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制限時間のある戦い

「はぁ、はぁ、はぁ……。魔石の位置は分かった。あとはその部分に切りかかるだけ。思いっきり切りかかれば、本物じゃないブラックベアーもどきなんかに私の攻撃が止められる訳ないわ!」


『グラアアアアアアア』


 ブラックベアーもどきの頭部は元に戻り、いら立っているのかフレイさんに咆哮を放つ。


「ぐっ……。本当に怖い顔してるわね、あんた。でも、そんなので私が止まると思ったら大間違いよ。今ぶった切ってあげるから覚悟しなさい!」


『グラアアアアアアア』


 こんどはブラックベアーもどきが先に動いた。


 フレイさんに向って猛烈な勢いで突進してくる。


 先ほどの力勝負で負けたのが相当悔しいみたいだ。


――いや、ブラックベアーもどきに悔しいなんて感情はないか。ただ目の前にいる敵を倒そうとしているだけだよな。


 強さには限界がある。


 それは、感情のない者と感情のある人で同じだ。


――でも……、人は感情があるから成長できる。今、目の前で戦いに向うフレイさんのように気高く闘志を燃やし、自分の力に変えて行ける。それは感情がある人だからこそ生まれる強さだ。


「はああああ!」


 フレイさんは震える脚を何とか動かし、大剣を顔の横に構え、剣身の先端をブラックベアーもどきに向けながら走り出した。


 まるでフレイさんが一本の剣になったかのようにただ真っ直ぐブラックベアーもどきに向っていく。


 フレイさんの体から出ている『女王の輝き(クイーンラビンス)』の光が残像のように通った道筋に残っている。


「はああああ!」


『グラアアアアアアア!』


 フレイさんとブラックベアーもどきの距離は一瞬にして縮まり、敵が大剣の攻撃範囲に入った。


 フレイさんは先ほどよりも一歩前に出ており、その場で攻撃を繰り出せば重い一撃を放てそうだ。


 だが、フレイさんの体が硬直しているのかトラウマがよみがえったのか分からないが一向に攻撃の姿勢に移らない。


 このままだとフレイさんはブラックベアーもどきの攻撃を食らってしまう。


 そう思った私は叫んだ。


「フレイさん!! 頑張れー!!」


「!!」


『グラアアアアアアア!』


「はああああ!!」


『ガキンッ!』


 私が叫んだ途端、フレイさんの体の硬直が取れ、ブラックベアーもどきの攻撃を大剣で弾く。


 その際、ブラックベアーもどきは攻撃を真上に弾かれて体勢を大きく崩していた。


 フレイさんは懐の開いたブラックベアーもどきに大きく掲げた大剣を頭から叩き込んだ。


『ズバッシュ!』


 ブラックベアーもどきの体は頭部から股まで一気に切られ、真っ二つになる。


 ブラックベアーもどきの魔石は右の腹にあり、フレイさんは振り下げた大剣を持ちながら体を一回転させてブラックベアーもどきの横腹に一閃を与える。


 四分割されたブラックベアーの一部から魔石が露出しており、私はすぐさまビー達に抜き取らせる。


 その後『ファイア』と『転移魔法陣』の合わせ技を使って空中で黒い触手を燃やし、黒い塊となったブラックベアーもどきを引火させて倒す。


「や、やったぁ……。わ、私、あのブラックベアーもどきに勝てた……」


 フレイさんは自分が勝てたと思えないのか、まだ敵が残っている中で棒立ちになっていた。


「フレイさん。まだ戦いは終わっていません、気を抜かないようにしてください!」


「そ、そうね。より一層気を引き締めていくわ。えっと……、キララちゃん」


「はい、何ですか?」


「さっきはありがとう……。あの一言で体が動いたわ」


「どういたしまして。でも、私はトラウマを克服しようとするフレイさんを応援しただけなので、当たり前のことをしただけです」


「それでも、嬉しかった。応援されるって力がでるのね」


 フレイさんは凛々しくも綺麗な顔で笑った。


「そうですよ。応援の力は凄いんです!」


「ええ……そうね。それじゃあお姉さん。もうちょっと頑張っちゃうんだから!」


 フレイさんは赤い髪を靡かせ、別個体のブラックベアーもどきに向っていった。


――フレイさん。カッコいい……、本当にトラウマを克服しちゃうなんて。私は結構遠くにいるのに、ブラックベアーの形をした物体がそこにいるだけで足が硬直して動けなくなってるよ。まだまだ鍛錬が足りないな……。


