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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
『風の悪魔』が笑えば街が吹き飛ぶ ~大雨の中でも仕事する編~
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魔法陣の構築

「はぁ、さてと。まずは基礎となる魔法陣を描いていかないと。今回は『流す(ラン)』の魔法陣を描いて、『切る(カット)』は魔力を止める時に勝手に切れるから描かなくても大丈夫っと」


 私は車輪の大きな面に基礎となる魔法陣を描く。指先に魔力を溜め、なぞるように描いていった。ライトほど魔法陣を精密には描けないが、練習しているのでそこそこの魔法陣が描けた。


「よし。基礎は終了。次、何が起こったらどうなるって言う道筋を書かないといけないんだよな。でも今回は簡単だ。車輪が半回転したら上部の表面に流れる魔力を止める、という呪文を書いていけばいい」


 私は日本のテレビ番組でプログラミングと言う現代的な授業を受けた覚えがある。


 魔法陣の構築とプログラミングはどこか似ていた。そのお陰で何となくだが魔法陣の構築が行えている。


 いつも魔法を作っているライトは超絶複雑な工程を踏んで魔法陣を構築していると考えると私には訳が分からない。


 今、私が魔法陣に組み込める呪文は一単語か二単語くらい。でも、ライトは一〇単語や二〇単語の呪文を魔法陣に組み込むなんてお手の物。


 『牛乳配達の魔法』なんてほぼ一〇〇の呪文を一枚の魔法陣にしてしまったくらいなのだ。


 『牛乳配達の魔法』は一回使用するごとに、一日の魔力を全て消費してしまうため、実用には不向きなのであまり使われていないが無人販売できてしまうくらいの精度があるらしい。


「はぁ、疲れる……。魔法の文字って書くのがすごく難しいんだよなぁ」


 魔法陣の構築に必要なのは基礎となる円形の陣。これに魔法文字と言うこの世界特有の文字を使う。形的には甲骨文字のような文字やアルファベットのような文字まで様々。その理由として魔法の研究を行っていた過去の人物が自分に合った文字を見つけ出したからだそう。


――魔法文字に日本語があればどれだけ楽だったか……。


 昔、私は試しに日本語で呪文を書いてみたら、魔力を流した途端に爆発した。


 ライト曰く、魔法陣が爆発するのは情報量が多すぎるらしい。つまり、日本語で呪文を書くと魔法陣の容量を優に超えてしまうのだ。なので『火』とか『水』とか、一字の漢字だけを魔法陣に書くと出現した魔法が安定しないし『火出』だと、爆発する。たった二文字なのに……。


 漢字がダメなのかと思って平仮名で書いた見たら漢字よりは安定していた。ただ、出来るだけ事細かに呪文を書かないと魔法陣は発動してくれない。


 『ファイア』を出すために必要な構築は『出す』の魔法陣に『赤く燃え盛る火、玉の形になり現われよ』と書き加える。これをそのまま読むと呪文になり、総まとめしたものを詠唱と言って『ファイア』になる。


 今回の構築は『流す』の魔法陣に『車輪、半回転した際に上部の魔力放出』と書き加える。日本語で表すと短くて簡単なのだが、魔法文字であらわすと魔法陣の隙間がパンパンになって埋まってしまった。


「う~、きつい……。でも、一回描ければ何度も使いまわしが出来るのが救いだよなぁ」


 私は車輪に魔法陣を描き終えたさい、他の三つに魔力を使って魔法陣を写す。


 魔力を使って魔法陣を描けば複製して他の場所に貼り付けるように使えるのだ。その点も魔力を使って魔法陣を描く利点になる。


 炭や塗料で魔法陣を描くと写すのが難しいため、ライトは魔力で全ての魔法陣を描いている。魔力を使って魔法陣を描いたほうが効率がいいのに、なぜこの世界で使われていないかと言えれば、魔力操作がとても難しいからだと言える。


「ライトは落書きしてたときからこんなバカみたいなことしてたのか……。ほんとどうしたら目をつぶって絵を描こうとするかな……」


 そう、目をつぶって絵を描くのと同じくらい魔力操作は難しい。


 たとえどんなに簡単な絵でも、目をつぶって書こうとすると絶対にどこかおかしくなる。


 魔力で魔法陣を描くさい、魔力を流すまで魔法陣は透明なのだ。魔力を流してやっと実線が見える。


 ライトは何も見ずに魔法陣が描けるが、私はベスパの眼を借りて魔法陣を見ないと描いたり構築したりできない。


 ベスパは魔力なので私の魔力を可視化できる。そのため、普通の眼で見ている場合と大して変わらない。


 ただ、普通の人は眼に魔力を溜めて眼鏡のように層越しに魔法陣を眺めているのでカイリさんの描いた魔法陣が歪んでいたのだ。


 インクを使えば魔法陣がちゃんと見えるので失敗は少ない。だからこの世界で普及している。


「はぁ~。終わった~! もう全部ライトにやってもらいたいよ~! ベスパ、今すぐ『視覚共有』を解いて、集中しすぎて気持ち悪い」


「了解。ですが、ちゃんと機能するが確認しないと意味がないですよ」


「多分大丈夫だと思うけど、ネアちゃん。車輪に粘着性の糸を巻き付けてくれる」


「分かりました」


 ネアちゃんはベスパに連れられて車輪に粘着性の糸を巻き付けて行った。とても小さな体からいったいどれだけの糸が出ているのかと思うほどで、物量からしてあり得なかった。


「ネアちゃん。そんなに糸を出して大丈夫なの?」


「はい、全部キララ様の魔力を使って作成していますから安心してください。本来は私自身の魔力を使って糸を作成するんですけど、今はキララ様の魔力を受け取れるのでいくらでも糸を作り出せてしまいます」


