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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ブラックベアー事件の後始末 ~自分の進む道を決めていく偏~
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双子にあげる誕生日の贈り物

「ど、どうしたの二人とも……」


「姉さん、今日は何で遅くなったの?」


「お姉ちゃん、今日な何の日か忘れてないよね?」


 ライトとシャインは私の目の前に迫ってきて恐ろしい眼力で睨みつけてくる。


「え、えっと。その説明は家の中でしようと思って……」


「家の中で説明できるのなら、外でも説明出来るよね?」


「そうだよ。牛乳を街に配達して村に帰って来るだけならもっと早く帰って来れたでしょ?」


 ライトとシャインは言わないとブラットディアの如く叩き潰すぞ、と言った表情で私を威圧してきた。


――し、仕方ない。ここで話してもどうせ中でもう一回話さないといけないんだけど、止められそうにないから、語るか。


 私は今日起こった事件を話した。


「あの街が壊されたってほんとなの?」


「ほんとだよ。建物の半分くらいが倒壊してる。でも、死人が出なかったの。凄いでしょ。奇跡だよね」


「巨大なブラックベアーが暴れ回る事件が起こってたのに、死人が出なかったなんてすご~い!」


 ライトは疑問、シャインは尊敬の眼を私に向けてくる。


「だから、私一人が話しても意味ないでしょ。もう一人の証人を連れてきたんだからそれで信じて」


「う~~ん、まぁ、僕達の誕生日を忘れていたわけじゃないならいいか。さ、姉さん。遅めの夕食にしよう」


「お姉ちゃんが来るまでに料理が冷めちゃってるよ。でもまぁ、いつもとほぼ一緒なんだけどね~」


 悪魔のように怖かった二人の顔が一気に変わり、天使かと思うような可愛い顏で笑い、私の手を引きながら家に向う。


――この二人、悪魔と天使が交差してるよ。し、死ぬかと思った……。


 私は家の中に入り、ルドラさんとお父さん、お母さんが話し合っているのを耳にして私達もテーブルに向う。


 その日の夜、私達はライトとシャインの誕生日を祝った。


 時間が進み、ルドラさんとお父さん、お母さんは葡萄酒で乾杯したせいか、べろべろに酔っぱらっていた。


 大人に付き合うほど子供は忍耐力が強くない。


 待ちきれなくなったライトとシャインは私のもとに寄ってくる。


「姉さん、今年はなにくれるの?」


「お姉ちゃん、今年はなにくれるの?」


 この世界に誕生日を祝う習慣はあまり浸透していない。


 と言うのも、平民が貧乏なので誕生日だからと言って特段凄い豪華な食事と言う催しが行えないのだ。


 だが、神父様によると貴族は誕生日を祝い、何かを贈る文化まであるそうだ。


 私達は一昔前まで貧乏すぎて誕生日なのにお金がなく、手作りの小物や踊り、歌などを贈ったりしていた。


 だが、今年は違う。


 私達は牛乳によってそこはかとなくお金を稼げるようになり、まぁまぁな贈り物を用意できる状態にある。


 財布の紐を握る私に、シャインとライトは何かを期待しているようだった。


「ふ、二人とも……。そんなに乗り出してきてもいい物は出てこないよ」


「別にいい物じゃなくてもいいんだよ。姉さんから去年貰った四つ葉のしおり、すっごく嬉しかったから、今年も何か貰えるなら、僕は凄く嬉しいよ」


 ライトは自作の魔法書に挟んであったしおりを見せてくる。


「私も、去年の誕生日にお姉ちゃんから貰った刺繍のお守り(ミサンガ)、今も着けてるくらいうれしかったの。今年も何がもらえるのかすっごく楽しみにしてたんだ~」


 シャインは右足首に着けてある私お手製の不格好なミサンガを見せてきた。


「あぁ~~、そうだね。もちろん用意してあるよぉ……」


――ど、どうしよう。街で何か買うつもりだったのに、そんなこと言っている場合じゃなかったから全く持って何にも用意していない。完全にルドラさん任せだったけど、ルドラさんがなぜか酔っぱらってるし。いったいどこから葡萄酒を取り出したんだろう……。


「なになに。何を用意してくれてたの?」


「うんうん、気になる~」


――ヤバイ、弟と妹のキラキラした視線が私に刺さる。


「キララ様、ここは正直に言うべきではないですか?」


 ベスパは天使のような囁きを渡しにしてきた。


――う、うん……。でも! ルドラさんが任せておいてくださいと言うくらいだったから、何か良い物を持っていたのかもしれない。一応見に行こう!


