魔道具の値段交渉
「えっと一応聞いておきますけど、どういった魔道具なんですか?」
「まず、どんな方にも合うように、身に付けるだけで大きさが変わります」
「だからか。昨日、大きさを全く気にせずに渡したけど、着た時に完璧にあっていたのか」
「そうだと思います。あとの効果はそれぞれ違うので分けてお話ししますね」
「よろしくお願いします」
私はルドラさんに頭を下げる。
「黒いローブの方は自身から出る魔力を極力抑えてくれる効果があります。敵に魔力を感知されづらくなるんですよ。まぁ、限度があるので魔力量の多い人が付けても無意味なんですけどね」
「なるほど、それだけですか?」
「あと、多少の魔法耐性が付いていますので中級の魔法くらいでしたら弾けます」
「へぇ……。結構すごいローブなんですね」
「まぁ、金貨二○枚ですからね。もっと高額になれば、いろんな効果が着いた魔道具を買えますよ」
ルドラさんは内着に手を突っ込む。どうやら他の魔道具を見せようとしているらしい。
「今は遠慮しておきます……」
「次に黒いベルトの方ですがブラックベアーでも引き千切れないほど頑丈な作りになっています。なので何かに引っ掛けたりして宙ぶらりんになっても千切れる心配はありません。加えて、いろんな物がくっ付きます。剣やポーチなどをくっ付けておけば落ちずに持ち運び可能です。取り外すときは魔力を流してもらえれば簡単に取り外せます」
「はぁ……。良いような、悪いような……。でも、ただのベルトではないと分かりました。でも、何でルドラさんは魔道具なんて運んでいたんですか?」
「ルークス王国の王都で安売りしていたので買って来てしまいました。キララさんの弟妹さんなら何不自由なく使ってくれると思いますから、良かったですよ」
ルドラさんは絶妙な魔道具が売れてほっとしているような顔していた。
実際、王都でも売れ残っていたのだから、きっと絶妙な魔道具なのだろう。それを私に金貨二○枚で売りつけようとしているわけだ。
――金貨二○枚はさすがに痛手すぎる。せめて金貨一〇枚くらいにしないと。私の財布が……痩せる。
「ルドラさん。金貨二○枚は原価ですか?」
「いえいえ、王都での値段は金貨五○枚ですよ。半額以下の値段で提供しています」
「もう少し安くなりませんかね?」
「そうですね。お得意様のキララさんですから……。金貨二枚お安くして魔道具一つで金貨一八枚でどうでしょうか?」
「ん~。それだど、まだ高いですね……。せめて金貨二○枚の半額なら、買わせてもらうんですけど」
「金貨一〇枚ですか! それはさすがに……」
「でも、ルドラさんは私の牧場を沢山見て回りましたよね。ただでもよかったんですけど、情報はお金よりも価値があると言いますし、ルドラさんの気持ち分、魔道具の値段を下げてもらってもいいですか?」
「くっ……。キララさん、何ともまぁやり手ですね。分かりました、今回の情報は金貨一〇枚程度で治まるものではないのですが……。キララさんの言う半額で手を打ちましょう」
「ありがとうございます。ルドラさん」
――よ、よかった。さすがに二種類合わせて金貨四○枚は高すぎる。でもまぁ、黒いローブとベルトが各種金貨一〇枚も結構高い気がするけど、これ以上はさすがに下げられなさそうだから、ここで引きさがった方が得策だな。
私はポケットから、キャッシュカードを取り出す。
――ベスパ、金貨二○枚分の魔力を流して。
「了解です」
ベスパはキャッシュカードにふれ、魔力を流した。
すると魔法陣が光り、金貨二○枚がじゃらじゃらと落ち始めたので、ビー達にお願いし、受け止めてもらった。
空中に金貨二○枚が浮き、ルドラさんの手もとに向う。
「金貨二○枚あるはずです。確かめてください」
「わ、分かりました」
ルドラさんは服の内側に金貨を入れていく。
「ルドラさんのスキルは『収納』か何かですか?」
「え……、よく分かりましたね。私は言ってませんけど、どうして分かったんですか?」
「いや、昨日酔っぱらった勢いで胸元から葡萄酒の入った瓶を何本も出してたじゃないですか」
「あちゃ……。また、やってたんですね。だから、葡萄酒の本数が減っていたのか……」
ルドラさんはスキルが知られたことよりも、自分の酒癖の悪さの方が知られていることに恥ずかしそうにしていた。
「『収納』ってとても便利なスキルですよね。それこそ、商人にとって凄く合ってるスキルだと思うんですけど」
「まぁ、そうですね。でも、大きさや個数に限界がありますから大量に運んだりは出来ないんですよ。小物なら大量に運べますがね」
「ルドラさんの荷台がすっきりしているのも『収納』のおかげですか?」
「はい。そうですよ。でも、買い癖があるのですぐ荷台がいっぱいになってしまうんですけどね」
ルドラさんは胸もとに金貨を全て入れた。
「確かに金貨二○枚ありますね。『収納』の一つの空間に金貨二○枚と表記されています」
「へぇ、数えられるんだ……。便利ですね。『収納』ってどんな感じになっているんですか?」
「金貨ほどの大きさなら、一部屋一〇○枚、葡萄酒の瓶なら一〇本ほど。剣や槍など大きめの物は一本くらいしか入らない部屋が一〇カ所ある感じですね。でもまぁ、魔道具でも代用が可能なので、魔力が減りにくいだけの代物ですよ」
ルドラさんは頭を掻きながら苦笑いする。
「では、確かに金貨二○枚受け取りましたし、冷蔵車に牛乳パックが一〇○本入っているのも確認できました。そろそろ王都に向おうと思います」
「はい。気をつけてくださいね。こまめな水分補給を忘れずに行ってくださいね。もうすぐ、猛暑日が続きますから」
「分かっていますよ。では、また、七日後以降にお会いしましょう」
「はい。楽しみに待っています。でも、くれぐれも悪い人には売らないようにしてください。大金を積まれても、悪い人だけには絶対売ったら駄目ですからね」
「もちろんです。今回の件もありますし、人は選びます。では! 行って参ります!」
「行ってらっしゃい!」
ルドラさんは牛乳パックを積んだ冷蔵車と荷台を二頭のバートンに引かせて、村を出て行った。
「ふぅ~。接待終了。私の今日の仕事はこれで終わりかな」
「お疲れさまでしたキララ様。私達もキララ様の仕事を完了いたしました。昼頃からお休みいただいても構いませんよ」
ベスパが私の頭上で仕事が完了したと報告してくる。
「そう、わかった。じゃあ、私は土弄りでもしますかね」
私は牧場内にある畑に向った。
まだ、土を作り始めて七日ほどしか経っていないのであと七日待たないといけないが、楽しみ過ぎて先に来てしまった。
堆肥が完成するのもあと七日くらい。
畑が完成し、食べ物が増えると考えると、早く育てたくて仕方がないのだ。
「ズミちゃん。いる?」
「はい、いますよ」
ズミちゃんは土から頭をヒョコっと出して私の声にこたえた。
私はオリゴチャメタと言う、ミミズそっくりな生き物と友達なのだ。
まだ子供だが、大きめのヘビに近いくらい大きい。
成長すると、大きめの木の太さほどある体に成長する生き物だ。
温厚な性格らしいが、大人の姿は恐ろしいの一言に尽きる。きっと幼児体型の私なんて一口で食べられてしまうだろう。
だが、私の友達はとてもかわいい。
私はズミちゃんのもとに歩いていき、つるつるとした絹のような肌を撫でる。
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