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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
天才の弟と復興の街 ~弟は街に行ってもやっぱり天才だった編~
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本気の覚悟

 祈り続けて四五分後。


「はぁ、はぁ、はぁ、し、しぬ……。しぬ……」


「姉さん。終わったよ。レイニーさんは魔法適正と運動適正、どっちもあるっぽい」


「へぇ、凄い。よかったね、レイニー。あと、ごめんね。これからレイニーはずっと生死をさまようことになりそうだから、先に謝っておくよ」


「はは……。望むところだ。俺は強くなってマザーを取り戻す。その目標さえ叶えられれば俺の命なんてくれてやるよ」


 レイニーは恐怖しながらも、拳を握り、確かな決意を見せた。


「じゃあ、レイニー。ライトから基本的な魔法の使い方をパパッと聞いて、練習しておいて」


「そんな簡単に分かるのか?」


「まぁ、分からなかったら私に聞いてよ。ライトの自分の頭に思っていることを相手に分かりやすく伝えると言う訓練でもあるからさ」


「わ、分かった。じゃあ、ライト、魔法について教えてくれ」


「はい。分かりました」


 二人が戻ってきてから五分ほど経過し、レイニーの顔に靄がかかる。


「全く分からん……」


「姉さん。レイニーさん、才能はあるのに頭がバカっぽい」


「あぁ~、一番可哀そうなやつだ」


「おい! バカっぽいとか言うなよ。確かに勉強は出来なけど、計算と読み書きはギリギリ出来るんだぞ。マザーの教えのおかげだ!」


 レイニーは胸を張って答える。


「そうなんだ。なら、簡単に理解できるはずだよ。ライトの説明の方が難しすぎたのかも」


「えぇー。僕は出来るだけ簡単に言ったんだけどな……」


「何て言ったの?」


「体に流れている魔力を一点に溜めて良く練る。その後、正しい詠唱を言う。すると魔法陣が展開されるからその中に練った魔力を入れる。ってな感じで言ったよ」


「概要しか言ってないのね……。ライト、この前も言ったけど、相手に説明するときは出来るだけ小さく区切るといいよ。まず説明しないといけないのは体の魔力を溜めること。これをもっと詳しく説明してあげて」


「わ、分かった」


 ライトはレイニーに体の中にある魔力を感じ、溜める方法を教えた。


「なるほど……。体に血が巡る感じか。まず、魔力を感じるには物静かな所で自分の体に集中する。魔力が感じ取れたら、魔力を大きな器に入れるように一点に溜めていく。こんな複雑な工程をあの一瞬でやっていたのか……」


 レイニーは苦笑いを浮かべるも、どこか楽しそうに呟く。


「ま、ここは慣れです。やればやるだけ自然に出来るようになりますよ。でも、理解してやるのと感覚で行うのとでは明確な差が出てきます。なるべく理解して行うようにしてください。魔力を感じ、溜めていくと体が温かくなって光り始めます。それが、魔力を溜められている指標です」


「体が光るのか……。分かりやすいな」


「光れば光るほど溜められている魔力量が多くなり、威力の指標になります。そこから練り込むと淡い光が輝きに変わり、線が伸びるような光になるので、とりあえずは体から光を放てるくらい練習してください」


「ああ、やってみる。練習は瞑想? ってやつをやればいいんだよな」


「はい。今に集中すると魔力を感じやすくなります。なので、神様に祈っている時などに瞑想を取り入れてみると成長が早いかもしれません」


「なるほど……。分かった。やってみる」


 レイニーはステンドグラスの方向に目を瞑りながら祈る。十分ほど祈っていたが体に変化はなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ……。これ、結構きついな。何も起こってないのを見ると、まだまだ足りないみたいだ」


「そうですね。練習を何度も繰り返せばいつか魔力を溜められるようになります。あとは努力するだけです」


「分かった。練習を続けるよ。ありがとう、ライト、キララ。俺、やっと変われる気がする。長い間渋ってきたが、今、変わらないといけないって、そんな予感がするんだ」


 レイニーは拳を開いたり閉じたりして血の巡りを感じていた。


「うん。人はいつでも変われる。それを行うか否かは自分しだい。レイニーは自分で決めたから凄いよ。私は死なないと無理だった」


「ん? キララは今、生きているだろ」


 レイニーは私の方を見て首をかしげる。


「はは……、そうだね。ま、人が変わるのは凄く難しいことなの。でも、レイニーは行動に移した。それだけで凄いよ。きっとレイニーなら魔法を使いこなせるようになるし、強くなれる。子供達を守れるように頑張ってね」


「ああ、俺はやると決めたらやる男だ。何が何でもやってやるよ」


 レイニーの眼は本気だった。厳しい世界で生きて来たからか、心がめっぽう強いようだ。


「その意気です! レイニーさん! また今度、双子の姉と一緒に鍛えに着ますね。きっといい鍛錬になると思いますよ」


 ライトもレイニーの本気に当てられ、眼を輝かせながら意気込んでいる。


「キララには弟のライト以外に、妹がいるのか?」


「うん。いるよ。ライトの双子の姉でシャインって言うんだけど、ライトと同格かそれ以上に強い。魔法は使わないけど剣と身体能力が化け物なの」


「ライトと同格かそれ以上……。キララの妹弟どうなっているんだよ……。そんで、お前もめちゃんこに強いとか……、神はマンダリニア家にいったいどれだけ天才を産み落とさせる気だ」


