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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ブラックベアー事件の後始末 ~自分の進む道を決めていく偏~
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新しい魔法を国に提出すると名誉な勲章が貰えるらしい

「皆さん、こんな朝早くから大変ですね。名のない村にも拘わらず、土地は大きいですし、こういった形で村の方に牛乳を届けているんですね」


 ルドラさんは前座席に座りながら辺りを見渡していた。


「はい。毎朝、決まった本数を各家に届けるようにしているんですよ。なので、屋台にまで買いに行く必要がなくなるので購入者にとってはとても楽な仕様になっています。私達は稼げるのでとても助かっているんですよね。あと、子供達にも出来るくらい簡単な仕事なので、皆に働いてもらえます」


「子供達……」


 ルドラさんは子共の姿を見るために、馬車の周りを見回した。


 私の班の子供達は馬車の周りに数人付き、私が配る予定の牛乳パックや瓶をビー達に浮かばせ、子供達に渡す。子供達はビー達から牛乳パックや瓶を受けとり、各家まで運ぶ。


 まぁ、村の人達が牛乳パックや瓶をビー達から受け取るか、子供達から受け取るか、のどっちがうれしいかと言ったら、どう考えても子供達から受け取った方がうれしいに決まっている。


 牛乳配達に子供達を採用してから牛乳パックと瓶の売り上げは伸びた。


 加えて、早朝から牛乳パックや瓶を子供達から受け取る人も増えたので『ありがとう』と言う感謝の言葉で村は活気にあふれている。


 たまに、お小遣いをくれる方もいるが子供達は丁重に断っていた。どうも、自分たちで働いたお金しかもらいたくないのだとか。何と律儀な子供達だろう。


 そんなこんなルドラさんと話しをしながらレクーを歩かせていたら、私達の班はもう終わりそうになっていた。


 その時、ライトの班と落ち合う。


「え……。ライト君、なにしてるんですか……」


 ルドラさんは目を細めながら体を前に乗り出してライトたちを見る。


 ライトは子供達に魔法を教えていた。


 牛乳配達の魔法ならぬ、魔法の基礎を詰め込んだ呪文を八八文に分けて一日一文をライトが子供達に丁寧に教えているのだ。


 子供達は魔法が得意な子と不得意な子に別れ、頑張って練習していた。


「あれは朝の魔法の練習ですね。ライトの班の日は魔法を使うので毎日少しずつ上達していくんですよ。ライトも人に魔法を教えるのが上手くなりました」


 私は子供達が働きだした初日の光景を思い出しててんやわんやしていたライトの成長を感じてしまい、涙が出そうになる。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ。魔法を教えるなんて簡単にできることじゃないですよ。ましてや八歳の少年がなんて……」


 ルドラさんは事の重大さを手をあたふたさせて私に聞いてくる。


「だから言ったじゃないですか。ライトは天才なんですって。まぁ、ライトとシャインは天才って自覚してませんけどね」


「なぜですか? あれだけ逸脱した才能を持っているのに、自分たちを凡人と思い込むなんて、周りに自分以上の存在がいないと起こり得ないですよ……って! ここにいた!」


 ルドラさんは私の方を向き、大きな声を出した。


「ルドラさん、声が大きいですよ。声量をもう少し下げてください」


「す、すみません。と言うか、絶対にキララさんの影響ですよね……」


「かもしれないですよね……。私は凡人なんですけど、どうもあの二人には秀才に見えているようです。ほんと困りますよ。姉の威厳も保たないといけないのに……」


「えっと、秀才どころではないと思うんですが。と言いますか、私からしたらキララさんも十分天才だと思うんですけど」


「そんなわけありませんよ。私は凡才です。子供のころから努力してきただけの凡才なんですよ」


「子供のころからと言うのは?」


「五歳くらいですね。ずっと練習し続けてやっとライトの足もとが見えるか見えないかくらいの魔法しか使えません。ライトなんて魔法を覚えるのが飽きたらしくて、自分で新しい魔法を作るようになってしまいました。私もたまに教わりますけど、訳が分かりませんね」


「自分で新しい魔法を作る……。そんなの現代の王宮魔術師でも難しいのに……。えっと、作った魔法を教えてもらってもいいですか?」


 ルドラさんは顎に手を置いて少し低めの声で聴いてきた。


「まぁ、もとからある魔法を使いやすくしたり、改良したりしているものもあるので、ゼロから作り出した魔法はあまりありませんけど、強いて言うなら、私が最近多用している魔法があって『転移魔法陣』という魔法です」


