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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
キララの誕生日公演会(ライブ) ~誕生日前なのにトラウマが再来する編~

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燻製は売れると言う事実

 私は小さなチーズを手に取り、匂いを嗅ぐ。すると乳製品独特のほんのり甘い香りとレモネの爽やかな匂い、加えて燻製の香りが丁度良い……。


 食べる前からビールが飲みなくなる。こっちの世界だとエールって言うんだっけ。


 成人でお酒が飲めるらしい。じゃあ、私はあと、四年で飲めるのか……。でもなぁ……、やっぱり二○歳になってから飲むって言うのが、私の頭にこべりついているから、犯罪な気がしてならない……。あと、一〇年か。頑張って我慢できるかな。


 昔、私は自分の意思の強さには自信があるので、例えどんな人にお酒を進められたとしても未成年であったので断ってきた。そのせいで、お酒の席では煙たがられていたと思う。まあ、お偉いさん方は私をネオンライトの輝く欲が乱れる場所に連れて行きたかったんだろうが、私はそこまでして売れたくなかった。


 だが、私を何度も起用してくれた脚本家さんは、お酒を進めてこなかった。それだけでだいぶ信用できる大人だった。ただ、私が二○歳の誕生日を迎えた時、寝泊まりしていたビジネスホテルに滅茶苦茶高級なワインを持って来てくれた。出会った時とは似ても似つかない綺麗な服装でだ。


 初めて飲んだお酒が超高級ワインというだけで思い出に残っている。あの味は美味しすぎて今でも忘れられない。


 脚本家さん、ほんと良い人だったな……。


「うんうん……。この味は葡萄酒が飲みたくなる……、木の香りとチーズのうま味が舌の上で転がって鼻から抜ける感じ……たまらんな」


 私は当時のワインを思い出しながら燻製チーズを噛み締める。


「キララ様、なんかおじさん臭いのですが、燻製の匂いですか?」


 ベスパは鼻をつまみながら呟いた。


「違うわい。私の発言がおじさん臭いの。って何言わせてるの!」


「いや、すみません。キララ様の顔が渋いおじさんのような顔をしていたのでつい……。にしても、この燻製という調理法は中々面白いですね。味も他の調理法と違って香り豊かですし、とても簡単です。ただ、これを家で行うとなると匂い移りしそうですね」


「まぁ……、その点は否めないかな。家の中でしなければいいだけだよ。でも、最悪、家の中に匂いが付いてもライトの『クリア』でにおいは綺麗さっぱり消えるよ」


 私はチーズを食べたあと、乾燥させたビーの子に手を伸ばす。


 ビーの子は乾燥し、もとから茶色っぽかったが、燻製にされてもっと濃くなった。鼻に近づけて香りを嗅ぐ。ビーの子には匂いがないため、燻製の香りしかしない。


 私はビーの子をビーナッツのように口に放り込む。右の奥歯で噛み締めると、身がグミのように柔らかいのに、ある程度の弾力があるため、触感が癖になる。強く噛みつくと身が弾け、中身が出てきた。中身の味はクリーミーで微かな甘みが感じられる。匂いは燻製。


 簡単に言えば触感が干しブドウ、中身がピーナッツ味、匂いは煙の食べ物が出来た。


 チーズと同様、ビーの子も美味しい食材になっていた。


 おつまみで出されたら感動する美味しさだ。 


 ビーの子をひょいひょいと拾い上げ、口の中に全て入れる。


 昔は怖がっていたが、何度も食べていると慣れた。なんなら、幼虫の状態で見ればビーも他の虫と大差ない。


 私は珍しく幼虫を見ても怖がらない女子なのだ。口の中にビーの子を五匹くらい入れてから噛む。食べ応えがあり、昼食前の小腹が空いたこの時間に丁度いい間食だ。


 ビーの子を平らげ、最後に主菜(メインディッシュ)の燻製された干し肉を手に取る。


 燻製にされた干し肉の匂いはもうビーフジャーキーそのもの。


 干し肉には肉の臭みを緩和するために胡椒(ミグルム)によってスパイシーな香りが元からついている。その状態から燻製にされた結果、木の自然な香りと空腹を刺激する香辛料が合わさって涎が止まらない。


