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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
天才の弟と復興の街 ~弟は街に行ってもやっぱり天才だった編~
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魔法陣を描く練習

「おぉ……。なんか、豪勢なんだが……」


「ほんとだ。今日は何かキラキラしてる~! お姉ちゃんの新作でしょ! 楽しみだな!」


 フロックさんとシャインは食卓に並べられているシチュー風スープの入った皿に見入っていた。それだけ目新しい料理なのかもしれない。


「じゃあ、私はライトとカイリさんを呼んでくるから、お母さんはお父さんを呼んできて」


「分かったわ。すぐに呼んでくる」


 お母さんはお父さんが残業をしている寝室に向い、私はライトの部屋に向う。


 私はライトの部屋を数回叩く。


『ドンドンドン』


「ライト。夕食が出来たから一階に降りてきて」


「うん。分かった。多分すぐに行くよ」


「そう言うとライトは全然降りて来ないでしょ。料理が冷めちゃうから早く出てきて。出てこないなら私が入るよ」


 私はライトの部屋の扉を開けた。


 ライトとカイリさんが何かを木版に一生懸命に描いている。


「えっと、ライト。何を描いてるの?」


「何って魔法陣を描いているんだよ。カイリさんに魔法陣を描くコツを教えているんだ」


「いやはや……。まさか魔力を塗料(インク)にして魔法陣を描くのが、王都で最高位の学園を卒業している私でも全くできないほど難しいとは恐れ入った……。いつも高級な塗料や墨汁、炭で書いているから勝手が全く違う。集中力の使い方もまるっきり違うな……」


 私はベスパの視界を借りて二枚の木板を見た。カイリさんの木版に描かれている魔法陣は幼稚園児が描いたのかと思うような丸い絵で、ライトの書いた魔法陣は定規やコンパスを使ったような製図されている図形だった。


「魔法陣を使うときは結局魔力を使う訳ですから、魔力で直接書いたほうが効率が上がるんですよ。僕の計算だと魔力以外で書いた魔法陣と魔力で書いた魔法陣では八倍くらい効率が違いますね」


「そこまで違うと今の世の中で使われている設置型魔法陣の効率が全く変わってくるね……」


 カイリさんは顎に手を置き、苦笑いをしながら身を震わせている。


「はい。あと、この魔法陣の書き方に慣れれば簡単に新しい魔法を作れます。まぁ、大概は爆発するのが落ちですけどね」


「はは……。ライト君はいつからこんな研究紛いな行いをしていたの?」


「姉さんが魔法の練習を始めたくらいなので……。三歳くらいの時ですね。姉さんは立って魔法の練習をしている時に僕は木の板に落書きしてたんですよ。指先に溜めた魔力を使って」


 ライトが笑顔で指先に魔力を溜めながら答えると、カイリさんは恐怖に満ちた苦笑いする。さすがにライトの頭がおかしいのか上流貴族のカイリさんでも苦笑いしか出来ないくらいの存在なんだと再認識させられる。


「えっと、ライト。カイリさんの描いた魔法陣でも魔法は発動するの?」


「多分無理だと思うよ。魔法陣がガタガタで魔力が円滑に回らないから発動する前に爆発しちゃうと思う」


「これでも魔法陣を描くのが得意だと自負していたんだけどね……。まだまだ修行が足りないみたいだ。でも、ライト君のおかげで効率のいい練習法も聞けましたし、この村に来てほんとうによかったよ」


