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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
キララの誕生日公演会(ライブ) ~誕生日前なのにトラウマが再来する編~

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フロックさんが、ブラックベアーが嫌いな理由

「ふぅ~、治療終了。よし、あとは包帯を巻いておこう。カイリさんも手伝ってください」


「あ、ああ。わかった」


 私は母ブラックベアーの体に包帯をクルクルと巻いていく。


 母ブラックベアーの体には古い傷がいくつもあり、修羅場をくぐってきたようだ。


 でも、ブラックベアーから受けた外傷だけではなく、剣でスッパリと切られたような傷もあった。見るからに人の手によって切られた傷だ。過去に人に襲われた経験があるのかもしれない。


 目を覚ましたら話を聞こう。


「ブラックベアーを閉じ込めておくにはどれくらいの耐久が必要ですかね?」


 私はカイリさんに聞いてみる。


「壁の厚さは少なくとも一メートル以上あった方が安心だ。でも、突破される可能性もある。絶対に逃がさないようにするなら、石造りの牢屋とか鉄の檻とかに入れるのが普通だと思うよ」


「なるほど、石造りの牢屋か。ライト、岩石を作り出せる?」


「もちろん。出来るよ」


「じゃあ、牧場の開いた土地に二つの大岩を出して。そうだなぁ……一辺八メートルくらいの大岩がいいかな。出来れば立方体でお願い」


「わかった。じゃあ、作ってくるよ」


 ライトは子ブラックベアーを抱きかかえたまま、空中に飛びたち、倉庫のある方へと飛んで行った。


「子ブラックベアーは置いて行ってもよかったのに……」


 私はネアちゃんに子ブラックベアーと同じように母ブラックベアーの口と手を縛ってもらった。これで攻撃される心配はない。


「終わったのか?」


 フロックさんは私たちの方に歩いてきた。


「はい。終わりました。これで、このブラックベアーは助かると思います」


「何で魔物なんて助けたんだ?」


「助けてほしいと言われたからです。助けを求めているのなら誰だって助けます」


「ふっ……。そうか。だが、そんな慈愛の心はそうそう貫けるものじゃないぞ。やると言うのなら、徹底的にやり抜けよ。わかったな」


 フロックさんはブラックベアーを助けた私の頭に手を置いて睨みつけてくる。


「は、はい!」


「じゃあ、俺はシャインと同じように村の周りに魔物がいないか探してくる。カイリは雄の方も警戒しておけ。何があるかわからないからな」


「ああ。わかったよ。そっちも何があるかわからないから、気を付けて」


「わかってる。俺はSランク冒険者だぞ。へまはしないさ」


 フロックさんは森の中に入り、走って行った。


「はぁ、無理してるなぁ。でも、フロックがブラックベアーを殺さないなんて珍しい」


 カイリさんはため息をつき、体を捩じる。どうやら、お疲れのようだ。


「カイリさん。フロックさんはどうしてブラックベアーが嫌いなんですか?」


「フロックは本当の両親と妹をブラックベアーに殺されれているんだよ」


 カイリさんの口から信じられないような話を聞かされた。


「え…………」


「昔、まだ私とフロックが出会う前の出来事だ。フロックは普通の家庭に生まれた。山のふもとにある小さな村でね。その村に、狂暴化したブラックベアーが現れて冒険者が到着するまで人を食い散らかしたんだ」


「そ、そんな事件が……」


「フロックの両親と妹は逃げている途中に食われた。共に逃げていたフロックも殺されそうになったそうだ。そんな時、のちに剣神になるフロックの師匠がブラックベアーを倒しに来たんだよ。多くの村人を食ったブラックベアーが一瞬でこま切れ肉になったって言っていた」


「あのブラックベアーが細切れ肉……。しかも一瞬でって……」


「私もあった覚えがあるけど、まぁ~恐ろしい人だったね。もう、人かどうかもわからない。でも、スキルは普通なんだ。それなのにあの無類の強さは、男が自信を無くすのに十分すぎるって冒険者達の界隈で有名だよ。その人がフロックの親代わりになって実家の養子にしたんだ」


「じゃ、じゃあ。実質姉ってことですか?」


「そうなるね。剣神の父親殿も娘が男だったらどんなに良かったかって思っていただろうね」


「フロックさんは家族皆を殺されて……、恨みを晴らすためにブラックベアーを倒す冒険者になったという流れですね」


「そうだと思うよ。フロックもあんまり話したがらないから、真実かどうかはわからないけど、ブラックベアーにただならぬ悪意を持っているのは確かだね」


――フロックさんにも悲惨な過去があったんだ。それなのにブラックベアーを怖がるどころか、逆に倒そうとするなんて……、精神力が凄い。私も見習わないと。


 私は狂暴化した父ブラックベアーのもとに向う。後方からカイリさんも動向してくれた。


――ベスパ。父ブラックベアーから魔力を吸い取って魔造ウトサの反応があるか調べてくれる?