 少々大きな干し肉を指で千切り、小さくしてから口に含む。ミグルムのピリピリした刺激が舌から口に広がり、唾液が滲み出て来た。溜まった唾液を飲み込むと鼻から燻製の香りが抜ける。干し肉を噛み続けると魔物の肉とは思えないくらいうま味がにじみ出てきて、舌が踊り狂いそうになる。


「ん~。エール飲みたい~」


「キララ様はあと四年待たないと飲めませんよ」


 ベスパは腕を重ね合わせ、バッテンを作る。


「それくらいわかってるよ。でも、この商品なら皆に十分喜んでもらえる。ま、売り出したりするには木の硬貨が無いと作れない。沢山あるとはいえ、難しいかな」


「木の硬貨はほぼ毎月送られてくるはずです。加えて、小さな板状にすれば小分けして売り出せます。作業量が増えるので、燻製を売るのではなく、燻製箱と木の小板を売るのはどうでしょうか?」


「なるほど……。家で作ってくださいねってことか。そうすれば私達の作業量は全くいらない。なんせ、ベスパ達が作ってくれるんだから。よし、村の人に燻製を食べてもらって燻製箱と木の小板を買ってもらえるか実験しよう。もし売れるのなら、他の場所でも売れるかも」


「そうですね。皆さん、いつも同じ味にうんざりしていますから、燻製の味は刺激になってくれると思いますよ」


「ま、ただの燻製にどこまで皆が食いついてくれるかわからないけど暇つぶしには丁度良い。牧場の拡大は絶対として他の作業は趣味として楽しんでいこう」


「キララ様。鍛錬の方も絶対ですよ。あと、勉強も」


「はいはい。ベスパに言われなくてもわかってますよ~だ」


 私とベスパは休日の残りを利用して燻製箱と木の小板がパンパンに入れられた袋の組を一〇○組用意した。


 なんせ元値がゼロに加え、ズミちゃんに食べてもらえば環境にも悪くないのだから、在庫が余らないのだ。


 皆の反応が悪くてもいいし、悪くなければなおよし。燻製の干し肉やチーズをつくり、村の人達に食べさせて燻製箱を銀貨一枚、木の小板を銅貨二枚で買わないかと聞いて回ると、面白いくらいに売れた。


 昼間っからお酒を飲んでいるお爺さんに燻製を食べさせたら美味しすぎて腰を抜かし、ぎっくり腰になってしまったのでベスパにお願いし、お爺さんの腰へ『ケトプロフェン(湿布薬の主成分)』を打ち込んでもらった。


 燻製箱は大盛況、一〇○軒の家を回って全ての家が買ってくれた。私、訪問販売の才能があるのかもしれない。


「えへへ~、お小遣いが銀貨一〇○枚と銅貨三○○枚。合計で金貨一三枚分の儲け。ウハウハだね~」


「ほんと、キララ様は仕事している時が一番生き生きしていますね。あと、今、凄く悪い顏をしていますから、気をつけてください」


「おっと……。ニパ~っと笑顔にならないとね」


 私は臨時収入が手に入り、スキップしたい気分だ。元手がゼロなので、全て私のお金になる。まぁ、ビー達に働かせているが、私の魔力を報酬として支払っているのだから、文句はない。


「さてと、金貨一三枚分のお金。何に使おうかな~。やっぱり貯金かな。ん~、思いつかない。ま、とりあえず金庫に入れておこう」


 私は家に帰り、魔法陣の上に硬貨を置いて金庫に転送した。


「よし。これでなくならない」


 ベスパ達が作った燻製箱は多くの人に売れるという事実がわかり、私の臨時収入が増えた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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