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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ブラックベアー事件の後始末 ~自分の進む道を決めていく偏~
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今までの事件の詳細

「ん~。これなら治せそうですね」


 メルさんはホッとした表情をしている。


「本当ですか。よかった~。曲げたり伸ばしたりする時に毎回痛みが出るのは勘弁願いたいですから」


「ですよね。では、治療します『ハイヒール』」


 メルさんは私の左腕に手を当てて淡い緑色の光を流し込んできた。


 私の肘に光りが集まっていき、とても暖かかった。


 数秒魔法をかけてもらうと、メルさんは魔法を止めた。


「はい、治療はこれで終了です。肘に残った骨を取り除いたので痛みがなくなっているはずですよ」


 私は腕を曲げたり伸ばしたりする。


「ほ、ほんとだ。痛くないです。よかった~、これで仕事が出来そうですよ」


――光を当てただけで骨がなくなるってどういう原理なんだろう。謎だ。


「そうですか、私も治せてよかったです。では、気をつけて帰ってくださいね」


「はい。ありがとうございました。あ、メルさん。一つお願いしてもいいですか?」


「え、お願いですか?」


「はい。私の友達の友達がこの病院で眠っているんです。もう、目を覚まさないかもしれないんですけど、魔法を一度かけてもらえませんかね。もしかしたら意識を取り戻すかもしれないじゃないですか」


