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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
キララの誕生日公演会(ライブ) ~誕生日前なのにトラウマが再来する編~

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初心な気持ち

 私は教会の鐘の音と共に(午前五時)起床し、焦りながら服を着替えて家を飛び出す。その頃にはライトとシャインが牛乳配達と子供達への朝食を運んでいた。


 出来る弟と妹を持って嬉しいのだが、私を起こしてくれればよかったのにと思わざるを得ない。まぁ、二度寝した私が悪いのだけど……。


 本日、八月九日にフロックさんとカイリさん、ルドラさんの三人はルークス王国の王都へと向かうらしい。私の誕生日を一緒に向かえるために残ってくれていた心優しき三人だ。


 私は村の入り口でルドラさん達を見送る。


「えっとルドラさん。冷蔵車に二○○本の牛乳パックを積み込みました。一〇○本は王城に献上し、もう一〇○本は菓子職人へ売ってください」


「了解しました。今回は時間がかかると思うので三○日を目途に戻ってきます」


「わかりました。安全に配慮して無事、戻って来てくださいね」


「はい。良い知らせをお待ちください」


「もちろんです。ルドラさんなら、絶対に良い成果をあげてくれるとわかっていますから、安心して待っていられます。でも、あまり自分を追い詰めないようにしてくださいね。数回失敗しても私は大目に見ます。あとで挽回する気持ちで何度でも挑戦してください」


「ほんとキララさんは私を本気にさせるのが上手い方ですね。もちろん努力しますとも。全身全霊、私の持ちうる力を使って牛乳を売ってきます!」


 ルドラさんは冷蔵車の前座席に乗り、荷台と共にバートンを走らせる。


「ま、待ってくださ~い。ルドラさん!」


「ん? え……、め、メリーさん……」


 メリーさんが牧場の方向から大きな胸を躍らせて走ってくる。八〇秒後には私達のもとについた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。る、ルドラさんがもう、行っちゃうって聞いて……、牧場から少し、抜けさせてもらいました」


 メリーさんは両膝に手を置き、息を切らしながら顔をあげる。


「ルドラさん、王都に行っちゃうんですよね……」


「そ、そうですね。仕事なので……」


「わ、私……、ここで待ってますから……。また、戻ってきてくださいね……。あと、世界を旅したというお話の続き、私に聞かせてください」


 メリーさんは珍しく乙女の表情でルドラさんに声をかけた。


「も、もちろんです! また戻ってきますよ!」


 ルドラさんは馬鹿みたいに喜んで前座席から飛び降り、メリーさんの手を握って甲にキスしたあと、舞い上がった気持ちのまま前座席に飛び乗って村から去っていった。


「め、メリーさん。いったいどういう心境の変化何ですか?」


「え? いや……。何だろう……。私もよくわかんないんだ……」


 メリーさんは大きな胸の前に手を持って来て、ルドラさんのキスした手の甲をじっと眺める。数秒眺めたのち、同じ場所にメリーさんは唇を当てる……。どう見ても間接キッスをしていた。


「な、ななな……。い、いったい何してるんですかぁ」


「わ、私にもわかんないよぉ~。これでいいはずなのに、胸が苦しくて仕方ないんだもん……。ギュってなってどうしようもないの……。はぁ……、どうしたらいいのかな」


 メリーさんの様子を見るにルドラさんに恋をしてしまったのかもしれない。


 一三歳にして禁断の恋。相手は婚約者ありの貴族の長男。


 まぁ、叶う恋ではないかもしれないがきっとその気持ちはとてもとても大切な思い出になると思う。ルドラさんがメリーさんに手を出さなければだけど……。


 ――でも、なんか違和感があるんだよなぁ。いったいなんだろう。


 私はルドラさんを見送り、メリーさんの乙女心を知ったあと、フロックさんとカイリさんも村を出発すると聞く。


 フロックさんとカイリさんはルドラさんが先に行ってしまったのを怒っていた。


 どうやら共に王都に行くつもりだったらしい。


 フロックさんとカイリさんは一頭のバートンに乗りながら村の入り口までやってきた。


 ――フツメン男とイケメン男の二人乗り……なんかきっつ。でも、これはこれでありかも。


「あ、キララさん。俺、フロックさんの脚になったっす!」


 レクーよりも小柄な舎弟君が嬉しそうに私に話しかけてきた。


 ――舎弟君。選んでもらってよかったじゃん。でも、フロックさんの脚になるのは、きっと姉さん(レクーの母)の下で鍛錬するよりもきついよ。


「でも俺、フロックさんに選んでもらって物凄く嬉しくて。この人のためなら辛くても絶対に頑張れます。俺、姉さんやレクティタみたいにデカくないですけど、小回りと持久力、脚の速さには自信があるので、フロックさんの助けになれるはずです!」


