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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
キララの誕生日公演会(ライブ) ~誕生日前なのにトラウマが再来する編~

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イライラすると空が暗くなる

「じゃあね……。ガンマ君」


「はい。さようなら、デイジーさん」


「また来てね。私、待ってるから……」


「ええ、また来ますよ。その時はまた、一緒に鍛錬しましょうね」


「うん。私、ガンマ君に負けないよう、一生懸命に勉強と鍛錬を頑張るよ」


「僕もデイジーさんに負けないよう頑張ります。互いに努力しましょう」


 デイジーちゃんとガンマ君はそこそこというか、だいぶ仲良くなり、最後はギュッと抱き合ってお別れを言っていた。


 なかなかの距離の近さだ。


 互いの顔を見つめ合い、デイジーちゃんのみが赤面している。もし、ドラマだったらあの二人が別れぎわにキスするのだろうなと想像できる。後方の山に落ちる真っ赤な日によって雰囲気が最高潮に達していた。


「うぅぅ……。私だって負けないもん……」


「うぐぐ……。まさかシャインと同感だとは思わなかったよ……、僕だって絶対に負けない……」


 シャインとライトはドラマチックな場面を眺め、泣きそうになりながら必死にこらえている。なんせ、思い人が自分の知り合いと抱き合い、別れを惜しんでいるのだ。


「はぁ……。まだ八歳だっての……。マセガキどもめ」


 私は少々大人ぶった言葉を放ち、自分もあの場にいたいという淡い思いを抱き、唇をかみしめる。


 ガンマ君はデイジーちゃんから離れ、荷台に乗り込んだ。シャインが先に乗り込み、ライトはデイジーちゃんのもとに向かい、手を繋いでいる。両者共必至だ。


 結局、ネ―ド村を出発するまでに三○分程時間を使い、夕焼けの色が濃くなる。夏なので日の落ちる時間は長いがさすがに待たされる方の気にもなってほしい。


 私がイライラしていると、シャインとライトが形相を変え、私のもとにやってきた。


「お姉ちゃん、落ちついて。待たせちゃってごめん、謝るから一度落ち着いて」


「ね、姉さん。いったん深呼吸をしてさ。空を見上げようよ。広い空、ね。一回落ちつこう」


「二人共、何を言ってるの……?」


 私が空を見上げると、視界が真っ暗だった。もう夜になったのかな? なんて悠長に考えていると、気づく。空が暗いのは、大量のビー達がただただ溢れかえっているだけだった。


 視界の先に空なんて見えず、大量のビーが集まって積乱雲のような巨大な黒い形を形成してる。


 ライトとシャインが私に気づかせてくれたようだ。


 私は失神しかけたが、舌を噛んで持ちこたえてベスパの方を見る。するとベスパは私と同じようにイライラしているらしく、四枚の翅を力強くブンブンと鳴らしている。ベスパに同調するように他のビー達も威嚇音を翅で鳴らし、大あごを開いて閉じてと繰り返しているのか、不快なカチカチ音をネード村に響かせている。


 ネ―ド村の人達は空がいきなり暗くなったことに驚き、一面に広がる巨大な黒い雲がいったい何なのかを知る由もない。


 なんせ、何万匹というビー達の群れなど誰も見た覚えがないのだ。


 あまりの数にもはやビーと気づく者はおらず、大きな大きな黒い雲だと思ってるだろう。ただの黒い霧だと思っているかもしれない。


 今のところ大きな騒ぎが起きず、ビーが奏でる不協和音だけがネ―ド村に響いていた。


 私は耳を塞がなければその場にいれないほどの数で、気絶しなかったのが珍しい。


 ベスパにすぐさま命令し、ビー達を退けさせると辺りが一気に明るくなった。光を屈折させるビー達の翅がなくなり、赤い光がネ―ド村に降り注ぐ。


「はぁ……。よかった……。ありがとう、二人共。気づかなかったよ」


「う、うんん。私達が長居してたのが悪いんだよ……」


「そ、そうそう。僕達が姉さんの時間を奪っていたのが悪いんだよ」


 シャインとライトは冷や汗がだらだらの状態で、とんでもなく怖がっていた。


 二人にとってビーなんて簡単に倒せるはずなのに……。いったいなにを怖がっていたんだろうか。私にはわからず、二人の引きつった顔と笑い声だけが印象に残る。


 私とライト、シャイン、ガンマ君はネ―ド村あとにした。


 私達が村に到着したのと同時に日が落ち、辺りが暗くなる。ガンマ君を先に家に送り、レクーを厩舎に返したあと、食事を与えた。その後、私とライト、シャインの三人で家まで歩いて帰る。


