クロクマさんの待遇
「二人共、一一歳のいたいけな少女に向って、お婆ちゃんみたいなんて言ってごめんなさいは?」
「うぅ……、一一歳のいたいけな少女に向ってお婆ちゃんみたいなんて言ってごめんなさい」×シャイン、ライト
シャインとライトは頭を下げて謝って来た。
「よろしい。もう、そんな言葉は口にしちゃいけません。もし、お母さんに言っていたらもっとひどい雷が落ちるよ。わかってる?」
「うぅ……、わかってるよ……」
「姉さんは母さんをどう思っているのさ……」
ライトは呟いた。
「どうって……。そりゃあ、六年前よりも小じわが増えたな~って思うかな……。あと、胸のたるみとか、お腹周りの脂肪とか、歳の洗礼をそろそろ受けるよ」
「キララ様、そろそろやめた方がいいんじゃないですかね」
ベスパは小さな声で呟いた。
――え? 何で……。
「何でと言われましても……。ライトさんの顔を見てくださいよ」
――ライトの顔……。
その時のライトの顔は、してやったりと言った表情で、シャインの方はあわわ……と言った恐怖におびえている顔だった。
私は後ろを向く。
私達は牧場の方から歩いてきた。今も家に向って帰っている途中だった。日はもう沈み、お母さんたちは家にいる……そう思っていた。
「あら、キララ。私のどこに小じわが増えたのかしら? 胸のたるみ? お腹周りの脂肪? 年齢の洗礼? あらら~。どういうことかもっとしっかりと教えてほしいわね」
「は、はわ、はわわ……」
私はあまりの恐怖にちびりそうになりながら、尻もちをつき、後ろにずり下がる。すると、シャインとライトが肩を止めてきた。どうやら、私は逃げ道を失ってしまったらしい。
あぁ、死んだ。これはもう、私の死が確定してしまったよ……。
「さあ、キララ。話の続きは家の中でゆっくりと聞きますからね」
「は、ははは……、ハハハ……」
私は泣きながらにお母さんに捕まり、家の中で散々怒られた。加えてどうしようもないくらい、対策法を聞かれ、とりあえず、肌には水を飲めと、お腹周りは運動した方がいいと、胸のたるみはナイトブラを着けて対策するしかないと言った。私は怒られたのに、感謝され変な気分になって休日を終えた。
八月は猛暑だった。もう、熱すぎて悪魔のせいにしたいくらいだ。
だが、ライトの魔法陣のおかげで例年と比較すると快適に過ごせていた。なんせ、今年も村では熱中症の患者が大量に出たのだ。去年もいたが、今年は比にならない。
魔法で水と氷を生み出す日々。私とライトがいたおかげでお年寄りの死亡者はいなかった。ただ塩分が摂取しにくいこの世界ではレモネに頼るしかなかった。
もう、レモネ様様である。クエン酸によってお年寄りたちは回復し、皆感謝してくれた。
私達の村でこれだけ熱中症患者が出ているのに、他の村や街だとどういう感じなのだろうか。ルドラさんに話でも聞いてみたいが、一四日経っても帰ってこない。もうすぐ八月が終わり、九月がやってくるというのに……。まぁ、一ヶ月は帰ってこれないかもしれないって言っていたし、気にしなくてもいいか。
私の植えたトゥーベルとビーンズは順調に育っている。あまりに育ちが良いので間引きが大変だ。でも、ベスパのおかげで虫食いにあう被害は極端に低いため、病気にのみ気をつけていれば冬頃には収穫できるはずだ。
クロクマさん達はというと、ライトに託した子供のブラックベアーの名前が決まり、唖然とした。長すぎて覚えられなかったのだ。私はライトにお願いし、名前を短くしてもらった。その名前はクマタロウ……。
うん、なんか普通!