「『転移魔法陣』とは?」


「物や魔力を転移させる魔法です」


――ベスパ、荷台から一本の牛乳瓶を取ってくれる。


「了解」


 私はベスパにお願いして荷台から一本の牛乳瓶を手もとに運んでもらう。


「右手にある牛乳瓶が、左手に移動します」


「そ、そんなことが出来るんですか?」


「はい。では、実演しますね」


 私は両手に『転移魔法陣』を展開して魔力を流す。すると、魔法陣が光り、右手の牛乳瓶が魔法陣内に入り、左手に浮かび上がっているもう一方の魔法陣から出てくる。


「お、おお……。凄い。本当に移動した。これ、距離はどれくらいあるんですかね?」


 ルドラさんがあまりにも食い気味なので、何か企んでいるのかと思い、真実を言うのに少しためらった。


「何でそこまで聞くのか教えてもらえますか?」


「え、そりゃあ、新しい魔法をルークス王国の王都にある魔法帝に提出したら物凄い名誉なルークス勲章がもらえるからですよ。加えて報酬も貰えますから、新しい魔法と聞いてお金の匂いがしましてね」


 私にはルドラさんの瞳が金貨になっているように見えた。


「ルドラさん、魔法を盗作しようとしてるんですか?」


「僕にそんな技術ないですよ。盗作なんて商人の片隅にも置けないやからがする行為です。私はただ『転移魔法陣』が織りなす未来を創造したいだけですよ!」


 ルドラさんは両手を頭上に掲げ、意気揚々と話しだす。


「えっと、それはどういった意味なんですか?」


「『転移魔法陣』が普及したら、それはもう、物流がバンバン行き交いますから、経済が格段に回ります。お金持ちの者がもっとお金持ちになり、貧乏な者はもっと貧乏になる。ですが運ぶ人の件費や移動費などを省けると考えると、物を物凄い安価に購入できるかもしれません」


「例えば?」


「ウトサやソウルだって、もっと原産地に近ければ安くなるんですが、遠いと破格な値段になってしまうんですよね。それが『転移魔法陣』で解消されたら、お菓子の文化が凄い発展しそうじゃないですか!」


 ルドラさんはお金の眼だった瞳を少年のようなキラキラした瞳に変え、私を見てきた。


「あの、ルドラさん。もし『転移魔法陣』がものすごい遠くまで一瞬で運べるようになったとすると、始めになくなる職業は何だと思いますか?」


「え、そりゃあ、物を運ぶ必要がなくなるんですから、運搬業とか仕入れをする商人ですね! はっ!」


 ルドラさんは自分の職業が商人だと気づき、口をあんぐりと開けていた。


「お金と勲章がもらえるのなら、ライトに提出書類でも書いてもらおうかな~」


「ちょ、ちょっと待ってください。それだけは、それだけはご勘弁を!」


 ルドラさんはとんでもなく慌てていた。


 そりゃそうだろう。何せ、商人ギルドなる組織まであるのだ。


 この世界において商人の職業はなくてはならないもの。なんせ移動手段がバートンくらいしかないのだ。車や電車、飛行機はない。そんな中、物を一瞬で運べる魔法陣が普及したらどうなるか。


 一瞬にして多くの人が失業者になる。


 何なら、多くの人が逆恨みしてライトを殺しに来るかもしれない。そんな危険行為を認めるわけにはいかない。


 加えて、今すぐにライトに言う必要もないと思い私は『転移魔法陣』の詳細を、全て話すのを止めた。


「今日はこのくらいにしておきましょう。ルドラさん、今から朝食にしますから機嫌を直してください」


「え……私のもあるんですか?」


「もちろんです。私はこの村以外の普通を知りませんから、他の村の子供がどのような食べ物を得ているのか知りたいんです。あと、私達が出している食事がどのくらい普通と違うのか、ルドラさんに食べてもらって意見を聞かせてほしいんですよ」


「なるほど。そう言う話なら、私も朝食をいただかせてもらいます」


 私とライト、シャインの班は牛乳を配り終わり、子供達の住んでいる家に向った。


 私は子供達一人一人に朝食を配って行く。


 皆に、隣にいる男の人はだれかと聞かれ、毎度説明するのが疲れた私はルドラさんに子供達へ自己紹介するよう、お願いした。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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