――そっか。そうだね。フロックさんの身長を考えると、舎弟君の大きさなら丁度いいかも。攻撃するのはフロックさんだから、相性抜群だね。


 私は舎弟君の頭を撫でる。まさか、舎弟君がフロックさんに選ばれるとは思っていなかった。


 でも舎弟君はバートン達の中で、姉さんやレクーに次ぐ実力を持っていたのは確かだ。


 レクーがまだ小さい時、練習にいつも付き合ってくれたバートンなので私も思い入れが強い一頭だ。そのため、フロックさんと向かう死地で活躍できるのかという少々の不安もあった。


 ――舎弟君は姉さんにこき使われていたのだから、きっと大丈夫。


 私はそう信じて舎弟君を祝福した。


 姉さんとお爺ちゃんいわく、バートンの幸せとは誰かに仕え、脚になること。それ以上でも以下でもなく。人の役に立つということが彼らの幸せらしい。つまり、舎弟君は幸せを掴み取ったのだ。


「フロックさん、お爺ちゃんからの許可が貰えたんですね」


「ああ。死ぬかと思ったが、俺の運動神経が良かったみたいだ。だが、バートンの扱いに関しては足下にも及ばない。でも、物凄くいい相棒を手に入れられた。カイリが後ろに乗っているのが癪だけどな」


 フロックさんは舎弟君の首をポンポンと叩いた後、カイリさんを睨む。


「私だってフロックと共にバートンに乗るなんて嫌だけど、今はルドラに追いつくのが先決だろ。ツベコベ言うな」


「はは……。でも、フロックさんとカイリさんはもう行っちゃうんですか? まだブラックベアーから情報を引きだせてないのに……。それからでもよくないですか?」


 私は物寂しさを覚え、フロックさん達に聞く。


「すまないな、キララ。情報は昨日の話で十分だ。あいつらから真面な情報が得られるとは思えない。今は一分一秒でも惜しい。だから、俺達はもう行く」


「そうですか……。なら時間がある時や、何か情報を掴んだらぜひまた来てください。いつでも歓迎しますから」


「わかってる。だが、そう簡単に帰ってもこれない。正教会のやつらが勘づき、俺らの行動を探っていたらこの村も見つかってしまう。もしかしたら一年、二年、帰ってこれないかもしれない」


「そ、そんな……。ま、まぁ。でも確かにそうですよね。フロックさんとカイリさんは超巨大なブラックベアーを倒した冒険者っていうので王都でも知れ渡っていると思いますし……。じゃ、じゃあ。今日が当分の間、フロックさんと最後に合った日ってことですか……」


「そんな悲しい顏するな。また会えるさ。俺達はSランク冒険者だぞ。そう簡単に死なねえよ。でも、キララ、出来るなら危険な行動はとるなよ。今度は俺も助けに来てやれないからな。何もするなとは言わないが、危険を先に感知して行動しろ」


「は、はい……」


 私は露骨に落ち込んでいた。先ほど言っていたメリーさんの言葉が胸に刺さる。無駄に胸が苦しくなって……、フロックさんが心配だ。


「はぁ、フロック。レディーを安心させるのも紳士の役目だ」


「たく……。俺は紳士じゃないんだけどな……」


 フロックさんは舎弟君から降りて私の頭に手を置いた。背は小さいのに手は大きく、ゴツゴツとしてて傷だらけ……。そんな手で頭を撫でられてもうれしくとも何ともない……。


「俺は死なない。何があってもだ。だから心配するな。キララが生きている限り、また会える」


 フロックさんは一二〇点の笑顔を見せて来た。


「わ、私だって死にませんよ……。絶対の絶対に死にません……。一一歳で死んだらもったいなすぎます!」


「はは……。そうだな。あ~、こういう時って紳士はどうするんだろうな。気の利いた行動が出来なくてすまん」


「き、キスするみたいですよ……」


 私は先ほどのルドラさんの行動を参考に、ちょっと言ってみた。


 別に何かを期待していたわけではない、……が手の甲にならちょっとされてもいいかな。なんて淡い期待はあった。


「そうか。キスか……。誰かにした覚えはないが、されたキスでいいなら、させてもらう」


 フロックさんは私の頭を撫でていた右手を額に当て、左手で前髪を上に持ち上げる。


「なっ……、ちょっ……」


 私が拒否する間もなく、フロックさんの唇が私の額に当たった。


 何の手入れもされていないガサガサの唇だった……。だが、その感覚が私のすべすべつるつるなおでこにずっと残っている。


「俺の母親が良くしてくれたキスだ。じゃあ、キララ、健康に気を付けてな」


「は、はぃ……。わ、わかりました……」


 フロックさんは舎弟君に乗り、駆けだしていった。

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