も多い。そりゃあ、月収も高くなるよ。父さんの働き口がなかったから仕方ないけどさ」
「ふ、二人共、俺への愚痴が少々強い気がするんだけど……」
お父さんはよちよち歩きでテーブルまで戻ってきた。白金貨を振るえる手で握り。齧る。歯が割れそうな音がするも、白金貨は無事だった。
「ほ、本物……。母さん、偽物じゃないぞ。本物の白金貨だ」
「う、嘘でしょ……」
お母さんもよちよち歩きで戻ってきたあと白金貨を手に取り、噛みつく。
この世界の人は皆オリンピック選手なんですかね……。偽物じゃないから歯型なんてつくはずもなく、お母さんは涙していた。
すでにお金はある方なので貧乏性は抜けていたと思ったが、貧乏な生活が長かった二人は白金貨という大金を前にして泣いていた。
お金を前にして泣けるということは、それだけ二人がお金に対して苦労してきたということ。
これで二人の借金も帳消しになるかもしれない。ま、リーズさんの懐の大きさがすごい。
――あ……、私もリーズさんに借金してるじゃん。か、返さないと……。
「お父さんとお母さん、そのお金は牧場の拡大に使うから、借金返済にはまだ充てられないよ。そこのところはわかってる?」
「も、もちろんだとも。牧場が広がればそれだけ賃金も増える。なら、借金を返せるだけの金も貯まるはずだ。より一層頑張って働かないとな」
「そうね。私も今まで以上に働かないと。昔は働いても働いてもお金が貯まらず消えていく毎日だったけど、今は働くだけお金が増えていく。こんな楽しい毎日を送れるなんて思ってもなかった。キララたちのおかげね、ありがとう」
「いや~、それほどでもあるよ。お母さんも私を生んでくれてありがとうね。今、凄く充実している。いつまでこの平和が続くかわからないけど、精一杯楽しむよ」
「何、キララ。またどこか危険な所に行こうとしているの?」
お母さんは何かを察したのか、私に物凄い睨みを利かせてくる。
「え……、い、いや~。そんなことはないですけれども~」
蛇に睨まれたら身を硬直させる鼠のように、私は一ミリメートルも動けなかった。
お母さんは私の方に歩いてきて、手を頭にがしっと当てる。すると、私の頭をこけしのように捩じり、首を動かす。
目の前には怒る寸前のお母さんの顔があり、私はすでに泣きそうだ。
「ちょ、ちょっと街の向こう側に用事がありまして……」
「な~んでそんな遠い所まで行こうとしているのよ。お母さんにちゃんと説明しなさい」
「えっとえっと……」
私はお母さんにブラッディバードが大量発生しているとの話をした。
ブラッディバードはルドラさんの情報によると肉が美味しいらしい。魔物の中でも一位、二位を争う美味しさだそうだ。加えて卵が貴重で高値で売買される。味も絶品なんだとか。そんなの、取りに行かないと損に決まってる。
「だから、その……。私も討伐しに行こうかな~って」
「キララ、お前は魔物を甘く見すぎだぞ。父さんも何度死にかけたか。ブラッディバードは、冒険者でも甘く見たら死ぬ。そんな簡単に手に入る素材じゃないぞ」
お父さんは私に珍しく反発した。
まぁ、昔にお父さんも冒険者を少しだけしていた時期があるという。
あのリーズさんと一緒に仕事をしていたらしいから元Aランク冒険者のパーティーにいたそうだ。ただ、実力不足を痛いほど味わったらしく、パーティーを抜け、学もなかったお父さんは街で働けず、たどり着いたのがこの村だったらしい。
「わ、私だって魔物を舐めてるわけじゃないよ。ルドラさんに聞いたら、冒険者ギルドに行かないと討伐の依頼を受けさせてもらえないと言ってた。だから普通は冒険者しか討伐しに行ったらいけないの。だから、私は冒険者ギルドのギルドマスターに話を一回通して討伐に行ってもいいか聞いてくるだけだから安心して」
「ほんとでしょうね……。キララなら、無視して討伐しに行きそうなんだけど……」
お母さんは私の深層心理を読み取れるのか、じーっと見てきて核心を突く。
――お、お母さん。私への信頼度が無さすぎるよ。まぁ、断られたらそうするつもりだったけど。
「そ、そんなことしないよ~。私もわざわざ殺されるかもしれない場所に行くわけじゃないじゃん」
「姉さんなら絶対に行くと思う」
「うん。お姉ちゃんなら絶対に行くと思う」
双子は私の性格がわかっているからか、核心を突いてくる。うん、絶対に行くと私も思う。
「はぁ……。キララ、冒険者になりたいの?」
お母さんは諦めたと言わんばかりの息をつき、聞いてきた。
「ううん。全くなる気はないよ。冒険者になって大金を稼げたとしても、血みどろの生活なんてしたくないよ」
「冒険者になりたいなんて言ったら是が非でも止めるけど、そうじゃないなら……、許す。冒険者ギルドの皆さんに迷惑を掛けたら駄目よ。わかってるわね」
お母さんは私の両肩に手をおき、真剣に言ってきた。どうやら私が何かしでかすと思っているらしい。
私はそんな気はさらさらないが、どうなるかわからないので取りあえず何か喋らないと。
「も、もちろんだよ。逆に私が助けちゃうんだから」
「キララ、男の冒険者をあんまり助けすぎるなよ。自信をなくして立ち上がれなくなるからな。キララに助けられっぱなしのお父さんみたいに……」
お父さんは自分の娘に嫌ってほど助けられているので自信を喪失している。
お爺ちゃんにお小言を吐かれまくっているからかもしれないが、お父さんは頑張っているのだからもっと自信を持ってもいい。今の仕事だってお父さんがいなかったら回らないし。
「お父さんは頑張っている姿がカッコいいよ。だから、自信なんて必要ない。頑張って頑張って頑張ってる姿を見るだけで私も頑張ろうって気になるの。だから、お父さんは自分の思うがまま努力してくれればいいよ」
「キララ……。うぅ……。不甲斐ない父親ですまないな……」
お父さんは相当自信を喪失していたらしいので泣いてしまった。
まぁ、子供の方が優秀だとちょっと悔しいよね。でも、私は普通なんだけどな。今の心はお父さんよりも年上なんだよな……。
家族会議はお父さんのガチ泣きで幕を閉じた。
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