「了解です」


 ベスパは気を失っている夫ブラックベアーにお尻の針を突き刺し、魔力を吸って行った。


「ふむふむ……。キララ様、ブラックベアーの魔力に魔造ウトサの反応ありです」


――やっぱり。この個体も、魔造ウトサによって狂暴化しちゃっていたんだ。体内の魔石は普通の魔石かな?


「そのはずです。もし、人工魔石が生みこまれているのなら傷は瞬く間に回復するはずですからね」


――そうだよね。じゃあ、この個体は魔造ウトサの実験対象だったのかな。魔造ウトサを食事に混ぜ込まれていたのかも……。でも、奥さんと子供は狂暴化していなかった。雄にしか食べさせなかったのかな?


「ブラックベアーは雄の方が狂暴ですからね。暴れさせるのなら雄の方が危険ですし、陽動にはもってこいだと思われます」


――確かに……。まぁ、理由はさておき、この個体がどこの森から来たのかが問題だよ。近くの森に生息していたのなら、村の近くに敵がいる可能性がある。逆に遠くの森からやってきたのなら、遠くの森が危ない。


「ここら一帯のブラックベアーは軒並み討伐されていますから、別の森からやってきた個体だと思われます。奥さんが眼を覚ましたら話を聞いてみましょう」


――わかった。とりあえず、この個体は魔造ウトサに拘わっている重要な個体だから、死なせるわけにはいかない。まぁ、最悪、家に置いてある万能薬を飲ませてみるのもいいかもしれない。体内なら、魔法が効くと思うし。


「そうですね。魔造ウトサの効果を抹消し、話しを聞いてみるのもいいかもしれません」


 私達が相談していると、ライトが空を飛んで戻ってきた。


「姉さん。大岩を作ったよ。見に来てくれる」


「うん。わかった」


 ライトは私とフロックさん、ブラックベアーの二頭を浮かべ、共に移動した。


「ほ、本当に飛んでる……。こんな魔法、見た覚えがない」


 カイリさんは回りを見渡し、苦笑いをしていた。どうやら自分が空中に浮いているという事実が信じられないようだ。まぁ、カイリさんは自分のバリアで移動が出来るはずなので新鮮味は薄いかもしれない。


「『フロウ』と『ウィンド』の二種類の魔法を使って移動しています。慣れれば移動が凄く楽になりますよ」


 ライトはカイリさんに向って魔法の原理を律儀に説明した。


「普通は一種類の魔法しか使えないはずなんだけどね……。いったいどういった訓練をすればこんな魔法が使えるようになるのか教えてほしいよ……」


「普通に魔法を練習してただけですよ。特段変わった練習はしていません。ね、姉さん」


「う、うん。えっと私達には魔力を溜めて放つくらいの知識しかないので、それをずっと練習していました」


「本当に普通だね……。何か特別なことはしていないのに、ここまで普通の魔法と逸脱しているとは……」


 私達は倉庫の方に移動し、大岩の前に降り立つ。


――ベスパ、この大岩を使って牢屋を二部屋作ってくれる。


「了解しました」


 ベスパが光ると、ブラットディアが岩に貼り付き、ゴリゴリと食べながら削っていく。


 私はビー達の光学迷彩を使い、ブラットディア達が視界に映らないよう、光を捻じ曲げて岩が削られていく様子だけを見せる。


 私は魔法をあたかも使っているように見せるため、地面に手を置いて魔法陣の素を浮かび上がらせる。


 ライトは私の方を見ておらず、ブラックベアーの子供に溺愛だった。モフモフが好きなのか、単に触れたことのない触感だから面白いのかわからないが、美少年とモフモフの相性は抜群だった。ライトも何かしらの実験を行っているのかもしれない。


 二人にはあっという間に岩が削れて檻になったと思っているのだろうが、残念ならが真後ろには地獄絵図が蔓延っている。何匹ものブラットディアが岩を食い散らかしていき、牢屋が完成すると散らばっていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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