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前衛の四人と後衛の一人に加えてお供の一匹

「ロミア、泣いている場合じゃない。まだブラックベアーもどきを倒したわけじゃない。加えて今も巨大なブラックベアーがこっちに向ってきている。気を引き締めろ!」


 トーチさんはロミアさんを鼓舞する。


「だってー。一番早いマイアがやられてるんだもん。とろい私じゃ攻撃がブラックベアーもどきに当たらないよー!」


 ロミアさんは泣きながら自分の不甲斐なさを曝す。


「そうかもしれない。ロミアと同じように私の攻撃速度ではあいつらに一撃も当たらなかった。だからって何もしない訳にはいかないだろ。ロミアは10歳の少女に守られて恥ずかしくないのか!」


「でも、でも、ほんとの私はすっごく弱いんだもん……」


 ロミアさんは泣きながら私にしがみ付いてくる。


「泣いてる場合じゃないって言ってるだろ!」


 トーチさんはロミアさんを私から引きはがし、両肩を持って揺さぶる。


「ちょ、ちょっとあんたたち。こんな時に喧嘩してる場合じゃないわよ」


 フレイさんは言いあっている二人の間に入り、仲直りさせようとしていた。


 そんな時。


「うぅ……。痛っ……」


「マイア!」×ロミア、トーチ、フレイ。


「マイアさん、起きたんですね。体は大丈夫ですか? 動けないようでしたら病院に送りますよ」


「い、いえ……。大丈夫、です……。まだ、動けます」


 マイアさんは横たわっていたのだが、軋む体を無理やり動かして膝立ちになった。


「ブラックベアーもどきの全力の突進を食らって骨が数本折れてるくらいで済んでるみたいですから……。キララちゃんの付与魔法のおかげですね。もしあれが無かったら私は死んでました……」


――骨が数本折れているのに動こうとするって……、肝が相当据わってるんだ。私も覚悟を決めないと。


 ブラックベアーもどきの頭はしだいに元に戻っていく。


「やっぱり……、頭の再生は他の部分より時間がかかってる。頭を潰せばそれなりに時間は稼げそうですね」


「つまり、誰かがブラックベアーの頭を潰すか切るかを行い、体の動きを止めたあと魔石を露出させる。こういった作戦が今の最善策の気がするが、どうだろうか。意見があったら言ってくれ」


 トーチさんは三人に顔を向ける。


 三人とも頷き、私達の作戦が決まった。


「キララ様。ただいま戻りました」


――ベスパ、やっと戻ってきた。これで私も戦える。もっと早く戻ってきてほしかったよ。


「これでも大急ぎで戻ってきたんですよ。私がいないと統率がまばらになりますから」


――分かってるよ。でも丁度いい時に戻って来てくれてありがとう。さ、四人を援護するよ。


「了解!」


 四人の女騎士は私の前に立つ。


「キララちゃんは危ないから、離れていて。私達が何とかして止めるから」


 ロミアさんは私に泣き着いていたのが嘘かのように凛々しくなって私の前に立っていた。


 どうやら戦おうとすると気分が前向きになる性格らしい。いかにも騎士って感じだ。


「いえ、私も手伝います。ブラックベアーもどきにも効く魔法が少し使えるので、誘導くらいはできると思います」


「でも……」


「皆さんは近距離攻撃しかできませんよね。パーティーに遠距離攻撃が出来る人が一人はいた方が、戦いが楽になるんじゃないですか?」


「キララちゃんの言う通りだ。このまま私達の力だけで勝てるかどうか確証が持てない。少なくとも、キララちゃんのスキルがあれば、私達が危険な時、さっきみたく離脱できる」


 トーチさんは折れた武器を持ち『部分変成』を使ってつなぎ合わせた。


「確かにそうですね、先ほどの離脱速度からして結構攻め込んでもブラックベアーの攻撃を受ける前に逃げられそうです」


 マイアさんは頭に包帯を巻き、屈伸運動をして体の動きを確認する。


「結局、あの頭を切り離せば私たちの勝ちってことでいいわね」


 フレイさんは大剣を肩に担ぎ、大剣を持っていない方の腕を回している。


「皆さん、私が危険だと判断したときはすぐに離脱させます。ですから、好きなだけ攻めてください。防御は難しいですが援護なら得意です。なので攻撃できると思ったら突っ込んでください」


