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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
キララの誕生日公演会(ライブ) ~誕生日前なのにトラウマが再来する編~

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成長しない体

「ありがとうございます、キララさん。僕もキララさんは本当の姉みたいに慕っています。僕にこんな素敵な夢を与えてくれて……、ほんと……、ありがとうございます」


 ガンマ君は泣いてしまった。私は、ちょっと焦ったがすぐにギュッと抱き着いて泣いている子供の頭を撫でる。


――まぁ、ガンマ君の方が身長が高いのだけど、私はお姉さんにちゃんとなれているだろうか……。どれだけしっかりしているように見えても、この男の子はまだ七歳。日本だと小学一年生なんだ。そりゃあ不安でいっぱいだったよね。


 本当はお母さんにもっと甘えたいはずなのに……。こっちの世界の子供達は皆大人っぽ過ぎる。もっと子供らしく生きていてもいいのに、と思うが世界は安寧を許してはくれない。


「ごめんなさい、キララさん。僕、男なのに泣いてしまいました……」


 ガンマ君は顔をあげて眼元を擦る。


「泣いたっていいよ。好きなだけ泣けばいい。男の子が泣いたらいけないなんてそんな法律はないよ。泣くのはいたって自然なこと。辛いのなら涙をいっぱい流して、すっきりする。嬉しくても悲しくても涙を流せば荷がすっごく軽くなるよ。私に胸はないけどいつでも貸してあげる」


「はは……。僕、メリーさんのような大きな胸の人よりもキララさんのような人の方が好きです」


「な!」


 ガンマ君は珍しく貧乳派だった。


――ほんとこの子……、もし余ってたら私が将来貰おうかな。


「ん、んんん。えっと、まぁ、別に。その……ありがとう。ちょっと嬉しい。いや、だいぶ嬉しい。ま、私は年下に興味ないから。安心してね」


「ん?」


 なんせ私の実年齢は二一歳。これは死んだときの年齢なので、今の心の方は三一歳だ。もう三十路のおばさんである。そんな私が七歳の子に興味を持つかね? もし手を出したら列記とした犯罪だ。


「ガンマ君なら絶対に学園に行けるから、努力を続けてね。報われる日が来るから」


「はい。ありがとうございます。じゃあ、僕はこれで」


 ガンマ君は私に頭を下げ、テリアちゃんのいる方に歩いて行った。


――皆、生きることだけじゃなくて日頃の生活の中に何か自由を見つけられたのかな。良かった。ほんとうに良かった。私の努力は報われているよ。


「キララ様。家に帰らないとそろそろ夕食時ですよ」


 ベスパは私の周りを飛びながら言う。


「そうだね。まだ、日が明るいから時間の感覚がずれちゃってるよ。じゃあ、レクーを牧場に戻して私達も帰ろうか」


 私はレクーを牧場の厩舎に戻した。そのまま、走って家まで帰る。


「ただいま~。ちょっと遅れちゃったよ。皆、ごめんね」


 私が家に帰ると、お父さんとお母さん、ライト、シャイン、フロックさん、カイリさん、ルドラさんの七名が言いあいをしていた。


「だから! 明日は外でやろうって言っているじゃないか。その方が楽しいぞ」


「外なんて熱くて集中できるわけないでしょ!」


「僕達の貯金を叩いていい物を送ろうよ」


「え! 何でそうなるの。ここは私達皆の手作り料理を送るべきでしょ」


「ん~、キララって何が喜ぶんだ?」


「想像できないね。もしかしたらお金が一番喜ぶんじゃないかな」


「カイリ、お金はさすがに適当すぎるよ」


 七名がべちゃくちゃと喋っている。どうやら私が帰ってきたのに気づいていないらしい。どれだけ熱中して喋っているんだか……。


「あ、あの~。皆、何の話をしているの?」


「え?」×七名。


 私がいることに気づいたのか、皆、一斉に黙った。そのまま、お母さんは何もなかったかのように夕食の準備に取り掛かる。


 お父さんとフロックさん、カイリさん、ルドラさんは椅子に座り、ライトとシャインは私のもとに寄ってくる。


「ね、姉さん。これ、お湯。先に体を拭いて来なよ。僕は仕事で魔力を使い過ぎちゃったから『クリーン』が使えないんだ」


 ライトはお湯の入っている桶を私に渡してくる。


「え、でも私は先に夕食を……」


「お、お母さん、まだ夕食作れてないんだって。だから、お姉ちゃんは部屋でゆっくりしてて。それか、私が体を拭いて上げてもいいよ」


 シャインは布を持って早口で言った。


「そ、そうなの。じゃあ、まぁ……。わかった。私の部屋でちょっとゆっくりしてるよ」


 私はライトからお湯の入った木の桶とシャインから乾いた布を受け取り、部屋に戻る。


「ベスパ、扉を開けてくれる」


「了解です」


 私は両手が塞がっていたので、ベスパに扉を開けてもらった。部屋に入り、お湯の入った桶を床に置く。


 私は上の服を脱ぎ、内着も脱ぐ。ブラジャーなんて着ける必要がないので、着けていない。ほんと、男子みたいな胸だな、と何度思ったことか。今は夏なので夜の気温は冬に比べ大分温かい。そのため、上裸でも全然平気だ。


