スキルの代償
「水晶は確かに高いですけど、一回買えば滅多に壊れませんから、鑑定士を雇うよりも割安になる場合が多いんです」
「なるほど。鑑定士なんて人たちがいるんですか?」
「はい。鑑定と言うスキルを持った人達がいます。彼らは魔力量やスキルを見れます。加えて、素材の判別や識別、大まかな値段まで分かるそうです。商人なら誰しもが欲しがるスキルですね」
「そんなに便利なスキルがあるなら私も欲しいですよ。凄い便利じゃないですか」
「はい。凄く便利なのでいろんな場所で活躍しています。商会やギルド、学園、学校、人が多く集まる所では必ずと言っていいほど呼ばれますね。正しい情報がないと、組織が成り立ちませんから」
「そうですよね。個人情報で嘘をついても結果が伴わなかったら意味ないですし、そんな人に大きな仕事をお願いして失敗されても困りますもんね」
「その通りですよ。戦いも情報が勝敗を左右します。鑑定のスキルを持つ者は相手を見るだけでスキルが分かるのでとても強力です。ただ、鑑定士は自身の身体能力が高くないので、身をさらすのは危険なんですよ」
「そんな人がいたら多くの人から狙われますよね」
「はい。ですから治安の悪い場所などでは水晶などの魔道具を使って魔力量を測ったりするんですよ」
「はぁ~、凄いスキルも身を守れないと意味ないですもんね。危険な世の中だからこそ、便利なスキルは隠した方がいいのかもしれませんね」
「そうですね。キララさんのスキルは応用が利くいいスキルですよね。物を浮かせるなんて、商人は日常で多用しますし、攻撃や防御をする際にも使えるじゃないですか。大当たりですよ」
「は、はは……。そ、そうですかね……。まぁ、助かっているのは確かなのであんまり悪いことは言いませんけど、ちょっとした問題もありまして……」
――重力を操作している訳ではなく、ビーが持ち上げているだけなんですよね。
「はて、スキルを使用する際の代償でもあるんですか?」
「代償と言うか、死ぬほど怖いと言いますか……」
「まぁ、便利なスキルには代償を伴う場合も少なからずあります。弱いスキルは代償なく使えたりする場面もあり、どちらも甲乙つけられるかと言われると絶妙なところなんですよね」
「スキルに代償なんてあるんですか? 私、初めて知りました」
「そりゃあ、強い力にはそれなりの代償がありますよ。全くないスキルもありますけどね。特に有名なのが勇者、剣聖、賢者、聖女の四種はスキルを使用中に代償が全くなく、最高峰に位置するスキルです」
「名前からして強いですもんね……」
――アイクの剣聖はやっぱり凄いスキルなんだ。でも、大変な眼に合うのはかわいそう。
「一人現れるだけでも奇跡に近いのに、近年二人も現れるなんて異常事態ですよ。魔王の復活のうわさが本当のように思えてきました。多くのスキルはこの四種に近づくにつれて代償が大きくかかります」
「へぇ~、例えば何があるんですか?」
「そうですね。例えばカイリの『バリア』は聖女のスキルに近しいです。なので消費魔力が半端じゃなく多いんですよ。カイリの魔力量が合って平然と使えるように見えていますが、常人が使うと一回で限界なんじゃないでしょうかね」
「カイリさん、戦い中に何回も『バリア』を使っていましたけど、あれは異常なんですか?」
「そうですよ。さすがドラグニティ学園の最終試験で次席だっただけのことはあります。当時の彼は優美な顔立ちと上級貴族と言う肩書、魔法の才能に加え、知識の豊富さ、それはもう各貴族女性の憧れの的でしたね、懐かしい」
「はは……、何となく想像できます。でも、そんなカイリさんでも次席だったんですね」
「はい、その上にフロックがいましたからね」
「え……。フロックさんが首席なんですか?」
「彼はああ見えて結構出来る男なんですよ。家系が弱小貴族って言うのを糧に努力してきたみたいです。反発精神が凄いんですね。まぁ、当時は可愛らしい風貌で男子学生に愛でられていました」
「ま、全く想像できない……。あのフロックさんに可愛い時代があったなんて」
「でしょうね。肖像画でも書いてもらえばよかったですよ。彼は絶対に書かれたくなかったみたいですけどね」
「身長ですかね?」
「でしょうね……」
私とルドラさんは明るくなった道でだべりながら村に向った。
「えっと、ルドラさん、今は何時か分かりますか?」
「ちょうど、午後10時でしょうか。今日中には帰って来れましたね」
ルドラさんは胸元から年季の入った懐中時計を取り出し、時間を確認する。
「その懐中時計、かっこいいですね」
「はは……、ありがとうございます。祖父のお下がりなんですけど、良い品だからか50年経った今も動き続けてくれていますよ。何度か修理に出しているので所々ガタがきていますけどね」
「私も時計が欲しいんですけど、どれくらいしますかね?」
「そうですね……。最近だと金貨800枚くらいから買えるんじゃないですかね。質素な見た目でいいのなら金貨500枚くらいが相場なきがします。売っている場所でも違いますし、性能も全く違うので買うときはちゃんと調べた方がいいですよ。大きな買い物ですからね」
「ですよね……、砂時計で金貨200枚ですもんね」
――この世界で時間を計る道具、高すぎ。でも、元日本人の私からしたら時間が分からないの本当に困るんだよな。もっと安く変えて腕のいい職人にお願いできないだろうか。
「あ、あの光は村の明りですね」
ルドラさんは村の明りを見て指をさした。
「そうですね。カンテラの明りだと思います」
私達は無事、村に到着した。
「ルドラさんを村に招待するのは初めてですね」
「そうですね。この村に着た覚えはありません。でも、なぜかいい村だとすぐに分かります。血のにおいがしないと言いますか、不穏な空気感が全くありません。和やかな風が気持ちいいくらいです。こんな場所で作られていたらモークルの乳が美味しいのも納得ですね」
「そんなに褒めてくれてありがとうございます。本当にルドラさんは口が上手いですね」
「ま、職業柄そうなってしまいました。でも、お世辞ではなく本心を言っているんですよ」
「分かってます。ルドラさんは嘘をつくのが苦手な人ですもんね」
「はは……、仕事に支障が出るので内密にお願いします」
私とルドラさんは牧場に向った。
レクーとルドラさんのバートン達を休ませるためだ。
「ここが、あの牛乳を作っている牧場……。見たい」
ルドラさんは体を前のめりにして、牧場の中を見たがった。
「今日はもう遅いので明日にしましょう。ルドラさんのバートン達にも餌と水を与えてください」
「そ、そうですね」
私はレクーを厩舎に戻し、餌と水をあげて感謝の気持ちを伝えた。
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