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超巨大ブラックベアーの討伐作戦

「それじゃあ、レクー。私達は1キロメートルくらい離れようか」


「分かりました」


 私は400メートル地点から一気に移動して黒い塊から1キロメートル地点にやってきた。


「ここまで来ると、あの黒い塊が黒胡麻団子に見えてきた」


「黒胡麻団子……。何かのお菓子の名前ですか?」


 ベスパは首をかしげて聞いてくる。


「そうだね。いつか作れるといいな……。団子も」


「なら、ここを生き残らないといけませんね」


「もちろん。絶対に生き残るよ。自分を悪魔だとか言う薄気味悪い存在のことを他の人に知らせないといけないし、マザーの魂も返してもらわないといけない。ここで私が死んだら、ドリミア教会や悪魔の計画通りになってしまう。やつらの計画なんてぶっ壊してやるんだから」


 私は体の中で魔力を少し練り込む。


 練り込んだ魔力を指先にため、魔法を放つふりをする。


「『ファイア』」


『………………』


「反応なし。1キロメートル離れたらさすがにあの黒い塊でも認識できないか。なら、魔法自体に反応するのか試してみよう。ベスパ。私が『ファイア』を打ち出すから、魔力で操作して黒い塊に誘導して。どこらへんで黒い塊が魔法に反応するのかを知りたい」


「了解しました」


 私はいつも通り、指先に魔力を溜めていき『ファイア』の魔法陣を展開させる。


『ファイア!』


 私は詠唱と共に指先の魔力を魔法陣に押しこんで『ファイア』に変換して打ち出した。


 打ち出された『ファイア』は直線上に飛び、黒い塊に向っていく。


 100メートル過ぎたころから『ファイア』の起動が上下左右に動き始めたのでベスパに援助してもらい何とか進ませた。


 200メートル過ぎたところで、黒い塊が反応し『ファイア』をブラックベアーの手で掻き消す。


「なるほど、部分的な変形も出来るのか。触手がブラックベアーの手に変わるのなら、遠くから魔法を打ち込んで当てるのは速度がないと相当難しいな。それじゃあ、ここから『転移魔法陣』を発動するとどうなるか、試してみようか。ベスパ、黒い塊の頭上に移動して」


「了解です」


 ベスパはあっという間にブラックベアーの頭上に移動する。


「キララ様、移動しました」


「よし。その場でベスパの頭上に『転移魔法陣』を展開」


 私の方からは見えないが『転移魔法陣』は展開できたのだろうか。


「キララ様、展開は成功しました」


「そう。なら、魔力を込めたらどうなるかやってみよう」


 私は指先に『転移魔法陣』の入口を展開する。


 その中に『ファイア』を撃ち込んだ。


「ベスパ、どうだった?」


「ダメです。『転移魔法陣』が光った瞬間に触手が伸びてきました。伸びて来た触手がブラックベアーの手に変わって『転移魔法陣』から『ファイア』が出てくる前に防がれました」


「なるほど。『転移魔法陣』の方が速く発生してしまう魔法の構造上『ファイア』が魔法陣から出てくる前に防がれちゃうのか。ブラックベアーの反応速度が相当速いんだな……」


「キララ様、どうしましょうか。このままだとカイリさんの魔法が発動しても防がれてしまいます」


 カイリさんは未だに走りながら呪文を唱えていた。


 カイリさんを襲う黒い触手は未だにカイリさんを攻撃し続けている。


「いや、それはそれでいいと思う。魔法を放った部位がブラックベアーに戻るってことはフロックさんの物理攻撃が通ることになる。その一撃で魔石を露出させたあと、私達が魔石を抜き取ればいい。作戦がころころ変わるけど、臨機応変に対応しないとね」


「了解です。では、魔力を使ってフロックさんとカイリさんに伝えますね」


「お願い」


 ベスパは上空で光る。すると、二匹のビーがフロックさんとカイリさんのもとに飛んで行った。


「あー、フロックさん、カイリさん聞こえますか?」


 私はベスパに向かってしゃべる。


「え……。レディーの声が聞こえる。いったいどんな魔法を使っているんだい?」


 呪文を一時中断し、私の声にカイリさんが反応した。


「カイリ! 今はどうでもいいだろ。キララ、作戦を早く教えろ! こっちは手負いなんだ。時間がない」


 フロックさんは相当焦っているみたいで、急かしてきた。

 

