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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
『風の悪魔』が笑えば街が吹き飛ぶ ~大雨の中でも仕事する編~

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子供が多いと街が成長する

「これなんかどうだ? 冒険者用黒パン」


 オリーザさんはかっちかちの黒パンよりもさらに固い、冒険者用の黒パンを大きな木製の箱ごと持ってきた。


「そんなに沢山もらってもいいんですか?」


「ああ、長期保存用の黒パンだ。乾燥した場所においておけば一年以上は食える。冬の保存食としても有能だぞ。それが……、八箱ある」


「え、えぇ……。そんなに貰ってもいいんですか?」


「問題ない。バターや特能薬なんて言う高級品を貰ったんだ。これくらいじゃ釣り合わないくらいだぞ」


「まぁ、いただけるのなら貰いますね」


 私はまるで岩なのではないかと思うほどかちかちの黒パンが沢山入った木製の箱を八箱貰った。


 オリーザさんはせっせと運び、荷台に積んでくれた。


「よし。積み終わったぞ。まさか今朝の天気でも街にやって来るとは思わなかった。加えて荷台まで持ってくるとは……」


 オリーザさんはお店の中に戻ってきて、やはり変わったやつだなと言った表情を私に見せてくる。


「例え嵐だろうと来れると思った時には来ます。私の仕事はそう簡単に止められないのです。なんせ、仕事をしないと村にいる従業員の給料を払えませんからね」


「そうか。嬢ちゃんも背負っている側なんだな。確かに、背負っている側からしたら簡単に止める訳にはいかないよな。俺も、これからはもっと頑張らねえと……」


 オリーザさんはコロネさんの方を見てはにかんでいた。


「オリーザさん。昔の夢は変わっていませんか?」


「ああ、変わってない。俺はルークス王国の一等地でパン屋を開く。そんで王国中の者に俺のパンが国一美味いと知らしめてやる。その夢には間違いなく嬢ちゃんが必要だ。これからも力を貸してくれ」


 オリーザさんは私に手を刺し伸ばしてくる。


「そうですか……。なら、私もオリーザさんの夢をもっと応援します。そのために質が良く、値段をなるべく抑えた商品の開発を目指しますね」


 私はオリーザさんの手を握り、握手を交わした。


「他の牧場が潰れない具合に抑えておけよ。そうしないと嬢ちゃんの牧場が市場で一強になっちまう。それじゃあ、他の場所が成長しないからな」


「もちろんわかっていますよ。私の思っているより、差が激しいみたいですからね。自重して美味しい商品を開発します」


「期待している」


 私はオリーザさんの大きな手を放した。


「じゃあ、私は帰りますね。コロネさん、絶対に無理したらいけませんよ。ちょっとした衝撃でも最悪な事態になる可能性があるんです。お腹の中の新しい命がしっかりと定着するまで安静にしていてください。安定したとしても無理な動きはしないように」


