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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
天才の弟と復興の街 ~弟は街に行ってもやっぱり天才だった編~
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ライトが街に行った目的

 私達は街を移動していた。少し走ると、懐かしい道に出る。


――ここ、レイニーと出会った場所だ。確か、道の先にあるお店の品を盗んでた所をとっ捕まえたんだよな。


「あ、姉さん。ちょっと止まって」


「わ、分かった」


 ライトが私に言い、レクーを止めさせた。


「ライト、いったいどうしたの?」


「僕が街に来た目的を思い出してさ。探してたら、偶然そこにあったんだ」


 ライトは少し古びたお店を指さしていた。


「何のお店だろう?」


 お店の看板には歯車の絵が描いてあった。


「何かの機械かな……。でも、ライト。あのお店に何の用があるの?」


「ちょっと見てみたい物があるんだ」


「見てみたい物? ライトは機械にも興味があったの?」


「ま、ちょっとだけ覗いて行こうよ」


 ライトは荷台から降りてお店の入り口に向っていく。


「ちょ、待ってよ。私も行くから」


 私はレクーを通行人の邪魔にならない場所に移動させる。


「焦らないでいいよ。僕が先に入ってるから」


 ライトはお店の扉を押して中に入っていった。


「もぅ、気になるとすぐ行動するんだから。さすが私の弟」


 私はレクーを移動させてライトの入って行ったお店に向う。ガラスケースの中には時計が置いてあった。


「ここ、時計屋さんなのかな……。そうじゃなかったら時計なんて置いてないよね」


 私はお店の中に入っていく。すると、お爺さんとライトが何かを話し合っていた。


「あ、姉さん、これ見てよ。凄いことになってる。僕じゃ訳が分からないよ!」


 ライトはお爺さんの持っている修理中の懐中時計を見て興奮していた。


 私も懐中時計を覗き込む。歯車だらけで私にも訳が分からない。


「ほんとだね。私にも何が何だか分からないよ……」


「ん? お嬢さん……、以前お会いしたことがありますよね」


 懐中時計を持っていたお爺さんが私に話しかけてきた。


「え、ああ、はい。泥棒を捕まえた人間です」


「やっぱりそうですよね。最近老化が激しくて物覚えが悪いんですよ。あの時は助けていただいてありがとうございました。あの日から色々ありましたが、お嬢さんが無事でよかった」


 人のよさそうなお爺さんは私に笑顔を向けてくれた。優しいお爺さんの笑顔もけっこう癒される。


「お爺さんは七日前にどこかへ避難していたんですか?」


「あの時はずっとこの家に籠ってました。なんせ仕事してたら没頭してまして……」


 高そうな服を着ているダンディーなお爺さんは白髪の髪が生えた頭に手を置いて苦笑いしていた。


「あ、あんなに大きな音が鳴ってたんですよ。『ぐおおお』って、叫び声が頭に響かなかったんですか?」


「まぁ、元から難聴気味ですし、仕事に没頭すると何もかも聞こえなくなるんですよ」


「へぇー。凄い集中力……。根っからの職人さんなんですね」


「人生を掛けてきましたからね。長い間、王都で研究して改良を重ねここまで小さくなりました。時計の進化は物凄いですよ。私が子供の頃は時計台ほどの大きさでしか時を刻めなかったんですから」


 お爺さんは時計に魅入られた人らしい。時計の話をし始めたら止まらなかった。ライトは聞き入っているし、私としても時計が欲しいと前々から思っていたので丁度よかった。


 時計の歴史を一通り聞き、お店に飾られている時計の時間を見てびっくりする。


「って! もう午後七時! ライト、早く帰らないと家に着くの午後一〇時を過ぎちゃうよ」


「もうちょっとだけ。時計の値段だけ聞いて行こうよ」


「ま、まぁ、それくらいならいいけど……」


「お爺さん。懐中時計を買うにはいくら必要ですか?」


 ライトはお爺さんに率直に尋ねる。


「一から作るのは相当お金が掛かりますね。金貨一〇○○枚とか掛かりますよ。でも、壊れたものを修理して使えば金貨五○○枚くらいですね。まぁ、壊れた物は壊れやすくなりますけど……」