「はは……。私は強くないんだけどな。ま、ライトとシャインに教わればそこそこ強くなれる。でも、知識と経験しかくれないから、自分の体は自分で作るんだよ。分かった?」


「あ、ああ。干し肉や魔物の肉を食って体を鍛える。とりあえず食いまくれば良いんだな」


「うん。よろしい。走り込みも忘れないようにね」


「おう、毎日の売り歩きを売り走りにするぜ!」


「バートン車に跳ねられないよう注意してね」


「そこのところは問題ない。俺はバートンの声が聞こえるから見えていなくても簡単に跳ねられる心配はない。安心してくれ」


「レイニーは危なっかしいから周りを見て行動しないと駄目だよ。分かった?」


「たく、分かったよ。マザーみたいなこと言うんじゃねえ。俺はもうすぐ大人だ。子供に面倒みられてたまるかよ」


 レイニーは腕を組み、私から視線を逸らす。


「はぁ、無駄に誇りだけは高いんだから……。そんなの捨てた方がいいよ。年齢なんて関係ない。私はレイニーが心配だから行っているの。分かる?」


「う……。まぁ、そうだな。悪かった。心配してくれてありがとう。気をつけるよ」


 レイニーはしゅんとしたが、小さな子供の話も聞き入れられる律儀な子だ。それでいて、悪い話はしっかりと断れる善の心を持っている。まぁ、子供達を生かすために悪事をしていたのは愛が深すぎるからかもしれない。


「それでよろしい。じゃ、私達はそろそろ帰るね」


「え~、お姉ちゃん、帰っちゃうの……」


 少女が私の足下に寄って来て泣きそうな顔をしていた。


「また来るよ。あなたのお兄ちゃんを強くしないといけないからね」


「ほんと、私、待ってるね」


「うん。元気でね」


 私は少女の頭を撫でて、教会の外に出る。ライトとレイニーも私の後に続いて教会の外に出てきた。


「もうすぐ辺りが暗くなる。道を踏み外して転倒するなよ。翌々考えたらお前ら、まだ子供すぎるからな。心配になる」


「大丈夫。私達は普通じゃないから。いるのは私達だけじゃないし」


 私はレクーの頭を撫でた。


「そうか、レクーも一緒だからな。そいつがいれば心強いはずだ。普通のバートンじゃねえもんな。お前も」


 レイニーもレクーの頭を撫でた。


「まぁ、僕のお母さんが普通じゃないので……」


 レイニーに頭を撫でられてレクーは嬉しがっていた。レイニーの心が優しいのだろう。レクーにも善の心が伝わっているのかもしれない。


「じゃ、またね」


「ああ、気をつけて帰れよ」


 レイニーは私達に手を振り、見送ってくれた。私達も手を振り、最後まで見続けた。


「レイニーさん。いい人だったね。あの人になら魔法を教えてもいいかなって思えるよ」


「ま、誰かの為に強くなりたいって思っているから印象が良いのかもね。私は自分の為に頑張ってたらいつの間にか周りに影響を与えちゃってたけど、レイニーは逆のことをしようとしている訳だから、きっと私より何倍も辛いと思う。でも、誰かの為に頑張れるレイニーならきっとやり遂げられるよ」


「そうだね。僕もレイニーさんに負けないよう、努力し続けないと。簡単に追い抜かされちゃう。やっぱりいろんな人に合うのはいいね。いろんな刺激を貰えるよ。そう考えると学園ってやっぱりすごい所なのかも。僕は行く気はなかったけど行ってみたくなった」


「お、良かったね。きっと楽しいよ。自分の時間に没頭したり、仲間と一緒にいろんな経験を積んだり、一人じゃ出来ないことも多くの人でひっくり返せるんだから」


 私も前世でいろんな青春を経験したかったな~、何て仕事をしながら思っていた。


 でも、今なら青春が出来る。私の思い描いていた甘酸っぱい青春を送れるかもしれない。


 楽しい学園生活を送るにはドリミア教会の後ろにいる正教会の奴らをなんとかしないといけないけど、私一人では絶対に不可能だ。でも、私一人で不可能なら、仲間を集めるだけ。


 まず、アイクを仲間に引き入れてドリミア教会の内部を探ってもらう。勇者さんにも協力してもらえたらいいな。


 簡単な話じゃないけど、私達の未来を守るためなら、やむを得ない。正教会やドリミア教会はまた何かしでかす。領主邸で話したおじさんの声の感じは嘘じゃない。世界を必ず揺るがす。そうなる前に止めないと取り返しのつかない事態になる。


 私みたいな、いたいけな少女が頑張ることかと思うけど、知ってしまったのだ。誰かを助ける快感を。


 でも快感はすでに知っていた。アイドル時代に多くの人を助けると言う快感は最高だった。こっちの世界でも多くの人を助けられるかもしれないのなら、命がけで最高の快楽を求めてもいいじゃないか。


 どうせ一度死んだ命。投げうってでも世界を救う。そんな大それた目標を掲げるのもアイドルの頂点をとった私なら、掲げてもいいだろう。なんせ、可愛いは世界を救うのだから。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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これからもどうぞよろしくお願いします。

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