「了解!」×4


「さて……、キララ様。私は何回死ぬんでしょうか?」


 ベスパは服の乱れを治し、うざったらしい金髪を魔力で靡かせる。


――さぁね。回数は極力減らしたいところだけど、出し惜しみしてたら誰か死んじゃうかもしれないから、出し惜しみ無しで行くよ。


「了解です!」


『グラアアアアアアア!!』

『グラアアアアアアア!!』


 頭部が完全に復活したブラックベアーもどきの二頭は私達の方に走りながら咆哮を放ってくる。


「来るよ!」


「分かってる!」


「ふぅ……」


「叩き切ってやるわ!」


 四人の女騎士は『女王の輝き(クイーンラビンス)』があったときよりも眼が鋭くとがっている。


 どうやら死を実感しているらしい。


 でも、その分集中力が半端じゃないくらい高まっており、誰が見ても女の子を守るカッコいい騎士だった。


 まさか初めて会った時にさぼりながらだべってた人たちだとは思えない。


――ベスパ、私達もやるよ!


「了解です!」


「はぁああああ!」×四人の女騎士


 皆、一斉に飛び出し、ブラックベアーもどきと対峙する。


 詳しい作戦は四人で一斉に一頭のブラックベアーもどきを戦闘不能にさせたあと、もう一頭のブラックベアーもどきを倒しにかかると言った四対一の状況を作り出す作戦だ。


 二対一では勝てなかったとさっきの情報から知っているので、四対一に持ち込むらしい。


 ここで肝になるのが、始めの分担とその後の討伐速度だ。


――ベスパ、並んでいるブラックベアーもどきの顔面の横に飛んで。爆発の威力は小、四人に被害が出ないくらいの範囲でお願い。


「了解」


 光を纏ったベスパは女騎士を一気に追い抜かし、並んで突進してくるブラックベアーもどきの顔の横に移動した。


 四人の女騎士がブラックベアーもどきと直線上に重なっているため、私からではブラックベアーもどきの顔の横を正確に狙えない。


 でも……。


「『転移魔法陣』を展開」


 私の指先とベスパの尻に『転移魔法陣』の入り口と出口が展開した。


「『ファイア』」


 私は威力を抑えるため、微量の魔力で『ファイア』を『転移魔法陣』に打ち込む。


 指先から出た小さな火の玉が『転移魔法陣』によって移動し、ベスパに直撃する。


 『ファイア』を放ってから一秒にも満たない速度で爆発する。


『ボカッ!』


『グラアアアアアアア!!』×二頭のブラックベアーもどき


 ベスパは爆発し、ブラックベアーもどきを離れさせた。


 一頭は体勢を崩し、地面に顔面から衝突。


 もう一方は体勢を立て直し、そのまま四人の女騎士に向っていった。


「分かれたぞ! 囲め!」


 トーチさんが他の三人に合図を送る。


「了解!」×ロミア、マイア、フレイ


『グラアアアアアアア!』


 ブラックベアーもどきは物凄い勢いで先頭に立つトーチさんに突進する。


――ベスパ、トーチさんを狙っているブラックベアーもどきの足もとに移動、威力が小の爆発をお願い。


「了解!」


 爆発してから2から3秒ほどで復活したベスパは、トーチさんに突進するブラックベアーもどきの右脚にくっ付く。


 私は先ほどと同じ要領で……。


「『ファイア』」


『ボガッ!』


『グラアアアアアアア!!』


 ブラックベアーもどきの右脚にくっ付いていたベスパが爆発し、巨体は体勢を崩した。


「キララちゃん! 狙うとこ上手すぎ!」


 ブラックベアーもどきを囲っていたロミアさんは爆発を見ていたらしく、褒めて来た。


 ロミアさんに褒められたが別に私が凄い訳ではなく『転移魔法陣』を作り出した弟が凄いのだ。


「ありがとうございます! では皆さん、魔石の露出をお願いします!」


「了解!」×四人の女騎士。


――ベスパ。私達は後ろにいるブラックベアーもどきの足止めをするよ。


「了解です!」


 先ほどの爆発で体勢を崩していたブラックベアーもどきは上体を既に起こし、四人の女騎士に向って突進していた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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