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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ブラックベアー事件の後始末 ~自分の進む道を決めていく偏~
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街に帰還

「牛乳から作ったのなら、チーズの作り方を公開したところで他の牧場が同じ工程をしてもキララさんの作ったチーズの味になるとは到底思えないのですよ。あのとんでもなく美味しい牛乳から作らなければならないんですよね?」


「まぁ、そうですね。チーズの材料は牛乳ですから、モークルの乳がないと作れません。そうか……、他の牧場で得られるモークルの乳は質が悪いんでしたね」


「その通りですよ。キララさん。キララさんの住んでいる村で採れたモークルの乳だからこそ、チーズは美味しく作れるんです。他の村や牧場にもチーズに似た食品はありますが、臭すぎて食べられたものじゃありませんでした」


 ルドラさんは鼻をつまみ、とても臭い食べ物を嗅いだ時の顔をした。


「他の場所にも、チーズに似た商品があったんですね」


「はい。ですがチーズとは似ても似つかぬ食品ですよ。臭いなんて表現が生温いくらいです」


「まぁ、美味しい食品を作るためにはまず材料からが基本です。だから、菓子職人の皆さんも牛乳が欲しいんですね」


「はい。お菓子は特に材料の質が出ますからね。モークルの乳は特に臭いがきついですから、味は捨てて、乳の臭いがあまりしないだけで王都では重宝されます。ただ、キララさんの商品である牛乳は優しい匂いに加えてほんのりと甘い味がするという超絶品です。王都の菓子職人たちが欲しがらないわけありません」


「そんなに言ってもらえると、モークル達も嬉しいと思います」


「では、引き続き王都への運搬役は私でいいということですね」


「はい。ルドラさんにお任せしますよ。あと、ルドラさんならお金をだまし取ったりしなさそうなので、売り上げはルドラさんが毎回計算して出してください。そうですね……ルドラさんに払う金額は、売り上の二割でどうですか?」


「二割ですか! そんなにもらってもいいんですかね……。賃金は固定かと思っていました」


「いえいえ、ルドラさんの手腕で売れた額が高くなればなるほどルドラさんの報酬も多くなっていく仕組みです。そうした方がやる気が倍増しますよね」


「そりゃあもう、やる気が溢れんばかりに出てきましたよ!」


 ルドラさんは右腕を回し、やってやろうと言った表情をしている。


「あと、言っておきますけどお金の計算はちゃんとした方がいいですよ。ルドラさんが儲けを多くしようとして間違った計算をしたら、私の弟が黙っていません、最悪殺されます」


 我が家には人間コンピューターかと思うくらい計算が好きな弟がいる。


 出来ればルドラさんには死んでほしくないので先に忠告しておいた。


「そんなことしませんよ。ましてやキララさんを相手にしたらどんな目に合うか分からなですからね。でも実際、商人の中には金額をだまそうとする輩がいますよ。そのせいで、商人の印象が悪くなってしまうんですよね。ほんと止めてほしいですよ」


 ルドラさんは誰か思い当たる節があるのか、眼を細めて前を向いている。


 硬い話を少しした後、私は気になる話をルドラさんに聞いた。


「あの、ルドラさんはフロックさん達と知り合いだったんですね」


「はい。学園の同級生です。それぞれ学科は違いましたが寮が同じ部屋だったんですよ。凄い偶然ですよね」


「へぇ~。そんな偶然もあるんですね。と言うかフロックさん達は何で、ルドラさんと一緒に行動していたんですか?」


「ルークス王国の王都でばったり会いましてね。余っていた牛乳瓶を飲ませたら飛び跳ねるくらい美味しそうに飲んでまして、是非とも作った者に会いたいと言ってきかなかったので連れてきました。悪いやつではないので、多めに見ていただけると……」


「いやいや、ルドラさんがフロックさん達を連れてこなかったら、今頃どうなっていたか分かりません。多分、私は死んでいましたよ。フロックさんが私の命の恩人ですけど、命の恩人を連れてきてくれたルドラさんも命の恩人です。怒れないですよ」


