魔力操作で生み出した魔力体
「キララ様。鍛錬をしに来たのになぜ、人の色恋沙汰を見ているのですか? 休憩し始めてからすでに一五分が経過しました。さぼり癖がまた現われているようですよ。魔力は全回復しているはずです。もう一度鍛錬を行いましょう」
ベスパは私のマネージャーかというくらい、スケジュール管理が上手い。もう、服装がグラサンマネージャーにそっくりなのでそう見えてしまう時も多々ある。
「うぐ……。わ、わかったよ。やればいいんでしょ、やれば……」
私は茂みから這い出て川岸へと向かう。そこから、一時間、魔法の鍛錬をみっちりと行った。
魔力を枯渇させて体を強くしながら酷使する。そのあとビー達に預けた魔力を返してもらい、頭痛や吐き気を治したら、もう一度同じように酷使する。もう何度やったかわからないが、体の魔力を回復させる力が弱まってきた。どうやら、相当疲弊しているらしい。加えて周りの魔力の質が上がっていることに気が付いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。なんか、このまわり魔力の質が高いんだけど。これ、私の魔力だよね……。ビー達に預けていたんじゃないの?」
「ビー達に預けていたんですが、ここら一帯のビー達には限界量に達してしまいました。大量に与えすぎると、私のように爆発する可能性があります。万が一、火炎系の魔法を発動した際、ビー達に引火したらもう、大爆発が連鎖的に起こるので、とんでもなく危険なんです」
「そ、それは危ないね……。つまり、ビー以外の虫に魔力を預けているってことだね?」
「はい。もう、虫たちにも与えすぎて辺りにキララ様の魔力が漂うようになってしまいました。ですが、大して悪影響はないので気にしないでください」
「えっと……。たれ流している魔力は体に戻せないんだよね?」
「そうなりますね。もう、容量を遥かに超えていますから、湧き水の如くたれ流し状態になっています。ですが草木は魔力を吸収してくれますから、その分成長速度も上がるかと思われます。なのでキララ様の魔力は無駄になりませんよ。自然に還元されるんです」
「そ、そうなんだ。ビー達の預けている魔力は虫たちが死んだら体に戻って来るのに、たれ流している魔力は戻ってこないって、なんかもったいないね……」
「そう言われましても、魔力体である私が魔力を全て吸い取ってもいいんですけど……、そうなると体が輝きだして眩しいので鬱陶しいのは結局同じですよ」
「そうか……、魔力は質が上がるほど光が増すもんね。ベスパとか光源すぎて眩しいし。じゃあ、たれ流した魔力でベスパみたいな別の魔力体は作れないのかな?」
「可能だと思われますが……。それ相応の魔力操作が必要になるかと思われます。私はキララ様のスキルなので、無意識下でも存在できますが別の魔力体を生み出すとなると、そのぶん、よけいな意識を使わなければらないので、相当きついかと……」
「魔力操作ね……。私の苦手なやつだ。ライトは出来てるけど、好き好んでやっていないのを見るに相当難しいっぽい。なら、私がやっても絶対に出来っこないね。でも……、だからこそやってみたくなっちゃう」
「はは……、キララ様。いらぬ張り合いはしない方がいいですよ」
「別に張り合ってないよ。私はライトに出来ないことをやってみたいだけ。やってみてから諦めるようにしてるの。初めから諦めさせるような言葉は言わないで」
「申し訳ございません。では、試しにここら一帯に充満している魔力を使って魔力体を生み出して見たらどうですか?」
ベスパは一礼して手を広げた。
「そうだね。とりあえず……。一番作れそうなビーにしてみるよ」
「な、私という存在がおりながら、別の個体を作ろうとするなんて、キララ様は浮気者ですね!」
ベスパは翅をブンブン動かし、同じように両手両足を振り回す。
「何でそうなるの……。私はビーよりも鮮明に思い浮かべられる存在がいないというか、ブラックベアーは大きすぎるから無理でしょ、なら、必然的にビーくらいしかいないんだよ」
「なるほどなるほど、キララ様はビーの体を細部まで鮮明に記憶されているということですね。それならば、私達のことが大好きということ。ふふ~、ジャンジャン作ってください。私のお友達がいっぱいいたら楽しいですし」
ベスパはさっきと打って変わって乗りきになった。私がビーのことが好きだなんて虚言呟いている。