「な、なんかキララちゃん、すごく詳しいね。お母さんみたい……」


 コロネさんは目を丸くして私の方を見ていた。


「え、ああっと……。まぁ、その……、淑女の嗜み程度の知識として頭に入れてますから」


「そうなんだ。でも、ありがとうね。心配してもらえるだけでも、すごく嬉しいよ」


 コロネさんはお腹を摩りながら、笑っていた。私のお節介な性格でコロネさんに不信感を持たれてしまったが何とか誤魔化せたようだ。


 私はお店を出て荷台の前座席に座り、手綱を握る。ウシ君に合図を送ると動き出し、オリーザさんのお店の前から移動した。


「はぁ~。街や社会情勢ががボロボロの状態でも赤ちゃんは生まれてくるんだよな……」


 私は壊れている街の建物を見てふと呟いた。


 この世界でもいろんな場所で赤子は生まれてきている。


 だが、人間の赤子の生存率は決して高くない。なんせ、人の赤子は弱すぎるのだ。力や免疫力、知能すらほぼ持っていない。


 たとえ無事に産声を上げて母体から産まれても、栄養不足になり生後間もなく亡くなる赤子が多いと聞く。せっかく生まれてきても育たず死んでしまうのだ。


 理由は単純に母親の母乳が出ないから。しっかりとした食事をとっていれば問題ないが、あまりに栄養が取れないと母乳は出ない。


 私は街の辺りを見渡しても赤子を抱いている人が全くいないのを少し危惧していた。まぁ、夕方だからかもしれないけど……。


「ベスパ、この街に赤ちゃんって何人くらいいるのかな?」


「そうですね。数えていないのでわかりませんけど、一〇〇〇人もいないと思いますよ。もしかしたら五〇〇人以下かもしれません」


「確かこの街の人口は三万人くらいだったよね。そう考えると一〇〇〇人もいれば多い方か……。でも、誰も家から出さないんだ。ずっと家の中で育てているのかな?」


「そのようですね。外は危険です。子攫いなんかも発生するそうですし、家の中が一番安全なんですよ」


「そうか……」


――赤ちゃんは外気浴をした方がいいんだけどな。そうしないと健康を害しちゃう。でも、赤ちゃんを外に出しましょうと言っても誰も動かないと思うし……。どうするべきか……。


 この世界でも赤ちゃんは宝だという風潮は強く、皆、一生懸命に育てる。だが、育てられない家庭がいるのも確かで、数年前は酷かったとマザーも言っていた。街の至る所で路上暮らしの子供達がいたそうだ。


 今は街の領主がいなくなり、子供を育てやすい環境に変わりつつあるのはたしかだが、ベスパの話を聞く限り、育て方は一切変わっていないようだ。


「子供の私がとやかく言っても誰も信じない。大人の人が言っても信じないだろうな。赤子はこう育てるもの! という強い縛りが古くからあるのなら、皆そうしてしまう。新しい事実がわかっても受け入れようとしない人がいるのも事実だよな」


「キララ様、先ほどから何をぶつぶつと仰っているのですか?」


「あ、いや。別に何でもないよ。ただ、赤子が増えてくれたら街も活性化するのになと思ってさ。人が増えれば街で売買する人が増える。街の成長率は子供の数と言ってもいい。子供の多い場所ほど成長率が高くて少ない場所ほど成長率が低い。統計学からもたらされる事実だよ……多分」


「確かにそうですね。子供がすくなければどんどん人の数が減っていきますけど、多ければ子供が大人になった時、また子を産んで増えていきます。でも人族は大変ですよね。虫に比べたら子を産む労力がありえないほど大きいですから」


「まぁ、虫は子の数で種を存続させるように進化した生き物で、人は知識を使って子を育てる進化をしたんだよ。私の憶測だけど……」


――この世界の成り立ちは分からないけど、地球とほぼ同じ過程をふんでいるはず。そうじゃなかったらこんな姿形そっくりな種族が生まれる訳ない。でも、魔法が使えるようになったのは訳がわからないな。この世界の歴史も学園に行けば教えてくれるのだろうか……。


 私達は村に繋がる東の出口に移動した。いつも通り門番のおじさんに挨拶をする。


「おじさん。天気がよくなってよかったですね」


「ああ、そうだな。風邪をひかねえように早く帰りたいぜ。嬢ちゃんも風邪ひかないようにな。重い風邪をひくと辛いから、しっかりと寝て疲れを取るんだぞ」


「わかっていますよ。私はもとから風邪をひきやすいので体調管理にはしっかり気を使っています。私が休むと他の人達が困ってしまいますから、絶対に風邪を引けないんですよ」


「そうか、なら。早めに帰るのが先決だな。地面がぬかるんでるから滑らないよう気を付けるんだぞ」


「はい。では、おじさん。また七日後に会いましょうね」


「ああ、そうだな。仕事しながら気長に待ってるよ」


 私は兵士のおじさんに手を振りながらウシ君を走らせた。


 今日は意識していたおかげか街にあまり長居しないで帰宅している。いつもは午後七時や八時頃に街を出ていた。でも今日は午後六時に街を出発できた。夏の時期なので暗くなるのも遅い。午後六時でもしっかりと明るさがあり、安全に帰宅できる。ただ、私が思っていた以上に地面の状態がよろしくない。


 村に続く道は大雨によってびちょぬれでぐずぐずだった。


 ウシ君じゃなかったら足を取られて真面に歩けない。


 荷台の車輪に魔法をかけていなかったら土砂に滑りっぱなしでウシ君の負担になっていただろう。だが、私達は対策してあるので問題なく進めた。でも、進めるだけで全力で走れるわけではない。


「この道じゃ、帰るのが結局遅くなりそうだな」


 いつも三時間ほどで移動している道が、今日は地面の質が悪いから五から六時間ほどかかりそうだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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