ただ、ライトはクマタロウを気に入っており、眼を覚ましてから、一緒によく遊んでいる。
ブラックベアーの子共と遊ぶとか訳がわからないが、牧場の中でなら遊んでもいいという規約をつくり、ライトとクマタロウは順調に仲を深めていた。
まさか、ライトはクマタロウを相棒にする気なのでは……と考えてしまい、背筋がゾクゾクする。
シャインに預けた、父ブラックベアーのコクヨはシャインの練習相手になっている。と言うのも、魔造ウトサの影響はどれだけ続くのかという研究のため、コクヨの体が治ったらシャインと戦い、ボコボコにしてもらう。傷が治ったらボコボコにしてもらうという工程をふんでいた結果。一〇回目程で自我を取り戻し始めた。
どうやら、体を治す過程で魔造ウトサの影響が薄まるらしい。
コクヨとシャインの関係はとんでもなく良好で、相撲をする仲となった。まぁ、いつもシャインが勝っているので日本昔話の少年のようになっている。
クロクマさんの言っていた通り、魔造ウトサの抜けたコクヨはとても優しい性格をしていた。私に襲いかかったのを謝り、シャインにボコボコにされていても楽しそうにしていた。うん、私はコクヨがただのドМなだけだと思っている。
私はというと……。
「はわわ……、な、なんかすごい……。レクーとはまた違った感じ……」
「キララさん、私が荷台を引いてもいいんですか?」
「ちょっと試しているだけだよ。あと、クロクマさん達が村の人たちに悪影響がないって教えるのにちょうどいいかなって」
「なるほど……」
私はクロクマさんに荷台を引かせて村を移動していた。
まさか、ブラックベアーに荷台を引かせる時が来るとは思わなかったが、クロクマさんの力はウシ君に匹敵する。加えて、山道だとレクーよりも小回りが利いた。少々の段差なら、荷台を持ち上げて移動してくれる。凄く便利だ。まぁ、ビー達にお願いすればいいのだけど……。
いろいろな利点があるが、一番の利点はクロクマさんの背中が広すぎて滅茶苦茶気持ちの良い寝床になってくれるという点だ。
レクーの上じゃあ寝転がって眠れないからね。
クロクマさんの背中にはしっかりとした毛が生え、分厚い脂肪と筋肉、女性なのに頼もしすぎる。
敵だと恐怖していた存在が味方になると凄く心強い。でも、クロクマさんは人に嫌われているので、そう簡単に街に出たり、遠出をしたり出来ない。そのため、マスコットキャラクターではないが、村の皆に受け入れてもらえるよう、配慮をしているのだ。
「はぁ……私、皆さんに怖がられていますね」
「仕方ないよ。私だって怖いもん。クロクマさん達はすごく強い魔物だからさ、普通の人間じゃ絶対に勝てない。でも、優しい性格だってわかればきっと打ち解けられるよ。木を運んだり、堀を創ったり、力仕事が色々あるから、クロクマさんの有用性を知ってもらえたら、仲良くなれる」
「そうですかね……」
クロクマさんは私に恩義を感じているらしい。なので、私の役に立ちたいという切実な思いをはせている。
その思いに答えてあげたいと思った私は、何か方法がないか、教会にいる神父様に相談した。
すると、魔物を使役する職業というのがあるらしく、テイマーと言うそうだ。
冒険者の中には一定数いるらしい。ブラックベアーを使役する者は知らないと言っていた。聞くところによると、魔物を使役している者は学園でも優遇処置をされる場合が多いという。一個人が戦うより、魔物に戦ってもらったほうが死亡率は減り、出来ることも増えるからだそうだ。
ただ、テイマーという職は強い訳ではないらしい。いわゆる器用貧乏な職らしく、簡単な依頼や中級の依頼はとんでもなく得意で、上級や超級になると手も足も出ないと言った具合だ。
簡単に説明すると、手懐けている魔物の位が依頼の適正ランクとなる。ブラックベアーは大きさによってランクが変わり、BランクからAランクの魔物なので相当強いそうだ。
だが、上には上がいる。以前リーズさんに聞いたフェニックスを使役している人がいるらしく、その方はSランク冒険者の一人で、Sランク冒険者唯一のテイマーだそうだ。ますます会いたくなってきた。
私のスキルのように特定の魔物と仲良くできるスキルを持つ冒険者がテイマーとして活躍していると言う。
なるほどと思い、魔物をスキルで使役していると言えば、大抵の人は信じる。
テイマーとしての道を歩もうと……、言う気にはならない。
私はただ、クロクマさんという高級なベッド……ではなく、強力な仲間が欲しい。そのためにはテイマーという肩書がなくてはならない。
手に入れれば肩書を盾にしてクロクマさんと一緒に行動できるようになるわけだ。そうなると、私は冒険者の申請をしなければならないらしく、冒険者ギルドへ行かなければならなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。
毎日更新できるように頑張っていきます。
これからもどうぞよろしくお願いします。