 私はラルフ君を目覚めさせられるのはこの人しかいないと思い、メルさんの肩に両手を置いて揺するようにお願いする。


「えっと、キララちゃんの言っている子はラルフ君のことですか?」


「え……そうです。でも、ラルフさんをどうして知っているんですか」


「私が一度お願いしたんですよ。この子を治してくれませんかって」


 リーズさんが悔しそうな声で語った。


「私も彼の容体を見ました。でも、今の状態以上に回復させられなかったんですよ。ラルフ君の体は既に回復しきっていました。だから、回復魔法の効果がないんです。


「そうなんですか……」


 ラルフさんの様態は変わらず植物人間の状態だった。


――リーズさん以上に回復魔法が強力なメルさんでも治せないなら、もう少し様子を見て時間を掛けるしかないか。


「ではありがとうございました。先ほどの話、厳密にお願いしますね」


 私はメルさんに念を押しておく。


「はい。私も気付かれたくないですから」


 私はメルさんのいる、治療室を出る。


「次はいったいどこに向うんですか?」


 リーズさんは私の後ろについてきた。


「フロックさんとカイリさんの様子を見に行こうと思いまして……。リーズさん、二人の病室はどこですか?」


「はあ~。それくらいなら教えてあげますよ。あの二人はいま、病室のベッドで横になっています。ついてきてください」


「分かりました」


 私はリーズさんの後ろについていく。


 少し歩いていくと相部屋があった。


 どうやらフロックさんとカイリさんは同じ部屋にいるらしい。


「ここです」


「ありがとうございます」


 私はリーズさんに頭を下げた。


『コンコンコン』


「フロックさん、カイリさん、起きてますか~」


 私は扉を叩き、二人の名前を呼ぶ。


「起きてますよ~」


 病室からカイリさんの声が聞こえた。


 私とリーズさんは病室に入る。


「やぁ、レディー。こんな姿を見せてお恥ずかしい限りだ」


 カイリさんは綺麗な包帯でぐるぐる巻きにされた男になっており、とても痛々しい。


「フロックさんはまだ寝ているんですか?」


「そうだね。この通り、爆睡してるよ」


 カイリさんの隣のベッドで、体に包帯を巻かれたフロックさんが横たわり眠っていた。


「カイリさん、ルドラさんはどこに行ったんですか?」


「ルドラなら、商人の稼ぎ時だ~! とか言って私達を運び終えた後、多くの人が集まっている闘技場の方に向かったよ。ほんと、お金が好きなやつだよね」


 カイリさんが苦笑いをするのは珍しい。


 いつも、すました顔で話しているので新鮮だった。


「リーズさん、一度席を外してくれますか。私達はこの二人に話さなければならないことがあるんです」


「そうですか……。分かりました。また何かあったら呼んでください」


 リーズさんは察してくれたのか病室をあとにする。


「それで、レディー。フロックは寝ているが起こした方がいいかい?」


「そうですね、フロックさんにも話を聞いてもらったほうがいいかもしれません」


「分かった。では、フロックを起こしましょう」


「でも、どうやって起こすんですか? すごい爆睡していますけど……」


「簡単ですよ。少し耳打ちしてやるだけでいいんです」


「耳打ち?」


「はい。私は動けないのでレディーがフロックの耳の近くでブラックベアーと囁けば、起きます」


「そんな簡単に起きますかね……」


 物は試しだと思い、私はフロックさんの耳元に向う。


――こ、ここまで来ると近いな。こんなに近くでフロックさんの顔を見たのは初めてかも……。別にイケメンってわけじゃないのに、なんか引かれる顔してる。変なの。これが巷で言う可愛いってやつか。


 私はイケメンを見すぎて慣れていた。


 なんせ、芸能界なんてイケメンと美女ばかり。


 特に私はアイドルだったから周りは美男美女、何日見続けてきたか分からない。


 日本中から集まった猛者たちがしのぎを削る芸能界の荒波を超えてきた私は何人もの美男美女を見て自分の基準が分からなくなっていた。


――唯一分かるのは私が一番可愛かったってこと。てへっ。うん、十歳児がやればまだかわいいか。さすがにニ十歳超えてやるべきじゃなかったな。


「耳もとで囁けばいいんですよね……。えっと、フロックさん、ブラックベアーがまた出ました……」


「なに! ど、どこだ!」


 フロックさんは飛び起き、ベッドの上に立った。


 そのさい、背中にいつもある大剣の柄を握ろうとするも今は無いので握れない。


「うわぁ……。ほ、本当に起きた」


「ね、私の言った通りだったでしょ」


 カイリさんは笑っていたが起こされたフロックさんの機嫌は悪かった。


「また、ブラックベアーで起こしやがって……。もっと普通に起こしやがれ」


「普通に起こしても絶対に起きないでしょうが。フロックはどれだけ周りに起こされてきたか分かってるの?」


「分かってるよ。感謝してる……。だが、ブラックベアーで起こすのはやめろ。心臓に悪いだろ」


 フロックさんはベッドに腰を静かにおろした。


 フロックさんが起きたので、私はこれまで起きた事件の経緯を結び合わせていく。


「フロックさん達はブラックベアーの暴走を調べていましたよね。初めの事件は生誕祭のブラックベアー暴走事件でしたか?」


「ああ、そうだ。あの時のブラックベアーは異常だった。まさしく今回のブラックベアーと同じ感じだったな」


「あのブラックベアーがどういった経緯で闘技場の戦いに運ばれたんですか?」


「俺達の調べによると、ビースト共和国とルークス王国の国境付近で捕獲されたらしい。捕まえた時はあそこまで凶暴じゃなかったそうだが。空腹で気は立っていたようだ。でも、魔導士の『バインド』で十分拘束できる程度の興奮状態だったと言っていたな。だが、放たれる時には既に凶暴化していた。そのせいでノルドが死にかけたな。あと、キララも」


「なるほど……。じゃあ、初めからあれだけ狂暴ではなかったというんですね」


「そうだ。加えて、あの大会の主催者は領主だった。今回の事件に繋がっているのは確かだろう。俺達はルークス王国の王都に向って魔物を狂暴化させる薬や魔法でもあるのかと思って調べたがそれらしき試料はなかった」


「と言いますか、見せてもらえなかったと言ったほうが正しいね。私達はAランク冒険者だから、観覧図書も高位な本を借りられるんだけど……、あらかた消えていまして。どうも不自然だったんだよね」


 カイリさんがフロックさんの説明の補足をする。


「正教会やドリミア教会の者が本を奪って何かを作った可能性もありますよね?」


「おおいにあり得るね。王立図書館は正教会が運営していますから、配下のドリミア教会の者に貸し出しなど自由自在でしょう」


「本当にやりたい放題ですね……」


「ブラックベアーが暴走して不死になるなんて、勘弁してほしいぜ……」


 フロックさんは体を伸ばし、緊張をほぐしていた。

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