「あ、ごっめ~ん。荷台に忘れてきちゃった~。す、すぐ取って来るね!」


 私は体の至る所をポンポンポンと触り、買った物があたかも荷台に置き忘れてきたように嘘をつく。


「キララ様……」


 私は家を飛び出して牧場に置いてあるルドラさんの荷台にむかった。


 私はルドラさんの運んできた荷台の帆を開き、中をベスパに照らさせる。


「うわ、ほんとに色々ある。どれがいいかな……」


「キララ様。ルドラさんに何を思われても知りませんよ」


「いいよ。だってあの人が勝手に酔っぱらってるんだもん。そっちの方がどうかしてると思うよ」


「葡萄酒はルドラさんのスキルから出した可能性がありますね」


「スキル? 葡萄酒精製みたいな」


「いえ、ルドラさんのスキルは『収納(ストレージ)』と思われます。胸元から出しているように見えましたが、異空間から葡萄酒の瓶を出していたので間違いないかと」


「へぇ~さすが商人。本当に大切な物はそっちに入れてあるのかもね」


「でしょうね。水晶も胸もとから出していました。ですから荷台に積まれている方は、そこまで金額が高くないと想定されますからどれを贈っても、キララ様の痛手にはならないかと思われます」


「なるほど。じゃあ、よさそうなものを贈ろうか」


 私は荷台の中を散策し、ライトには黒いローブ、シャインには剣を掛けられる黒いベルトを贈ることにした。


――うん、無難。嫌そうな顔はしないはず。あとからルドラさんにお金を払えばいいよね。


 盗賊のように荷台をあさった私は家にすぐさま帰る。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ただいま……」


「姉さんお帰り。何を取ってきたの?」


「お姉ちゃんお帰り、そんなに慌てなくてもよかったのに」


 ライトとシャインは玄関前で待っていた。どれだけ贈り物が欲しいんだこの子達……。


「こ、これ……。二人への贈り物」


 私はライトに黒いローブ、シャインに黒いベルトを贈った。


「ローブ。いいね! カッコいい! ありがとう、姉さん!」


「ベルト。やった~! ベルト欲しかったの~! ありがとう、お姉ちゃん!」


「そ、そう……。喜んでくれてよかったぁ……」


――本当に良かった。即席で選んだけど、さすが王都産。田舎の子供達にとって最高の品らしい。きっと品質も王都の品だからいいだろう。無難な色で長く使ってもらえそう。だけど、二人に使われる品の方も可哀そう……。相当ボロボロにされるんだろうな。


「キララ様、何とか危機を脱したようですね」


――うん。本当に危なかったよ。いったいどうなるかと思ったけど、私の威厳は保たれたみたい。でも、二つの商品の値段がいくらか分からないんだよな……。


 私達は家の入口の扉を開け、中に入る。


 すると、真っ赤な顔をしたルドラさんが私達の視界に入った。


「あ~~、キララさん。その商品をお買い上げしていただけるんですね~~。ひっく」


「え?」


「ん?」


「あ……」


――ベスパ! 『ハルシオン』


「りょ、了解!!」


 ベスパは酔っぱらったルドラさんの首に針を突き刺し、一瞬で眠らせた。


「ぐが~~」


 ルドラさんは気絶したかのように床に倒れた。


「姉さん……。ルドラさんなんて言ってた?」


「お姉ちゃん……。よく聞こえなかったんだけど、ルドラさん、どうしたのかな?」


 ライトとシャインの顔が暗くなっていくように見える。


「え、いや、何でもないよ。酔っぱらって変な話しているだけ……」


「姉さん。手を出して」


「え、うん……」


 私はライトに手を差し出す。


「姉さんはこの商品をどこで買ったの?」


「ま、街で……」


「…………」


「ら、ライト。ほんとだよ。信じて……」


「…………、うん。嘘じゃないね」


「そうなんだ。じゃあやっぱりルドラさんが変な発言しただけだったんだね。よかった~。お姉ちゃんが適当に選んできたのかと思った~」


「シャイン、姉さんがそんなことするわけないだろ。僕たちの為に長い間ずっと考えてくれていたに決まってるよ」


「そうだよね。ごめんね、お姉ちゃん。私、疑っちゃったよ」


「い、いいよいいよ。私も遅くなってごめんね……」


――よ、良かった。ベスパ。私の魔力をなだらかにしてくれてたんだよね。


「はい。とんでもなくあらぶっていたので、静めておきました。ですが、ライトさんの嘘かほんとかを見抜く方法は使えそうですけど、こればかりに頼るのも危険ですね。今みたいに、嘘をつくと魔力がブレることを知っている者がいたら普通に悪用してきそうです」


――そうだよね。ライトにも言って聞かせておかないと痛い目を見る。でも、いい薬になるかも。いやいや、騙される可能性もあるんだから、ちゃんと指導しておかないと。


「ライト、さっき言ってた魔力で嘘をついているかどうか分かるって言うやつだけど、使い過ぎると癖になるからやめておきなよ。嘘をついたほうがいい時だってあるんだから。もしその方法を知っている人がいたら悪用されるかもしれない。気をつけてね」


「確かに、姉さんの言うとおりだよ。嘘を見抜くのは楽しいけど、あんまりいい気にはならないから、出来るだけ使わないようにする」


「うん。その方が気楽でいいよ」


 ライトは少し笑ってテーブルの方に歩いて行った。


 私は力が一気に抜けてその場に座り込む。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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