「そう思ってもらえてよかったです。じゃあ、夕食にしましょう。せっかく作った料理が冷めたらもったいないので」


 私は二人の腕を引っ張って部屋から連れ出す。


「別に料理が冷めても『(ホット)』で温めればいいじゃん」


 ライトは失言をした。魔法の天才児は料理をほんと分かっていない……。


「駄目だよライト。料理は火で作るから美味しいの。『(ホット)』を使っていいのは野宿の時とか、パンを温める時だけ。飲み物はまだ許せるけど料理は味が落ちちゃう」


「それは姉さんの感覚だよね……」


「そうだけど、やっぱり料理は火で作るから美味しく感じるんだよ。たとえ調味料が無くても、美味しく食べられるのは火で作ってるからだと私は思ってる」


「姉さんの火に対する思いの大きさは何でそんなに大きいのかな。料理なんて別に温かかったら全部一緒でしょ」


 私とライトは言い合いをしながら居間に向った。


 カイリさんは私達の姉弟喧嘩を微笑ましく見つめていた。止めてくれてもいいのに……。


「お、カイリ。遅かったな早くしろよ。俺は腹が減って仕方がないんだ!」


「あともうちょっとだけ待ってほしい。今、鎧を脱ぐから」


 カイリさんは小さな袋から何かを取り出す。袋には到底入りきらない大きさの鎧置きが出てきた。


「何あの袋……。すごく便利そう」


「あ、この袋のことかい? これは魔道具の一種で『収納(ストレージ)』と同じ効果のある袋なんだ。私が学生の時、ダンジョンで運よく手に入れることが出来たんだよ」


 カイリさんは巾着袋のような片手で収まる袋を見せてきた。


「思い出すな~、その魔道具。俺達の通っていた学園の講義でダンジョンの攻略と言う課題があったんだが、俺達が課題を攻略したあと、脱出の途中で宝箱を二つ見つけて俺は大きな宝箱、カイリは小さな宝箱を開けたら、俺はミミックに襲われ、カイリはその魔道具を手に入れたんだ」


「ミミック?」


「宝箱の形をした魔物だよ。あの時は腕を食いちぎられなくてよかったよね。フロック」


「ほぼ食いちぎられる寸前だったけどな。あの時は回復魔法の使えるカイリがいて助かったぜ」


 フロックさんは腕が食いちぎられそうになった話を笑いながらしていた。


――危険な目にあったのにフロックさん、すごく笑ってるよ。どれだけ図太い性格してるの……。でも、それだけ不安な気持ちを感じにくいっていいよな。なんにでも向かっていける強い心があるから、フロックさんは強いのかも。


 私はフロックさんの強靭な精神に憧れる。私も結構強い精神を持っていたと思うが、ブラックベアーの前ではどうも委縮してしまって前に出られない。ビーならなおさらだ。


――私もフロックさんを見習って強靭な精神を身につけないと。いつまで経っても、怖がっているようじゃダメだよね。


「では、キララ様。等々、私の体に触れてくださる決心がついたのですね!」


 私の頭上に飛んでいたベスパはずいずいと近寄ってくる。


――いや、ビーは絶対に無理。私はブラックベアーの方がまだ克服できそうだから、そっちを先に克服しようかな~って思ったの。


「ガックシ……」


 ベスパは項垂れ、翅を弱弱しく動かしていた。


 カイリさんが鎧置きをフロックさんの大剣が置いてある位置に置き、来ている鎧を掛けていく。ほぼ棒状だった鎧置きはカイリさんの着ていた鎧をまとい、一つの作品(オブジェ)のようでカッコよかった。隣に大剣が置いてあるのも評価が高い。


 カイリさんは上半身に鎖帷子を着ており、下半身は少々厚手のズボンを履いていた。騎士団で鍛錬をしていた騎士達とほぼ同じ格好で椅子に座る。


「さ、皆。料理が冷める前に食べよう」


 私達は食卓を囲み、両手を握り合わせて神に祈る。今も昔もこの習慣は変わらない。神は私達を見てくれているのだ。祈りがとどくのなら、それはそれで少し恥ずかしい気もする。


「よし。じゃあ……」


「いただきます!」×全員


 皆、スプーンを一斉に持ち、白濁しているシチュー風スープにくぐらせる。


 スプーンを持ち上げると、湾曲した部分に各々食材がのり、美味しそうだ。


 ほぼ同時に皆がシチュー風スープを口にする。


「ハム…………」×全員


 皆、スプーンを口に咥えたまま固まってしまった。それはもう、時間を停止でもしたのかと思われるほど、かちっと止まり、誰も動かない。


「えっと……。どうかな。感想を聞かせてもらえると嬉しいんだけど……」


 私が小声で皆に聞くと、腕を振るわせる者や肩をちぢこませる者、各々、止まっていたわけではなく、何かを感じ取っているみたいで少し不安になる。なんせ、私の見ている光景が毒を食した者の動きだったのだ。


「み、皆。大丈夫! お母さんも、さっき食べたでしょ。毒なんて入ってなかったよね!」


「うまあああああい!!」×全員


 家の屋根が吹き飛ぶかと思った。その場にいた家族とフロックさん、カイリさんがブラックベアーの咆哮にも負けない大声を出して叫んだのだ。


 私は思わず耳を塞ぎ、そこまで叫ぶかと思ってしまう。ここに(ソウル)が入ればもっと美味しくなるのにな~何て思っていた料理に皆はがっついていく。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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