 私は乾いた布をお湯につけてしっかりと濡らした。布がお湯を吸ったら、雑巾を絞るように力をギュッと入れ、水気を取る。


「よし。あとは体を拭いていくだけ」


 私は体の前側を拭き、背中はディアたちに任せる。ゴキブリに背中を流されるとは前世で一度も思った覚えはない。だが、ディアたちはとてもきれい好きらしく、垢を全く残すことなく、拭き上げてくれた。


「グぬぬ~。キララ様の背中を流すのは私のはずなのにィ~」


 ベスパはディアに先を越されたのが悔しいのか、気張るように歯を噛み締めている。


「仕方ないでしょ。ベスパ達にやらせると、私が気絶しちゃうんだもん。まだ、ベスパ達に触れられるようになるには長い月日が掛かりそうだよ」


「キララ様がそう言うのであれば、私は長い月日を待ちましょう」


 ベスパは潔く了承し、空中に漂っていた。


「さてと、下半身も拭きますか。毛の処理がまだまだ必要ないくらいツルツルだけど、この世界にも毛の処理とかあるのだろうか……。ま、いいや。さっさと洗おう」


 私はズボンとパンツを脱ぎ、全裸になる。どうも、全裸と言うものは解放感が素晴らしい。この状態で外を走ってみたいと何度か思った覚えがある。まぁ、お母さんに捕まるのでやった覚えはない。


 私は上半身を拭いた布をお湯に入れ、綺麗に洗った後、同じように搾り、水気を切る。布で下半身を綺麗にしたあと、早く服を着ればいいものを、解放感が素晴らしく、もう少し堪能しようと思った矢先……。


 部屋の扉が『ガチャリ……』と開いた。


「へ……?」


 私の心臓が止まった。今、この状況から服を一瞬で着れるほど、私は早着替えの能力を有していない。


「お姉ちゃん、もう夕食の準備が出来たよ」


 扉を開けたのはシャインだった。もう、扉を叩いて入っていいか聞いてほしかったよ。


「あ、あぁ、なんだ、シャインか。よかった……。フロックさんとかだったらどうしようかと……」


「もう、お姉ちゃんがそんなんだから、私が来たんだよ。お母さんが言ってたもん『キララはどうせ全裸になって寝ころんでるからシャインが呼びに行って』って。よかったね、私で。フロックさんだったらお姉ちゃん、どんな気分になってたと思う?」


 シャインはご機嫌斜めのご様子だった。何かあったのだろうか。


「ご、ごめん。すぐに着替えて居間に戻るから」


「もう、そんな男の子みたいな行動しているから、胸もお尻も大きくならないんだよって。お母さんが言ってたよ」


「よ、よけいなお世話だよ。私だってお母さんみたいなボンキュボンになるんだから。絶対になるんだから……」


 私はまっ平な胸に手を当てる。


「もう、胸なんて要らないよ。筋肉の方が大事だし……」


 シャインは自身のちょっと大きくなった胸に手を当て、俯きながら居間に歩いて行った。


「むむむ……。シャイン、いったい何を悩んでいるのかな。胸が大きくなるのは全女性の憧れなんじゃないの? かくいう私もめっちゃ大きくなってほしいんだけど……」


「キララ様、少し考えればわかることじゃないですか。シャインさんの好きな相手が、女性の胸部が大きくなくてもいいと思っている訳ですよ。シャインさんはそれにうすうす気づいている訳で、大きくなり始めている自分がお母さんのようにならないか心配なんです」


 ベスパはポールダンスをするようにクルクルと回って空中から降りてくる。


「あぁ……、なるほど。って、その考えは合ってるの?」


「さぁ、私の憶測でしかありませんから、何とも言えませんね」


「まぁ、体の成長は止められないし、どんな風になっても仕方ないよ」


 私はさっさと着替え、居間に向った。先ほどのような静まり返った空気ではなく、いつも通りの和やかな夕食を過ごし、とても楽しかった。


 夕食後、私は食器を洗い、歯を磨いて勉強の準備を行う。


 他の皆は体を拭いて綺麗にしていた。


 私は自室の前に向う。すると、隣の部屋でしくしくと泣く声が聞こえる。隣の部屋はシャインの部屋なので、シャインが泣いているのだとわかった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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