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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
『風の悪魔』が笑えば街が吹き飛ぶ ~大雨の中でも仕事する編~
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適材適所

「にゃぁ……。世界が亡ぶなんて全く想像できないのにゃ……。誰かの戯言だと思いたいけど、そういうわけでもなさそうにゃ……」


 トラスさんは両手で頬杖を突きながら呟く。


「もし、世界が亡ぶのなら、それこそ神が黙っていませんよ。きっと誰かが助けてくれるはずです。勇者、剣聖、は王都にいるんです。まだ、簡単に世界が亡ぶなんて分からないじゃないですか。もう少し明るく行きましょうよ」


 私は暗い空気を和ませるため、笑顔を作った。作り笑顔の天才である私は容易に一二〇点の笑顔を皆に見せる。


「そうですね。私達でも気づけるくらい堂々と現れたわけですから、王都にいる冒険者や騎士達が気づいていないわけありません。ルークス王国のほかにもビースト共和国、プルウィウス連邦、その他、城塞都市アクイグルや、シーミウ国。などの国々が躍起になって抗うはずですから、そんなにすぐ世界が亡ぶことはないと思います」


――な、なんかいきなり知らない単語がいっぱい出てきた……。全然効いた覚えない国ばっかり。と言うか、ルークス王国以外にも沢山国があるんだ。そりゃそうか。世界は広いもんな。日本とアメリカとかそんな感じかな。


「田舎に住む私達に出来ることは仕事をして優秀な方たちの勝利を願うこと。世界を救っても世界の人達が生きて行けない状態ではどうしようもないですし、私達には大きすぎる問題を解決できるだけの力がありません。なので困っている人や村を助ける程度でいいと思います。適材適所ですから、今のところ悪魔は強国に任せましょう」


 私は冷静に物事を考え、強い人達に丸投げする。


「楽観的な考えですが……、理にかなっていますね。確かに、私達が束になってかかっても悪魔は倒せません。そもそも、あんな遥か上空に移動する手段が限られています。地面から魔法を放ってもとどくわけがありませんし、神に祈っていた方が効果はあるかもしれません」


 ノルドさんは両手を握り合わせ、神に祈る姿勢を見せた。


「たしかににゃ~。まぁ、遅かれ早かれ世界がどうなるかは分かることにゃ。ニャーらは寝て速報をまつしかないのにゃ~」


 トラスさんはテーブルに頬を着けて突っ伏したまま眠ろうとする。その時、眼を少し開けて私の方を見た。


「にゃ……。キララちゃんの服変わってるのにゃ。こんなペラペラでツルツルしている服、見た覚えがないのにゃ。最近の流行なのにゃ?」


 トラスさんは私のカッパを摘まみ、触ってきた。


「いえ、違います。これは雨具です」


「雨具……。服が雨具なのにゃ?」


「服と言うか、ローブのように服の上から羽織っているんです」


「ローブ……。こんなに薄いローブは初めて見たのにゃ……」


「キララさん、その薄いローブで雨が防げるんですか?」


 目の前にいたノルドさんがカッパの性能に食いついてきた。


「はい。防げますよ。実践しましょうか」


 私はフードを被り、ギルドの外に出る。


『ビュゥウウウウウウウウ!!』


 私は風に吹かれ、大雨にさらされる。だが、先ほどよりも力が弱まっているように感じた。どうやら悪魔が遠くにどんどん移動しているらしい。


――今は悪魔のことよりも商品の紹介をしないと。中途半端な気持ちでやったら誰も心を動かさない。この商品のすばらしさをこの場にいる四人に伝えるんだ。


 私は自分に暗示をかけるように心の中で唱えた。すると、世界の崩壊と言う大きすぎる不安は消えてなくなり、仕事に集中できた。


 私は雨に数分間打たれたあとギルドに向かう。今回は雨を払わず、カッパの表面がビチャビチャのままギルドの中に入った。


「このように雨具が雨を弾いてくれるので、私は濡れないんです。体や服だけでなく、武器や防具なども雨から守れます。ある冒険者の二人から大変好評だったので、ノルドさんも一度試着してみますか?」


「き、着てみてもいいですか!」


「わかりました。すぐに用意します」


――ベスパ、ノルドさん用のカッパを持って来て。


「了解です」


 ベスパはバルディアギルドを飛び出し、カッパを一着持ってきた。私はベスパからカッパを受け取り、ノルドさんに渡す。


「どうぞ。大きさは合うはずなので、防具の上からそのまま羽織ってください」


「わ、わかりました」


 ノルドさんはカッパを背後にバサッと靡かせて肩に羽織る。その仕草がアニメのワンシーンみたいでかっこよかった。そう思ったのは私だけではなく、後方の双子もそうらしい。


 ノルドさんがモテるのは何となく分かる。醸し出されている雰囲気からして優しそうなのだ。きっとノルドさんが好いた女性は一生大切にする人間だろう。さっきのブレイクさんとは性格がまるっきり違う。


