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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
天才の弟と復興の街 ~弟は街に行ってもやっぱり天才だった編~
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血気盛んな八歳児と背の低い冒険者

「キララ様。ディアに仕事を与えたんですね」


「家の中でずっと居座られるのも困るからさ……。あのままだったら大量の無職を生み出してしまうところだったよ。床を埋め尽くすほどの自宅警備員は要らないからね」


 私は部屋に残っている命令が無いとのろまなブラットディア達にもとの位置に戻るように伝える。ブラットディア達は私の目の前からさっと移動し、姿を消した。


「よし。これで村がもっときれいになる。ゴミが無い村なんて最高に気持ちがいい空間になるだろうな~」


 私はベッドに寝転がり、魔法で水球を出現させる。その中に手を突っ込んで綺麗に洗ったあと、汚れた水球を窓から外に出し、地面に落とした。


 濡れた手は魔法で風を出現させて乾かす。


「あ~、魔法便利すぎるぅ~。ベッドから動かなくても何でもできちゃいそう」


 私の眠気は頂点に達し、昼の鐘が鳴るまで少し眠ることにした。


 仮眠をとることは午後の活力を得るために重要なのだ、と言い聞かせて私は健やかに眠る。


『ゴーン、ゴーン、ゴーン』


 村に響き渡る教会の鐘が鳴った。


「あ、鐘が鳴った。ん~~。よく寝たぁ。さてと、昼から何しようかな~」


 私が外を見ると空が赤く染まっていた。


「う、嘘。何で……。私の昼は……。私の休日が……」


 私は夕方まで寝過ごしていた。


「はぁ~。キララ様。今日もすやすやとよく眠られていましたね。私もぐっすりと眠らせてもらいました」


 ベスパは寝床の木の穴から出てきて、グ~っと伸びをしながら話かけてくる。


「私の休日が、またなくなっちゃった……」


 私は起こした体をベッドに倒し、自己嫌悪に陥る。


「キララ様、そんな落ち込まないでくださいよ。今日は午前中に作業をたくさんしたからいいじゃないですか。ぐっすり眠って体力を回復させたんですから、よしとしましょうよ」


「まぁ、午前中があっただけましだけどさ。もうちょっと何かやれたらいいなと思ったんだけど」


「一日に詰め込むのももったいないじゃないですか。まだ、夕暮れ時ですし、ちょっとくらい外の風に当たるだけでも気持ちいと思いますよ」


 ベスパは窓から外に出て、自由気ままに飛び回る。


「そうだね。夕焼けの空でも見て気分を落ち着かせようか」


 私は部屋を出て、家の外に向った。そのまま教会の方に向って散歩していると……。


「はあっ!!」


『ドッゴンッ!!』


 地面が爆ぜるような衝撃音が村の中に響いた。


「うわっ! な、なになに! なんか大きな音が聞こえたんだけど!」


 私は身の危険を感じ、身を縮めて周りを見渡す。


「キララ様。広場の方に人が集まっていますよ!」


「え、今日はなにかのお祭りだっけ?」


「いえ、そうではないはずですけど……」


「じゃあ、何か悪い人でも来たのかな?」


「そうだとしたら、警ビーが伝えに来るはずなので敵ではありません」


「じゃあ……。私達もちょっと行ってみよう」


「そうですね」


 私達は村の広場に向って走る。寝起きなので脚が少しもたついていたが、すぐに慣れた。


 広場には多くの村人が集まっており、何かを見て興奮していた。


「はっ!」


「早いなおい! だが、まだまだ甘いぜ!」


『ドッツ!』


 何かが蹴られた音がしているが、私からは見えない。


「くっ!」


 私の聞き覚えのある声が広場の中心から聞こえてくる。


 私は人ごみをすり抜けていき、中央で何が起こっているのか見た。


 広場にいたのは、大剣を構えている背の低い男性と木剣を持っているシャインだった。


「ふ、フロックさん。あと、シャインも。何でこんなところで戦ってるの!」


「あ、お姉ちゃん。この人がね、お姉ちゃんを探してたからちょっと戦ってたの」


 シャインは目が合ったら勝負と言う性格ではない。きっとどちらかが勝負を持ちかけたのだろう。


「えっと……、フロックさん。何で私の妹と戦っているんですか?」


「いやぁー。キララの妹、半端ないな。ライトが天才と言うくらいだからどれだけ出来るのかと思ったが、まさかここまでやるとはな。俺もつい本気で稽古に付き合っちまったぜ」


