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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
キララの誕生日公演会(ライブ) ~誕生日前なのにトラウマが再来する編~

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姉弟の繋がりを感じる

「す、すみません。手が解けて凄い解放感だったのでつい吠えてしまいました……」


 クロクマさんは手を合わせて頭を下げて来た。


「い、いえ……。私の方も友達が吠えただけで怖がってすみません……。私、六年前にブラックベアーに襲われて殺されそうになったんです。それ以来、ブラックベアーが心的外傷(トラウマ)になってしまって……」


「そうだったんですか……。まぁ、私達魔物は人族に嫌われていますからね。仕方ないですよ。何なら、私達だって人族を嫌っていますから」


「それなのに、クロクマさんは私たちに助けを求めたんですか?」


「そりゃあ、息子が死にそうで、いてもたってもいられなかったから……、この世界で傷を魔力によって治せるのは人型種のみです。私達は自然治癒能力が高いだけで回復は出来ません」


「クロクマさんは息子さんを助けるために殺されるかもしれないのを覚悟で人族に助けを求めていたと……。凄い根性ですね……」


「なにもしなかったら私達は夫に殺されていました。何か情況が変わるのなら、試してみた方が得じゃないですか」


 クロクマさんは私と性格が似ていた。そのお陰か、話も進み、気がついたらとても楽しい会話相手になっていた。まさか嫌っていた相手が友達になるなんて……。


「じゃあ、クロクマさん。食事が用意出来たら檻の中に運びますね。木の実や動物、魔物の死体なんかでいいですか?」


「はい。それで構いません。どうか、よろしくお願いします」


 クロクマさんは私に頭を下げてくれた。魔物と初めて真面に会話したが頭の良い魔物はここまで普通に会話できるのかと、私は感動する。


 動物達と同じように魔物にも自分の意思があるのだと思うと、争い合うのも仕方ない。両者に考えがあるから争いが起るのだ。


 魔物が何も考えない生き物なのだとしたら、のほほんと生きているに決まっている。


 虫がどうして人を無暗に襲わないかと言ったら襲う必要がないからだ。彼らの考えはどうしたら種を存続させられるかのみ。それ以外の考えは捨てている。


 ベスパによって魔力を与えられる虫たちは種の存続が可能になるため、意思を持ち、私と会話できているのだろう。


「ベスパ。森の中から、食べられる木の実と動物や魔物の死体を腐敗が近いものから持って来て」


「了解しました」


 ベスパとビー達は森の中に飛んで行き、瘴気が漂う腐ったボワの死体を持ってきた。そこそこ大きく、結構離れている場所からでも臭いがきつい。


 ベスパ達はクロクマさんのいる檻にボワの死体を小分けにして入れていく。


「うわぁ~。こんなごちそうをいただいてもいいんですか~!」


 クロクマさんは腐った死体を見てごちそうと言った。彼女らの感覚はいったいどうなっているのだろう。

ブラットディア達と何か近しい感覚なのだろうか。


 クロクマさんは手を起用に使って肉を口に運ぶ。モグモグと食べ進め、大型の生き物であるボワの体を数分で食べきってしまった。やはり大きな体なだけあってとても大食いのようだ。


 子供の方はまだ眼を覚ましておらず、床にぐて~っと寝ころんでいるだけだ。


 ライトは檻の中に手を入れて体を撫でている。その姿を見ると、危ないからやめておけと私は言いたいのだが、クロクマさんが見張っているので心配ないだろう。


 熊のいる檻に手を入れるなんて危なすぎるのだが、相手と会話し、意思疎通をしているからこそ安全が確保されている。


「やっぱりモフモフだ……。メークルとはまた違って気持ちがいいよ。温かいし、魔物も動物とほとんど同じじゃん……」


 ライトは魔物と触れ合い、自分の心で動物と魔物は同じだと感じたそうだ。その心の変化が成長にはとても大切になってくる。誰かの意見に捕らわれず、自分の意見を言える存在になるためには自分で考えるしかない。今、その工程をライトはこなしている。相変わらず優秀な弟だ。


「ライト、息子君にはどんな名前を付けるの?」


「ん~、今、いろんな候補があるんだけど。『ルドルフマドロフ・ロザンジェスタローン・カイロンデファロク・マイアラスチーク……』とか、いっぱい候補があって難しいんだ」


