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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
天才の弟と復興の街 ~弟は街に行ってもやっぱり天才だった編~
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ウロトさんとライト

「何か、清々しい気分だ……」


 私達が街に入ったとたんに多くの屋台が立ち並んでいる光景が目に入ってきた。加えて、人々の活気の声に溢れている。


「へーい、安いよ、安いよ! 家賃を払う必要がなくなったから特別価格だ! もっていけ泥棒!」


「みなさーん。白湯はいりませんかー。あ、お仕事お疲れさまです。こちら、白湯になります。よかったら飲んでくださいねー」


「おーい! 朝食のパンを貰ってきたぞ! さっさと食って、復興作業を開始しようじゃないか!」


 街の人の顔色は七日前に比べて雲泥の差だった。皆笑顔。逆にそれが怖いくらいの明るさ。私は同じ街を見ているのかと不安に思う。


「姉さん。ここの街ってこんなに明るい所だったっけ?」


「いや……。ここまで明るくなかったよ。でも、みんな生き生きしてる。ハハ……凄く嬉しい……」


「ね、姉さん。何で泣いてるの?」


 ライトは私の顔を見て少々引いていた。


「え、あ……。いや、ごめん。なんか分からないけど、涙が出てきちゃった」


 私は少し前の街を知っているから、今の状況を見てあまりにも感動してしまった。人々の心が入れ替わった。そう感じた瞬間だったのだ。


 ドリミア教会は街を脅かしたが不幸中の幸い、街の活気を取り戻させた。その背景に、私の影が少し映っているというのも感慨深い。


「キララ様。頑張ってよかったですね……」


 ベスパは私と感情が似通っているので、当たり前にように泣いていた。


――うん。本当に頑張ってよかったよ。何度も死にかけたけど、そのお陰で街の人たちのとびっきりの笑顔が見れた。私はそれだけで大満足。


「キララ様の宗教、アイドル神様はこれ以上の力を持っているんですよね。皆さんの笑顔を取り戻せたのはキララ様に宿るアイドル神様のご加護の力ですよ。これだけの人を笑顔に出来るなんて、神様でもなかなかいません」