 フロックさんは大剣を肩に担ぎ、笑った。


「稽古をしていたんですか……。それにしては殺意を放ちまくってましたけど……」


「お姉ちゃん、この男の人と知り合いなの?」


 シャインは私の方を向いて聞いてきた。


「うん、知り合いだよ。というか、こんなところで戦ったら危ないでしょ。村の皆も早く解散してください! ここにいたら危険ですから!」


 私が跳ねながら村人に散るように伝えると、少し物足りなそうな表情で皆、ばらけて行った。


「はぁー。血気盛んなんだから……」


「これで周りを気にせず戦えますね! もう一度、お手合わせをお願いします!」


「おう、良いぜ。俺も運動不足だったんでな。丁度いい練習相手になりそうだ!」


 シャインは木剣を構え直し、フロックさんは大剣を肩に担いだままで止まっている。


 身長は珍しくフロックさんの方が高く、剣も大きい。シャインは久々に好敵手と戦えるとなって楽しそうな顔をしていた。だが、この場は他の村人も使う広場なので、戦わせるわけにはいかなかった。


「二人とも……。やるなら、牧場のバートン場でやって」


 私は少し怒り気味で二人を威圧した。午後の休みが取れなかったのが私のいら立ちを促進させている。


「えー。でも、今、バートン場はライトともう一人の騎士が戦ってるんだよ」


「あの二人も戦ってるの……。はぁ、冒険者って皆こうなのかな……」


 冒険者の人が血気盛んなのは何となく分かっていたが夕方の時間帯からでも戦いを望んでいるなんて思わなかった。


「シャイン。子供達に夕食はとどけた?」


「もちろん、ばっちり届けたよ。仕事もちゃんと全部終わらせてきた。あと、思いっきり力を振るわないから戦ってもいいでしょ。私、久々に戦えそうな人と手合わせできそうなの。こんな好機、滅多にないよ!」


 シャインは本気の眼をしていた。手加減が苦手なのだから、戦わない方が良いと思うけど……。


「力を抑えて戦うだって? は、俺もなめられたものだな。構わず全力でこい。あんまり舐めた態度を取っていると足下を掬われるぞ」


 私はフロックさんの実力を知っているので、仕方なく眼を瞑った。


「何、私に勝ってくれるの? なら、是非ともお願いしたいですね」


 シャインとフロックさんは一〇メートルくらい離れた位置におり、互いに向かい合っている。


――はぁ、これは止められそうにない。どっちかが吹き飛んだら終わりかな。


 少しの沈黙が流れて、フロックさんが仕掛ける。


「『武器操作(アイテムオペレーション)』」


「うわっ!」


 フロックさんはシャインの木刀を浮かばせた。そのまま木剣をシャインの足首に引っ掻け、足をもつれさせる。


「ふっ!」


 体勢が崩れたシャインにフロックさんは地面が抉れるほどの加速で近づき、大剣を振りかざす。


「ははっ!」


 シャインは笑い、大剣の剣身を崩れた体勢から蹴り上げる。


「ぐおっ! バカみてーな力だな!」


 フロックさんは剣ごと吹き飛び、空中で体を数回捻って力を殺し、地面に着地する。


「まさか、武器を取られるとは思ってませんでした。でも、私は武器を取られたところで止まりませんよ!」


 シャインは拳を握り、足踏みする。身を縮めて一気に加速し、フロックさんの足下に移動した。


「足もバカ早いな。ほんとに子供かよ」


「本気でって言いましたからね!」


 シャインの拳は当たったら大岩をも砕く一撃を放つ。そんな一撃を生身の人間に与えたらどうなるか。そんなのは考えなくても分かる。


「はっ!」


『ドゴンンツッ!!』


 シャインの拳がフロックさんの顎下に放たれた。拳に殴られた空気の塊が空中に飛んで行き、空の雲に穴を開ける。だが、フロックさんのは当たっておらず、紙一重でかわされていた。


「ほっ!」


「なっ!」


 フロックさんはシャインの手首を掴み、殴った勢いを殺してひっくり返す。そのまま空中で逆さになっているシャインに向ってフロックさんは右脚で蹴りつけた。


 シャインはフロックさんの蹴りを両腕でギリギリ防ぎ、空中で何度も回転してスタッと地面に着地する。


「はぁ、はぁ、はぁ。なかなかやりますね」


「お前もな。はぁー。お前のどの攻撃が当たっても今の俺には致命傷だ。だが、当たらなければ良いだけだな」


「そう何度も、躱せますか!」


 その後、シャインはフロックさんに何度も果敢に攻めていくが一発も入らない。どうやら攻撃が読まれているみたいだ。どんなに重い一撃を放っても、フロックさんは全て紙一重でかわしていく。体が小さいから体を動かすのが得意なのだろうか。おっと、小さいは禁句だ。


 キララの辞書。

 キララは寝起きがめっぽう悪い。それは今も昔も変わらない。寝起きの眼は限りなく細く、狐のようだが、目が覚めると絶世の美少女になる。これも今も昔も変わらない。

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