「へ、へぇ……。私の魔力が糸に変わるんだ……。じゃあ、今街中のアラーネア達は殆ど私の魔力を使って糸を作り出しているの?」


「はい。そうしないと私たちの魔力だけでは到底賄いきれませんから」


「そうなんだ。でも、私の魔力が一気に持っていかれているような感じがしないんだけど」


「キララ様の魔力は糸に変換されていますけど、ごく少量です。糸による魔力の消費よりもキララ様が魔力を回復する速度の方が早いんですよ。なので、キララ様に魔力枯渇症の症状が出ていないのだと思われます」


「そうか。なら、ほぼ糸を使い放題と言っても過言じゃないんだね」


「はい。そうです。ただ、作り出すのに時間が掛かりますから常に使い続けられる訳ではありません」


 ネアちゃんは申し訳なさそうに答える。


「そりゃそうだよね。でも、ネアちゃんの便利な糸を使えるなんて凄いありがたいよ。もっといろんな活用法があると思うし、これからも仲良くしてね」


「はい! もちろんです!」


 ネアちゃんは大きな声で返事をしてくれた。


 その後ほんの数分で全ての車輪に糸を撒き終た。


 糸を巻き終えた車輪の状態がタイヤのゴムみたいで、弾力材の効果も発揮してくれそうだった。たった五ミリメートルほどの厚さだが、ほんとに効果があるのだろうか……。


 私は車輪に掛かれている魔法陣に魔力を流す。魔法陣に魔力を一度流せば魔力が切れるまで動き続ける。


 言わば化石燃料と同じだ。でも徹底的に違うのは魔力が枯渇しない点にある。


 人の体は化石燃料が溢れ出る油田のようなものなのだ。


 私はその油田があまりにも大きく使えば使うほど広がって行くらしい。この油田に加えてそこら中にいるビーや昆虫たちの小さな油田も私の油田と繋がっており、ベスパが溢れ出る魔力を分け与えていって油田を広げていると言った感じだ。


 ベスパは油田のパイプのような存在と言えば分かりやすいかもしれない。私の魔力が枯渇しないどころかどんどん広がっていると考えると少々怖いと思う時がある……。油田は虫の子供達にも遺伝するというのだから末恐ろしい。


「さてと、始めは魔力を少なめにしないと爆発した時の威力が怖い。数秒間くらい動けばいいから……。こんなもんか」


 私は体感牛乳瓶一本分の魔力を各車輪に注ぎ、魔法陣を起動させた。

 おまけ。ライトが天才になるまで。

 五年前……。

 ライト三歳。キララ六歳。

 キララは家の中でロウソクに火をともす練習をしていた。

「お姉ちゃん。何してるの~」

 テチテチと歩きながらライトはキララに近づいた。

「え? 今は魔法の練習をしているんだよ」

「魔法? 魔法ってなに~?」

「魔法って言うのは……。そうだな~。不思議な力……かな?」

「何それ~。ぼくにも魔法出来るかな~?」

「さぁ……。ライトにはまだ早いんじゃない。絵でも描いてよ。お姉ちゃんの近くに来たら危ないからね」

「はぁ~い」

 初め、ライトは木版に炭を使って絵を描いていた。だが、手に黒い炭が付くのが嫌になり、炭を投げて捨てると、手に付いた炭を使って絵を描き始めた。もちろん初めは描けるが、段々と炭が木版につかなくなる。でも、ライトは一向に手を止めなかった。

「お姉ちゃん~。見てみて~。お姉ちゃんの顔を描いたよ~」

 ライトは木版を持ち、ほぼ何の絵も描かれていない面をキララに見せた。

「え、何も描かれてないよ。何言ってるの?」

「え~。ちゃんと描いたよ~。ここに目が合って、鼻が合って口、耳~ってあるでしょ」

「えぇ……。う、うん。確かにあるね~。お姉ちゃんにも段々見えて来たよ~。すっごい上手だね。もう、お姉ちゃんにしか見えないよ~」

 実際、キララには何も見えていなかった。だが、ライトが一生懸命に頑張ったのだから褒めてあげようと思い、キララはライトを褒めた。

「えへへ~。そうかな~。じゃあ、じゃあ~。もっといっぱい描くね~」

 この後、ライトはキララが魔法の練習をする際、いつも一指し指を木版に当てて撫でるように絵を描いていた。きっとキララが人差し指をロウソクに向けている姿を真似したのだろう。そのせいで、指先に意識を集中するという魔力操作が行われていた。

 ライトの描く絵はキララの顔から段階を経て魔法陣に変わり、天才へと昇華した。

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