動かない体
私の無駄な動きがレクーの体力を奪っていた可能性が浮上した。
「ぐ……、うぐぐ……」
私は体が動かないように制御しようと試みるが、どうしても動いてしまう。
「キララさん、大丈夫ですか? 速度を少し落とした方がいいですかね?」
レクーは私に話しかける。
「レクーこそ大丈夫? 速度が落ちてきてるんじゃない……。私ならまだまだ行けるからもっと飛ばしなさい!」
私はやせ我慢をしながらレクーを鼓舞する。
「言ってくれますね……。グおらぁああああああああっ!」
レクーはここにきて速度を更に上げた。
地面を強く蹴り上げながら、体を大きく動かしている。
そのため、激しい振動が私に伝わってくる。
「合わせる、合わせる、合わせる……。レクーの息遣いに合わせる! 動きに合わせる!」
少しずつだが体の動きが小さくなっている気がした。でも練習の最後まで姉さんとお爺ちゃんに追いつけなかった。
「ぐあ~、も~無理……。疲れた~」
「脚が動きません……」
私とレクーは力尽き、その場に崩れ去る。
姉さんとお爺ちゃんはまだまだ余裕そうな顔をしてバートン場を軽く走り、脚を慣らしていた。
――ずっと走っていたのに、いったいどこに体力が残っているんだ。
姉さんは脚を慣らし終わった後、私達の方に走ってきた。
「レク、今回は結構頑張ったな! だが、私に追いつくにはまだまだ力も体力も技術も足りないぞ!」
姉さんは大きな声を上げ、レクーを軽く褒めた。
「は、はい! 母さん!」
レクーは脚を震わせながら立ち上がり、返事をする。
「キララ、何かつかんだようだな」
お爺ちゃんは軽く微笑んでいた。
「うん! お爺ちゃんの動きを見て気づいたよ。動かない、これが大事なんだね」
「その通りだ。体が動くと言うことはバートン達と息が合っていないと言うことだ。上に載っている人が動くとバートンの体力を奪うだけじゃなく、己の体力も奪われる。動くと言うことは体の筋肉を動かしていることと同じだ。筋肉を動かすには体力がいる。移動しているだけで体力を奪われていたら、この先に戦うべき相手のもとにたどり着いたとしてもきっと敗れるだろう」
――お爺ちゃんは私をいったい誰と戦わせるつもりなんだ。そんな相手いないよ……。
「今日はここまでだな。しっかり食べて休むように」
お爺ちゃんは姉さんを操り、大きな厩舎に向かった。
「はい……」
私もレクーと一緒に厩舎に戻った。
「キララさん。今日もありがとうございました。自分に力が付いてきたと最近感じます。全部キララさんのおかげです」
レクーは頭を低くし、感謝してきた。
――厩舎に戻ると、レクーの急成長がわかるよな。
「私もすごくいい運動になってる。最近体力がついてきた気がするよ。あと少しでお爺ちゃんたちに追いつける。これからも頑張ろう!」
「はい! 頑張ります!」
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