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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
全くいらない”蜂と仲良くなれる”スキル『虫使い「ビー」』を貰いました。 ~10歳偏~
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牛乳瓶……?

 ――牛乳をどこに入れよう……。バケツみたいな容器はあるけど、容器に入れた牛乳を密封する物が無い。牛乳は凄く腐りやすいから、密封した入れ物に入れて冷やしておかないといけないんだけど、その肝心の入れ物を考えることを忘れていた。


 私は厩舎の近くで歩き回り、考え事をしていた。


「う~ん、う~ん……。どうしよう、ミルクに明日からって言っちゃったし」


 ペットボトルや紙パック、ガラス瓶も無い。


「あ~! どうしよう! せっかく牛乳が取れるのに! それを保存しておくことが出来ないよ!」


 私が慌てふためいていた時『ぶ~ん』と嫌な音を立てて空を飛ぶあいつが話しかけてきた。


「キララ様、何を唸っているのですか?」


「ベスパ……。牛乳……、あ、牛乳っていのはミルクのミルクのことね」


「ミルクのミルクじゃわかりにくいですもんね」


「その牛乳を入れる容器が無いの。どうしようかずっと考えてるんだけど、どうしても思いつかなくて。やっぱり寝た方が良いのかな……」


 私が寝不足で思考が回らない頭を抱えながら悩んでいると、ベスパが私の目の前に飛び込んで来た。


 一瞬燃やしてしまいそうになったが寝不足のせいか呂律が上手く回らなかったため魔法が発動しなかった。


「キララ様! こういう時こそ私を頼ってください!」


 ベスパは黒い瞳を輝かせながらハキハキと喋る。


「え……。ベスパに頼んでも無理でしょ。だってベスパは『ビー』だし」


「ちっちっちっ! キララ様~、私を甘く見てもらっては困りますよ」


 不快な生き物は生意気な顔を浮かべながら八の字に飛ぶ。


 ――うう、頭が痛くなって来た。


「じゃあどうにかしてくれるの……」


「もちろんです! キララ様の言いようだと頭の中で入れ物が思い浮かべられているはずです。そうですよね?」


「ま、まあ、そうだけど……」


「でしたら、頭の中で細部まで想像してみてください。材質、材料、形、硬さ、重さ、大きさ、何でも思い浮かべられるだけ思い浮かべてください」


 そう言われたので私は牛乳瓶を思い浮かべてみる。


「透明で、少し重くて、つるつるしていて……。材料は確か珪砂とソーダ灰、石灰だったはず……。形は徳利みたいな感じで……」


 昔ガラス細工の取材に行ったとき習った材料を何となく思い出す。


「なるほどなるほど、キララ様の頭の中ではそのような入れ物が思い浮かべられているのですね。了解しました!」


 ベスパはロケットのように真上に飛んで行く。


「皆さん~! 今から情報をお送りします! できるだけ再現してみてください!」


 山や草原、家の周りから無数の『ビー』が飛び立ち、ベスパのもとへと向かっていく。


「なるほど、なるほど……。これが限界でしたか」


 小さな黒い塊とベスパが一緒に下りてきた。


 私は咄嗟に八メートル離れる。


 黒い塊が地面に着く。遠目から見ると黒い塊だが、よくよく見ると『ビー』たちが無数にいることで黒く見えていたのだと気づく。


 ――うわ……。気持ち悪い。


 黒い塊からビー達が少しずつ離れていき、何かが姿を現した。


「え……。もしかして……」


 私はすぐさま近くで確認する。地面に置かれていた品を手に取ると、懐かしさがドッと溢れてきた。


「もしかして牛乳瓶! いや……、ちょっと違う。こんなに軽くないし、透明でもない」


「すみません、キララ様。皆さんの力を借りましたがこれが限界でした」


 ――さわり心地は何となくプラスチックに似てるけど、ちょっと違う。紙でもないし。何だろうこの素材。


「これ良いんじゃないかな……。ちょっと試してくる!」


 私は寝不足なのを忘れ、川まで全速力で走っていた。


「お待ちください! キララ様!」


 後方から聞こえるベスパの声を無視して走る。


「はぁ、はぁ、はぁ……。着いた! この牛乳瓶が使えるのか試させてもらうよ!」


 私は牛乳瓶に似た容器を川の中にそっと入れる。


「よし! 水にすぐ溶けない。そこは合格」


 私は川から容器を取り上げる。


 容器の中には水がしっかりと入っていた。


「やった……水も漏れださない!」


 私は帰路に咲いていた花を数本、容器に入れる。そのまま容器を家まで持って帰った。


 扉を勢いよく開けて靴を脱ぎ捨てる。


「あら、キララ、お帰りなさい。今日は早いわね」


 お母さんは椅子に座って縫物をしていた。


「ただいま! この容器をテーブルの上に置いておいて!」


 私はお母さんに花がいけられた牛乳瓶を渡す。


「あら綺麗なお花……。えっと、変わった容器ね」


「私の夢がかかってるの! それじゃ、また牧場に行ってくるから!」


 私は一瞬で家を後にした。


「い、行ってらっしゃい……。ほんとによく働くわね」



「ベスパ! さっきの何!」


 私は興奮冷めやらぬ勢いでベスパが居た厩舎に戻り、概要を聞き出す。


「えっと、簡単に言えばビー達の巣から作った品です。他にも補強するために色々な方に助けてもらっています。ただ、どうしても重くすることと透明にすることが出来なくて。なんなら素材も違いますし、キララ様が思い描いていた品を作ることが出来ずに申し訳ございません」


 ベスパは頭を下げながら謝って来た。


「いや、水を入れられたし、作りはしっかりしていたから時間を置いて形が崩れなければ使えるよ! 多分だけど……」


「多分ですか……」


「ビーの巣って言うのが少し嫌だけどビーがいないなら、まだ耐えられる。でもさ、ベスパ! さっきの容器って私の頭に思い描いていた品だよね。もしかして私が思い描いていた物が作れるの!」


「はい。ただ完全に再現することは難しいです」


「それなら私はもっと簡単な品を知っているからちょっと作ってみてくれない?」


「キララ様がそうおっしゃるのであれば、全力でやらせていただきます!」


 私は牛乳パックを思い描く。素材は単純に紙のはず。


「キララ様! これなら簡単です! すぐに持ってまいります!」


 ベスパはまたロケット花火のように飛んで行った。


 八分後、さっきと同じように黒い球が地面に落ちる。ビーたちが離れていき、牛乳パックが目の前に現れた。


「す、凄い! 牛乳パックだ! これで少しは保存できるはず」


 ――牛乳が飲める。お菓子作りに絶対に必要になってくる牛乳を確保できたのはデカイ!


「よ~し! 明日から忙しくなるぞ! ベスパも手伝ってね!」


「もちろんです! 私にできることであればなんでもさせていただきますよ!」


 ベスパは手足を振り、やる気を見せた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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