 ノルドさんが有名になったら、いつか打ち明けようか。私がいなかったらとっくの昔に死んでたんだぜ、感謝しなって。はは、なに様だよってなるか。


「いい感じですね。とてもよく似合っています。さすがAランク冒険者さんです。もう、見栄えから何もかも普通の男性と違いますね。もとがいいから何を着てもカッコいいです! 惚れ惚れしちゃいますよ~」


 私は営業話(トーク)のプロである。おだてるのが上手いのも才能の内だ。


 多くの男性はよいしょすれば嬉しがるものなのだ。たとえよく似合っていない服でも美人の女性定員さんに『うわぁ~、すっごいかっこいいですよ~』なんて言われたら買ってしまうのと一緒。まぁ、ノルドさんは実際よく似合っているので事実だけを言っている。あまり大きな行動をとると子供っぽくないと思われそうなので自重しておいた。


「あ、ありがとうございます。恐縮です」


 ノルドさんはペコペコと頭を下げ、私に感謝してきた。


 後方の双子は私に鋭い視線をぎろりと向ける。


――ちょっとおだてすぎたかな。あの二人を怒らせたら怖そうだ。


「では、ノルドさん。フードを被って雨の中で立っていてください」


「はい」


 ノルドさんは私と同じようにカッパを着てフードを被った後、ギルドの外に歩いて行った。靴は革製のブーツを履いており、簡単には水がしみ込んでいかなそうだ。


 ノルドさんは数分間、外で走りまわったり、剣を振ったり、ジャンプしたりして、冒険者の依頼さながらな動きを見せる。どうやら実戦で使えるかどうか吟味しているらしい。


 少ししてノルドさんが戻ってきた。


「これ、いいですね。凄く欲しいです。いくらですか?」


「ノルド様。購入をそんなに早く決めてもいいんですか? よく知らない少女の売っている品なんて普段は買いませんよね」


 ラルさんはノルドさんに近寄って話しかけていた。


――まぁ、確かに。私も一〇歳の少女が売っている服なんて買おうとしないし……。でも私はデイジーちゃんからレモネを買ったんだよな。まぁ、他の大人は皆素通りしてたけどね。私はレモネが欲しかったし、デイジーちゃんが凄く可愛かったからつい買っちゃった。つまり、冒険者が誰も欲しい物であり、私がめちゃくちゃ可愛いのだから、ノルドさんが欲しがるのは必然なのだよ。


「ラルも着て、外を動いてきてみてほしい。きっと驚くよ」


 ノルドさんは自分の羽織っていたカッパをラルさんに着せた。


 ラルさんは少し驚き、肩を跳ねさせた。でも、すぐにうれしそうにはにかむ。にやけ顔を見られたくなかったのか、視線を下に向けて身長の高いノルドさんに表情が見られないようにする。


 ただ、ベスパが持ってきたカッパは男性用なのでラルさんにはすごく大きく、身長の丈も合っていない。カッパの裾が地面にすれており、ノルドさんはカッパをラルさんの肩から外した。そのせいでラルさんは残念そうな顔をしている。


――ベスパ、ラルさんとメルさんのカッパも持ってきて。


「了解しました。すでに作成済みなのですぐに持って来れます」


 ベスパは扉から出ていくとすぐに戻ってきた。


「どうぞ」


 ベスパは深い緑色のカッパと赤茶っぽい色のカッパを持ってきた。どうも二人の髪色を模して作っているっぽい。何とか森にある色で頑張って作ろうとしているとわかる。


――ありがとう。大分色が増えたね。


「試行錯誤で何とやらです。キララ様に色の文句を言われるのは私達も悔しいですからね」


――へぇ、結構頑張ってるんだ。偉いじゃん。


「お褒めいただきありがとうございます。これからも精進していきたいと思っております」


 ベスパは頭を下げて少し微笑んでいた。


 私はベスパから受け取った二枚のカッパをラルさんとメルさんに渡す。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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[良い点] 誤字脱字がかなり減りました [気になる点] タイトルに学園(仮)が入っているのに本編に学園要素がプロローグにもなってない。タイトルに入れるぐらいなら多少巻きで学園編に入っても良いのでは? …
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