「やっぱりすごく高いですよね。何がそんなに高いんですか?」


「一つ一つの部品が小さくて精密な部品を作れる職人がいないんです。例えば……これとか」


 お爺さんはピンセットで超小さな歯車を見せてきた。直径が五ミリメートルもない歯車で赤子の小指よりも小さかった。


「うわぁ、小さい……。でも、ここに存在しているのなら誰かが作ったんですよね?」


「はい。ですが、神から与えられたスキルによって作られているので他の人では再現するのはほぼ不可能と言われています。スキルを持つ者はごく数人ですから、数も出回らないですし、値段が高くなるのは仕方ないですね」


「なら、小さい部品を作れたら値段は安くなるんですか?」


「まぁ、そうですね。大きく成ればそれだけ部品も大きくなりますし作りやすくなります。ただ、それでも金貨三○○枚とか普通に掛かりますね」


「なるほど……。魔法で何とかならないかな……」


 ライトは顎に手を置いてぶつぶつと考え始めた。こうなると何か考え付くまで止めようとしない。


「はぁ……。ライトが考えこんじゃった。お爺さん、ありがとうございます。私たちは帰りますね」


「そうですか。お気をつけてお帰り下さい」


 私はライトの手を引いてお店をあとにする。ライトの頭の中で何がどうなっているのか知らないが、ずっと考え込むのはやめてほしい。


 私はライトを引っ張りながら荷台の前座席に乗せ、レクーに合図を出す。


 そのまま街の門にまで移動した。


「今日は遅い帰りみたいだな。夜道は暗い。気をつけて帰るんだぞ」


 門番をしている兵士のおじさんは私に話しかけてくる。


「はい、ちょっと遅くなってしまいました。夜道は照らして走るので心配しないでください」


「そうか。なら、いいんだ」


 兵士のおじさんは安心したのか、ほっとした表情を浮かべる。私はおじさんに手を振りながら門を出た。


――ベスパ、夜道を照らしてくれる。


「了解」


 ベスパは自ら発光し、暗い道を照らした。ベスパの明りは車の前照灯のハイビームより遠くを照らしており、どれだけ光っているんだと突っ込みたくなる。まぁ、明るいに越したことはないので何も言わないでおく。


 ライトは未だに何かを唱えていた。そこまでして何を考えているのかと思ったが、楽しそうなので話しかけないでおく。


「あぁ……、またお母さんに怒られるかも。でも、ライトがいるから大丈夫か。今日中に帰れば何とかなるよね」


 私はレクーにお願いして早めに走ってもらう。それでも三時間ほどかかってしまう。たらたら走っていたらそれこそ四時間五時間掛かってしまい、今日中に村に帰れないかもしれないのだ。


 私達は何とか今日中に家に到着できた。荷台とレクーを牧場に戻し、私達は歩いて家に帰る。


「ブツブツ……、ブツブツ……、ブツブツ……」


「まだ考えてる……。もうそろそろ……」


「うん。作れそう」


「はい?」


 ライトは家の前で考えがまとまったらしい。


「作れるって何を?」


「時計の歯車」


「へぇ……。そうなの」


「何か、反応が薄いね。まぁ、別にいいんだけどさ」


「どうやって作るの? あんな小さな歯車」


「確かに小さかったけど、眼には見えているんだ。それなら魔力で模って錆びないように加工した鉄に打ち込めば作れるはずだよ」


「そんなふうに作れるんだ。へぇー。すごいすごい」


「何か、信じてなさそうな顔してるね。僕も半信半疑だけど、不可能じゃないよ」


「でも、何でそこまでして作ろうとしてるの? ライト、時計が欲しかったの?」


「別に僕は欲しくないよ。時間に縛られるのはあんまり好きじゃないから」


「じゃあ、何で……」


「それは秘密。今言ったら面白くないし。いつか完成させるから」


「何を?」


「何を、って時計だよ」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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