「そ、そうなんだ……」


 ――何でそう、競走バートンっぽい名前になるのかな。というか、ライトも名付けの才能がないんだ。何だろう、姉弟の絆を感じる。


「キララ様。そんなところが似ても何も利点になりませんよ。と言いますか、ライトさんの方がキララ様より名前を付けるのが上手です」


 ――え、なんでそうなるの? 私と同じくらい、名前を付けるの絶対へたくそだよ。だって、名前を聞いただけじゃ、どんな魔物かわからないじゃん。


「名前って別に個体がわからなくてもよくないですか?」


 ――そ、そうなの……。


「キララ様だって人種ですから、キララという名前はおかしいですよね。好きな名前を付ければいいんですよ。皆の特徴を取って名前を付けようとするから無難になるんです」


 ――そうは言っても……。もうクロクマさんには名前を付けちゃったし、私には名前を付ける才能がないから、別にいいよ。


「名前を付けられる方の気持ちになってくださいよ……」


 ベスパは呆れた表情でやれやれと首を振っている。


 私とライトは息子君を撫で、無事を確認したのち、夕食を子供たちのもとに運んで誕生日の次の日の仕事が終わった。


 私とライト、シャインは仕事終わりにもう一度、クロクマさんたちのもとに訪れ、父ブラックベアーの名前をシャインに付けてもらいたいとお願いすると、名前をすぐに付けた。


「コクヨにする」


「コクヨ……。もしかして、黒曜石から取ったの?」


「うん。だって、真っ黒だし。いいかなって」


「コクヨか……。いいね。私の付けた名前よりよっぽどカッコいいよ」


 シャインは褒められてえへへッと笑顔になり、いい気になっていた。


 コクヨは未だに意識を失っており、動いていないが生きてはいる。いつごろ眼を覚まし、暴れ出すのだろうか。


 体内の臓器をウシ君に潰されているのに生きているのも凄い。さすが自己修復機能が高いだけはある。


 コクヨの体長はクロクマさんよりも大きく、見た目がゴツイ。アラーネアの糸すら引き千切ってしまいそうなくらいの風格をしている。


 こんな化け物が優しいだなんて全く以て想像できないのだが……、クロクマさんがイヤンイヤン言いながら恥ずかしそうになれそめを語るのだからきっといいブラックベアーなのだろう。


 仲睦まじい夫婦を切り裂く行為は言語道断。幸せを壊す正教会の魔造ウトサ開発による弊害はこれからも増えていきそうだ。


 私とシャイン、ライトの三人は家に帰り、お父さんとお母さんを合わせた五人で夕食にする。


 現在の時刻は午後七時。夕食中はいつも通りの黒パンにビーの子スープ、牛乳に山菜。干し肉を添えて……。


 干し肉が食卓に並ぶようになってお腹の満たされ具合が凄い。私も一一歳になったわけだが、あと四年で成人になると考えると早いなぁ……としみじみ思う。


 今、私達は家族会議の真っ最中だ。会社では上層部が長い間話し合いを行い、経営方針を固める。その役割を私達が担っているのだから、食事中でも気が抜けない。


「姉さん。七月の売上金だけど、六月の一.五倍に増えてたよ。子供達の挨拶効果かな。購入者自らが朝から牛乳瓶やパックを買う家庭が前より増え始めてる。まぁ、暑くなってきて喉が渇くからっていうのもあるかもしれない」


「なるほどなるほど。一.五倍は凄いね。でも、これからはもっと増えるよ。王都への牛乳販売も行えるようになった。まさかここまで規模が拡大するとは思ってなかったけど……。でも、金銭面での問題は刻々と解消されつつある。ただ、子供達にも普通の生活を提供していかなければならないから、その分、お金が必要になってくるよね」


「そうだね。給料だけ考えても月金貨五○枚は出さないといけない。食費にもそこそこお金がかかる。少人数であればいいけど、二四人も従業員がいると、考えることが多くなるね」


「でも、皆、楽しそうに働いてくれているから、その点はとてもありがたい。一人一人のやる気が凄いから、私達も負けてられないよ」


 シャインは握りこぶしを作り、ガンマ君でも思い浮かべているのか、険しい顔をしていた。


「そうね、私達も吸収力の凄い子供達に負けないようにしないと、すぐに追い抜かれちゃうかもしれないわね」


 お母さんは頬に手を置き、笑っている。子供達の必死な姿を想像しているのかもしれない。

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