私はビーが好きなのではなく、嫌いだからよく覚えているのだ。何ならオオスズメバチの方が鮮明に思い出せるかもしれない。私をめった刺しにした諸悪の権化……。あの姿を忘れた日はない。
私は魔力操作を行い、河川敷に滞留している魔力を集めていく。
魔力操作で一番重要なのは集中力と想像力。
魔力をどうやって動かしたいのかと言った考えを具現化する力とでも言おうか。でも、そう簡単な作業ではなく、とんでもなく難しい。
ライトが化け物なだけで普通は簡単に出来ない。もう努力と才能の賜物である。
Sランク冒険者のカイリさんでも魔力操作は苦手だと言っていた。
魔力操作は詠唱や呪文ではなく、無詠唱に近い魔力の使い方なので無詠唱が得意なライトは通常の感覚で行える。だが詠唱や呪文になれた人は苦手になっている。
そのためライトから魔法を教えてもらった子供達は魔力操作が異様に上手い。なんせ、ライトは初めから無詠唱が出来るようになる教育課程を組んでいるからだ。
私もファイアくらいなら無詠唱で行える。でも、ライトは上級魔法でも無詠唱で出来るそう。ほんと化け物じみてるよね。
私はライトではないので、天賦の才能は無いが集中力でなら負けない自信がある。
才能を努力で補おうとするなど並大抵の労力ではない。でも、一回全力でやってみないと得意か不得意かなんてわかるわけがない。ましてや一回やってわかるのならいい方だ。一〇回、一〇○回やって本当に自分が得意か不得意かわかる。つまり、何度も何度もやってみないと自分の能力はわからないということだ。
なので、私は魔力操作の練習がてら、周囲の魔力を集めてベスパ以外の魔力体が作れないかと模索した。
その結果……。
「はぁ、はぁ、はぁ……。な、なんか……。ビーじゃないけど、ビーに似た形に魔力が集まってるよ……」
「ムムム~、見た覚えのない虫ですね。私は結構多くの虫を知っているはずなんですがこの個体は知りません。キララ様が作り出した虫ということですか?」
「私が作り出した虫……」
私は自分の手の中に浮かぶ小さな小さな個体を、目を細めながら凝視する。
オオスズメバチの三分の一程度の大きさ、ビーよりも小さい。魔力体なので色がはっきりとしておらず、黄色っぽく光っている。わかり辛いが花粉を溜める部位が足についているため、ミツバチっぽい。
私の生み出した魔力体にはベスパと同じような意思はなく、翅をブーンっと鳴らしながらどこかに飛んで行ってしまった。
「あれは成功なのかな……失敗なのかな……」
「魔力体は生み出せたので成功なのではないですか。にしてもキララ様の魔力が一気に減りましたね。魔力体を一体作るのにビー達に預けていた魔力をすべてつぎ込んでいましたから……、あの小さな個体にキララ様の魔力の全てを注ぎ込んだことになります」
「えっと……、私は魔力を全部使って魔力体を一体作ったということか……。効率悪」
「いえいえ、キララ様。物凄く効率がいいですよ。なんせ、キララ様の魔力をビー達に預けると何千匹というビー達が必要になります。ですが、あの魔力体を一匹生み出せば、キララ様の全魔力があの個体から取り出せるはずです」
ベスパは興奮しながら話す。
「ん~、よくわからないんだけど……」
「えっとですね……。コップを何個も持つことと、大きな泉を置いておくことと同じ状態です。使い勝手がいいのはコップですが、大量に溜めて置けません。ですが、泉なら大量に溜めておけます」
「つまり……。魔力体を何匹も生み出した方が私の魔力は無駄にならないと……」
「そう言うことです。魔力体にキララ様の魔力を全て注ぎ込む作業は先ほどの魔法の鍛錬と同じかそれ以上の効果があると思われます。魔法の研究をするさいは実際に魔法を放ち、鍛錬をしたいときは魔力操作で魔力体を作りだす作業に集中した方がいいかと」
「なるほど……。魔力体を作る作業は結構楽しかったし、疲れを感じにくかった。でも、もの凄い魔力が奪われていく感じはする。今だってちょっと辛いし。でも、楽しい作業の方が辛さは感じづらいっぽい。出来る限り練習してみようか」
「はい! 私もキララ様の魔力を管理する身ですから、出来うるかぎり援助をします」
私とベスパは魔力が回復すると魔力体を作るために集中した。だが、一回目と同じようにはいかなかった。
何度やっても魔力が途中で霧散してしまう。私は気づいた。集中力の限界が来たのだと……。
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