――はは、そうかもね。よし! なんか、人の笑顔を見てたら私も凄く元気が出て来た! 今日も仕事を一生懸命に頑張るぞ! レクー、オリーザさんのパン屋さんに向って。


「分かりました」


 レクーは動き出し、オリーザさんのパン屋さんがある通りへと路線を変える。


「ライト。初めにパン屋さんに向うよ」


「姉さんがいつもお世話になっているって言う、オリーザさんのパン屋さん?」


「そう。オリーザさんのパン屋さん。様子を少し見ておきたいんだ」


 私が七日前に来た時、パン屋さんの前には誰もおらず、オリーザさん達は倒れていた。それが七日たった現在……。


「ガヤガヤ……」


 お店の前は人が大量に溢れていた。


「うわぁ~。凄い数。あそこのパン屋さんが牛乳を買ってくれているの?」


 ライトはオリーザさんのパン屋さんを指さし、私に聞いてくる。


「そうだよ。よかった。大盛況しているみたい」


「おらおらおらおら! もってけ、もってけ! 今まで作れなかった分、寝ないで作ってやるよ!」


「お、オリーザさん。さすがに寝てください!」


 お店の中から元気になったオリーザさんとコロネさんの大きな声が聞こえる。どうやら二人とも無事退院したみたいだ。


「よし。いつも通り。じゃ、ライト。別のお店に行くよ」


「え? 並ばないの」


「うん。夕方ぐらいにならないとあの人だかりは納まらないんだよ」


「えぇ……。凄い、超人気店じゃん」


「そう。超人気店なんだよ」


 私達はオリーザさんのお店をあとにする。


「今からウロトさんって言う方の料理屋さんに行くから、ライトもついてきて」


「う、うん。分かったよ」


 私はライトと共にウロトさんのお店に向った。


「ここがウロトさんのお店……。なかなか渋い雰囲気だね」


 ライトはお店の前に立ち、眺めている。


「あ、建物が綺麗になってる。外装をもう治したんだ。さすがの行動力と経済力」


 私は準備中の立て札がされている扉に手を掛け、開けた。


「すいません。キララですけど、牛乳を配達しに来ました。ウロトさんはいますか?」


「ああ、キララちゃんか。今日も朝からご苦労さん」


 ウロトさんは腰に前掛けを着けて魚を炭火で焼いていた。


 お店の中は炭火焼きの匂いが充満しており、油の焦げた香ばしいが食欲をそそる……。


「ふわー。いい香り。姉さん、あれ、魚だよね。僕、久しぶりにこの匂いを嗅いだよ」


「そっか、家の近くじゃ魚は買えないもんね」


 ライトも私の後に続いてお店の中に入ってきた。


「ん? 誰だい、その子。キララちゃんの友達か何かか?」


 ウロトさんは私達のもとにやってきてライトの顔を見て私に質問してきた。


「いえ、この子は私の弟です」


「弟! キララちゃんに姉弟がいたのか……」


「はい。今日は訳合って配達に同行してもらっています。なのでいつもご贔屓にしてもらっているウロトさんに顔出しでもしておこうと思いまして。ライト、自己紹介して」


 私はライトをウロトさんの前に出す。


「初めまして、ライト・マンダリニアといいます。八歳になりました。得意なことは魔法。苦手なことは運動です。よろしくお願いします」


 ライトはウロトさんに深々と頭を下げた。


「姉弟か。確かに言われてみれば顔が似ている。それにしても、まだ子供なのに魔法が得意って……、凄く賢い子なんだな。八歳だと魔法は独学だろ。いや……凄いな」


「私は弟にいつも助けられているので、賢い子でありがたいです」


「俺はウロト・コンブル。年齢は二八歳の独身だ。この料亭を経営している」


 ライトが自己紹介したあと、ウロトさんも簡単に自己紹介をした。


「あの、ウロトさん。お店に充満している匂いは魚ですよね。僕、何かお手伝いするので食べさせてもらえませんか?」


 ライトは久々に魚を食したいのか、ウロトさんに商談を持ちかけた。


「お手伝い?」


 ウロトさんは首をかしげる。


「ウロトさんのこまっていることとか、何かあれば教えてください。解決できることなら、僕が解決してみせます」


「…………」


 ウロトさんは私に無言の圧力を向けてくる。どうやら頼んでもいいのか悩んでいるらしい。


「えっと、ライトは出来ることと出来ないことをちゃんと把握できるのでとりあえず、悩みでも言ってみたらいいですよ。出来ないのなら出来ないとちゃんと言いますから」


「そうか。なら、店の掃除と皿洗いでも頼もうかな」


「なにも難しくないお願いですね。一瞬で終わらせます」


 ライトはゆっくりと歩き、お店の中央に向う。辺りをぐるっと見渡して、大きや汚れを確かめたあと黒色のローブの内側に右手を入れて魔法杖を取り出し、さっと構える。


「何が始まるんだ?」


「まぁ、一瞬なのでわからないと思いますけど、汚れを消します」


「汚れを消す?」


「ふぅー」


 ライトは魔力を練り、足下に魔法陣が展開した。


「『クリア』」


 ライトが詠唱を放つと魔法陣が光り輝き、お店の内部が光る。


 その輝きは一瞬で、魔法陣が消えたと同時に光りも分散した。


「よし、終わりました」


「な……。嘘だろ……」


 ウロトさんは何が起こったのか全く分かっていない様子で、口をあんぐりと開けている。


「うん、さすがライト。床の隅々までピッカピカ。私達の顔が映りそうだよ」


「食器も全部に『クリア』を掛けたので新品同様の美しさを取り戻していると思います。えっと、これで魚をいただけますかね?」


 ライトはローブの内側に杖をしまい、すました顔を見せてきた。


「あ、ああ……。ちょっと待っててくれ、今持ってくる」


 ウロトさんは理解が追いついておらず、ぎこちない返事で板前に向った。


「姉さん。喜んでもらえたかな?」


「多分、喜んでるよ。まだ、理解が追い付いていないだけだから気にしないで」


 私達はピカピカの椅子に腰を掛け、ウロトさんが来るのを待った。


――ベスパ。今のうちに牛乳パックの入ったクーラーボックスを持って来ておいて。


「了解です」


 ベスパは扉から出ていき、少ししてクーラーボックスを運んできた。


――私達のいる机に置いてくれる。


「了解」


 ベスパは私の目の前にクーラーボックスを置いた。


 私は中を見て本数が正しいか確かめる。


「よし、一〇本の牛乳パックがちゃんと入ってる」


 私が確かめ終わったころ、ウロトさんは戻ってきた。


「お待ちどう」


 フォークとナイフ、皿に乗った白身魚が運ばれてくる。魚の表面には小さな白い結晶が乗っており、ソウルだとわかる。


 私の分はなかったが、七日前に食べさせてもらったので問題ない。


 ライトがウロトさんのお手伝いをして得た報酬で食事が出てくるのだから、ライトの方に魚がいくのは当然。


 私も少し食べたかったと思っていた。でも、私は姉なので、ぐっと我慢する。


 だが……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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