「はは……。確かにそうですね。私もあの二人がいなかったら巨大なブラックベアーに潰されて死んでたかもしれません。私には戦う力がないので、頼もしかったですね」


「ほんとですね……」


 その後、私とルドラさんはいろんな話をして情報を交換した。


 少しして、私達は街に到着する。


 ☆☆☆☆


「こ、これは……、酷いですね。建物がばらばらじゃないですか……」


 ルドラさんは街の壊れようを見て、驚いていた。


「でも、死人は出ていないみたいです。巨大なブラックベアーが暴れ出す前に街の人たちを避難させたのがよかったみたいですね」


「こんな被害が起こって死人がいないなんて……。奇跡としか言いようがありませんよ」


「そうかもしれません。でも、死人が出なかったのは多くの者が一生懸命に動いたからです。私達の手で奇跡を手繰り寄せたんですよ」


――ね、ベスパ。


「はい、その通りです! 私達は奇跡を確かに手繰り寄せたんです!」


 ベスパは胸を張って威張った。いつもはうざったらしいその姿勢が今はちょっとだけ潔い。


「キララ女王様!! ご無事でしたか!!」


 大きな声が私の脳内に響く。


 それと同時に私の膝に物凄い速度で移動してきたのは黒光りする生き物だった。


――ディア。ただいま。死にかけたけど戻って来れたよ。


「ううう、よかったですよ!! ほんとにご無事でよかった!!」


 ディアは私の膝の上から掌に乗り、号泣していた。虫なので涙は見えないけど……。


「ルドラさんはフロックさんとカイリさんを病院に運んでください。私にはまだやることが残っていますので、ここで降りさせてもらいます」


「分かりました」


――ベスパ、四人の騎士を荷台から降りさせて。その後、領主とマザーを『光学迷彩』で隠しながら空中に浮かべて。


「了解です」


ベスパは冷蔵車の後方に繋がっている荷台に向っていき、女騎士四人を地面におろし、死体同然の領主とマザーを浮かび上がらせる。


 その間に私は冷蔵車の前座席から降りた。


「それじゃあ、ルドラさん、二人をお願いします」


「任せてください。ではまた後で落ち合いましょう」


「分かりました」


 ルドラさんはレクーを冷蔵車から外し、フロックさんとカイリさんを連れて街で一番大きなリーズさんの病院に向っていった。


「さてと、まずは女騎士さん達を起こさないといけないな」


 私は女騎士さん達を起こす。


「ぺシぺシ……。お~い、ロミアさん。起きてください。街に着きましたよ」


 私はロミアさんの肌を軽く叩き、起こす。


「ん……。な! い、いつの間にか街に戻ってる。何で!」


 ロミアさんは体を勢いよく起こし、あたりを見渡した。


「ロミアさんは疲れすぎて寝ちゃってたんですよ。なので荷台に乗せて運びました」


「そ、そっか……。私、寝てたんだ」


 私はロミアさん以外の女騎士も叩いて起こす。


「う……。な、なに。いつの間にか街に着いてるだと……」


「ほ、ほんとですね。私達は平原でキララちゃんに会った後……、あれ、思い出せません」


「何か、首筋がチクってした気がするのよね……。その後一気に眠たくなって、気づいたら街に戻ってる。わけが分からないわ」


 トーチさん、マイアさん、フレイさんは疑問を持ちながら立ち上がる。


「皆さん。街の復興に取り掛かってください。まずは住民の安全を確保して暴動が起こらないよう努めてください。すでに冒険者さんや、街に残っていた騎士団の皆さんが行っているはずなので、仕事を遂行してくださいね」


「は、はい! 分かりました!」×四人


 四人の騎士たちは避難所に走っていく。


 子供の話もちゃんと聞いてくれる優しい人達でよかった。


「ベスパ、この街にある魔造ウトサは全部回収した?」


「はい。すでに回収済みで、ディア達がほぼ食べつくしました。資料として最小限は残してあります。人工魔石と共にどこかへ保管しておきましょう」


「そうだね。万が一にでも人工魔石や魔造ウトサが残っていると敵に気づかれるのはまずいから、絶対に見つからない所に隠したいんだけど、どこかないかな」


「それなら良い所がありますよ」


「え……。どこにあるの?」


「この中です」


 ベスパは『転移魔法陣』を展開し、私に見せてきた。


「え、それ『転移魔法陣』だよね。隠せないじゃん」


「私、こんなものを作ってみました」


 ベスパは木製の板を手渡してきた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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