 ベスパがビーから伝って聞こえる音を私に送ってくれているので二人の声が聞こえている。


 逆もしかり、私の出す声をベスパが認識してビーに送り、魔力で空気を振動させて言葉を伝えている。


 ビー通信とでも名付けようか。


「今、調べたんですがあのブラックベアーが魔法などを感知する範囲は800メートルだと分かりました」


「800メートル!!」


 フロックさんが大声を出すものだから私の耳がキーンとする。


「あの、あんまり大声を出されると耳がいたいのでやめてください」


「す、すまない」


「加えて私の想定していた魔法を使うと触手がブラックベアーの手になって防がれてしまいます。ゼロ距離で攻撃してもその箇所をブラックベアーの体に一瞬で変えてしまうでしょう」


「じゃあ、どうやって倒すんだ?」


「カイリさんの高火力炎属性魔法を黒い塊に打ち込みます。すると、黒い塊はブラックベアーに変形すると思うので、その時フロックさんがブラックベアーの体を引き裂いてください。露出した魔石を私が抜き取ります」


「なるほど、いい作戦だ。魔石が三個あると言うことは作戦を三回繰り返せば倒せるということか?」


「運が良ければ一回で倒せるはずです。カイリさんは最低三回は魔法を放つと考慮して魔力を使ってください」


「了解だよ」


 カイリさんは集中しきっているのか声からほど良い緊張感が伝わってくる。


「キララ、たった五年でここまで成長するとはな。全く思ってなかったぜ。じゃあ、へまするなよ」


 フロックさんは私を褒めてくれた。


――ど、どうしよう……。めっちゃ嬉しい……。五年間努力してよかった。


「キララ様心拍数がどんどん上昇していますが大丈夫ですか?」


――大丈夫、大丈夫。褒められて元気1000倍だから。


「では、私達も1000倍の力が出ると言うことですね!」


 ベスパは翅を高速で動かし、音をブンブンと鳴らす。


――そ、それはどうか分からないな。まぁ、気持ちは1000倍だよ。それより、ベスパはブラックベアーの一瞬のすきも逃がさないようにね。勝利はあんたの速さに掛かってるから。


「了解です! 超絶全力で飛びます。魔石一個の時でも触手は相当速かったので魔石三個分となると単純に三倍ほど速くなっているはずですから、完全に逃げ切るのは難しいです。ただ、私が逃げている間に、キララ様が『ファイア』をあてられれば勝機はあります。上空800メートルを抜ければ触手の変形も難しいのではないかと考えられるので、それこそ速度勝負ですね」


――分かってる。『転移魔法陣』で『ファイア』を出来る限り速く送るから。


 私とフロックさん、カイリさん、ベスパは超巨大ブラックベアーの討伐に挑む。


 私達はビー通信で言葉を交わしながら連携を取る。


「カイリさん、好きな時に再開してください」


「分かりました。では、早速撃たせていただきます!」


「なら、俺は離れればいいんだな」


 フロックさんは黒い塊の頭上を離れ、100メートルほど距離をとった。


「ふぅ……。私の体にはすでに魔力が魔法三発分ほど溜まっている。呪文も唱え終わった。私を移動中に仕留められなかったのがあなたの落ち度だ」


 カイリさんは走りながら移動したのかブラックベアーから魔法の射程距離範囲ギリギリである100メートルほどの位置にいた。


 900メートル先にいるカイリさんの体を纏う魔力が私の位置からでも分かる。


 カイリさんの頭上に立ち昇る魔力は赤く、その場に上昇気流が発生しているような空気の流れが出来ていた。


――ベスパ、カイリさんの魔法が広範囲に及びそうだから、ブラックベアーから少し離れた位置で待機した方がいいかも。


「了解です」


 ベスパはフロックさんよりもさらに離れ、200メートル斜め方向に移動した。


「ふっ!」


 カイリさんは地面に槍の先端を差し込み、頭上に魔法陣を展開させる。


 カイリさんの魔力に反応して黒い触手が攻撃を繰り出してきた。


『ズリュルルルルルルルル!!』


『ドガッツ!!』


「『バリア』はすでに発動済みなので、そう簡単に攻撃は通りませんよ」


 カイリさんは走りながら『バリア』を球体状に張ったのか、自身の体を既に守っているため、黒い触手が攻撃しても何とか耐えている。


『ドガッツ!! ドガッツ!! ドガッツ!!』


『ビシ、ビシ、ビシ……』


 だが、黒い触手が『バリア』に攻撃するたび、罅が蜘蛛の巣状にビシビシッと入り、割れかかっている。


「『バリア』が割られるより先に、魔法を放てばいいだけだ!」


 カイリさんは大きな槍を地面から抜き、魔法陣に突き刺した。


 きっと体の魔力を魔法陣に送ったのだろう。


 それと同時に魔法陣は赤色の光を放ち、魔法が発射される準備が整った。


『フレイムピラ!』

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