「はぁ~、今日は疲れたね~。でも、一段と成長できたような気がするよ」


 私は落ち込む二人に元気になってほしくて声を少々大きくして話した。


「はぁ……。ガンマ君、練習試合の時、デイジーのことをずっと見てたよ……。私の方は全然見てくれなかった……」


「そりゃあ、対する相手だからだよ……。戦っている相手を見ないで戦えないでしょ」


「はぁ……。デイジーさん。練習の時、ガンマ君にばかり質問してたよ……」


「そりゃあ、ライトが恥ずかしがってガンマ君に聞いてからわからない時だけ聞きに来てなんて言うからでしょ……」


「はぁ……」×ライト、シャイン。


 二人はため息を吐き、背中が丸まるくらい肩を落としていた。どうしてそんなにも落ち込む必要があるのだろうか。まだ八歳だというのに……。何度でも言おう。二人はまだ八歳なのだ。


「二人共、まだまだ始まったばかりだよ。二人がガンマ君やデイジーちゃんよりも魅力的になればいいの。そのためには自分磨きをすればいいんだよ」


「自分磨き……? 皮膚が剥がれちゃうよ」


「自分を磨いても石や金属みたく光ったりしないよ……」


 シャインとライトは意味をはき違えている。どうして自分を物理的に磨こうとしているのか……。こういうところは結構抜けているのだとわかり、子供っぽいと思える。


「自分磨きっていうのは、他の人よりも自分をよく見せるために頑張ることだよ。例えば、肌を綺麗にしたりとか、髪を整えたりとか、運動して筋肉をつけるとか、色々ある。自分磨きをすれば、ガンマ君やデイジーちゃんにも負けない、魅力的な人物になれる」


「じゃあ、私も自分磨きをすればガンマ君に見てもらえるのかな……」


 シャインは両手を頬に当てて撫でたり、髪を弄っていた。


「もちろん、シャインは私と同じように元がいいから、もっと可愛くなればガンマ君も振り向いてくれるよ」


「じゃあ、僕も自分磨きをすればデイジーさんに男として見てくれるかな……」


 ライトは腕を曲げ、力こぶを作る。女子かと言いたくなるくらい上腕二頭筋が無い。


「もちろん、ライトは私と同じく元がいいから、もっとカッコよくなってデイジーちゃんの気持ちをがっしりと掴んじゃおう」


 私はシャインとライトの肩を持って自分磨きの大切さを説いた。原石がどれだけ汚くても磨けば磨くだけ石は光る。なら、元が最高に良い二人が自分を磨けば、いったいどれくらいの輝きを放つのだろうか。それこそ、シャインとライトの輝きは私を超えるかもしれない。


「わ、わかった。私、もっと美容に気を配るよ。あと、女性らしさって言うのはメリーさんに聞いて……、色々教えてもらう」


「そ、それはやめておいた方がいいかな……。メリーさんに聞くくらいなら、お母さんに聞いたほうがいい。というか、私に聞いてよ!」


「お姉ちゃんは女性らしさというかなんというか……、お婆ちゃんみたいだから……」


「お……、お婆ちゃん……」


 私は膝が銃弾で打ち抜かれたように地面に崩れる。私の年齢は一一歳。元の年齢を合わせたら三二歳。お婆ちゃんの足下にも及ばないのだけど……。私はシャインにお婆ちゃんっぽいなんて思われてたのか。


「シャイン、姉さんに直接言うなんて何考えてるんだ!」


 ライトは形相を変え、シャインに掴みかかる。


「だ、だって……。なんか、お姉ちゃんは大人の女性を通り越してるんだもん……」


「まぁ、そんな気はしなくもないけど、直接言うことじゃないでしょ!」


「ら、ライト……。遠回しに、私のことがお婆ちゃんだって思ってるわけ……?」


「そ、そういう訳じゃないよぉ……。姉さんは姉さんでしょ。だから、そんな怖い笑顔を向けないで」


 ライトは涙目になり、シャインと共に震えている。


「ははは……。私はお婆ちゃんかぁ~、お婆ちゃんね~。ん~、二人にとって私はすごいお年寄りの印象だったんだね。はぁ~、お姉ちゃん悲しいなぁ~」


「はわわ……、はわわ……」


「はわわ……、はわわ……」


 シャインとライトは肌をくっ付け合うほど抱き合い、震えていた。


「シャイン、ライト、お婆ちゃんって言うのはどういう状態か教えてあげようか……?」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」×シャイン、ライト。


 私はシャインとライトに警ビーを着け、遥か上空へと高速で持っていく。上空八八八八メートルの位置でジェットコースターのようにブンブン動かし、恐怖をたっぷりと与えてあげた。すると、戻って来た頃には顔がしわくちゃになり、シャインとライトはお婆ちゃんとお爺ちゃんのような表情をしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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