「キララ様もいつかトラウマを克服できる日が来るといいですね。その時は私が高度8888メートルの景色をお見せしますよ」


――はは……。そうなったら新しいトラウマを植え付けられそう。


 私は苦笑いをしてベスパの冗談を受け流す。


――それじゃあベスパ、ブラットディア達を随時、魔石の方に送っていくから。食べつくすように命令しておいて。


「了解です!」


 私は地面に『転移魔法陣』を展開し、ブラットディアを呼ぶ。


――ブラットディアの皆、この魔法陣から各魔石に移動させるから、100匹ずつ飛び込んで。


 私はブラットディア達にお願いすると、どこからともなく黒い物体がディアと近しい速度で集まり、100匹ずつ『転移魔法陣』に次々に飛び込んでいく。


「今回は空から落ちてこないでよ……」


 私は先ほどの黒い雨を二度と見たくないので、そこはかとなくお願いしておく。


 今、倒したブラックベアーは四頭。残り六頭だ。


――残りの六頭の内、四頭は女騎士の四人が確実に倒せるはず。その後、残りの二頭は倒せばいい。あの巨大なブラックベアーがここに到着するまでに決着をつけないといけない。時間制限付きだけど、今のところまだ余裕がありそう。ベスパ、巨大なブラックベアーがドリミア教会に到着するまであと何分か分かる?


「残り10分くらいかと思われます。ただ、巨大なブラックベアーが走り出した場合、2分で到着すると予想します」


――最悪2分で終わらせなくちゃいけないのか……。それはさすがに無理だな。


「今のところは大丈夫です。冒険者の方々が死に物狂いで止めようとしてくれていますから」


――できればあと15分は欲しいところ。人質の救出もまだだし、それよか、まだ教会前のブラックベアーすら倒せていないんだし……。時間と人手が足りないよ。今の私は皆のお荷物なのが悔しい。


「キララ様の使う爆撃は人が多い所ではあまり役に立ちませんからね」


――そうなんだよね。これだけ人がいると大きな爆発を起こせないから私にできるのなんて、指示を出すくらい。私ももう少し戦えたらいいんだけど……。魔法しか使えないからブラックベアーもどきには攻撃が通じないんだよな。


「キララ様は女王のように君臨しているだけでいいんですよ。別に誰もキララ様に期待していませんから。あ、これはいい意味でですよ」


――まぁ、10歳児の私に期待されても困るんだけどね。


 私はベスパと会話しながら、戦況の把握をしていた。


「キララちゃん! 倒せたよ!」


「はい!」


 ロミアさんは二頭目のブラックベアーもどきを倒し、魔石を露出させていた。


 私はビー達ですぐさま抜き取り、同じ工程で燃やして倒す。


 トーチさん、マイアさん、フレイさんの三人もほぼ同時に二頭目のブラックベアーもどきを倒した。


 私は同じ工程を繰り返して黒い塊を燃やして倒す。


「はぁ、はぁ、はぁ……。さっき魔力を大量に使ったから疲れるのが速いな……」


「『転移魔法陣』は魔力を結構消費するみたいですね。キララ様は二枚の『転移魔法陣』を展開されていますが、上空では私が八枚展開させましたので『転移魔法陣』十枚分の魔力を消費したのと同じ状態になりますね」


――『転移魔法陣』は一枚でどれくらいの魔力を使うの?


「『ファイア』十発分くらいです」


――なるほど……。私は百発の『ファイア』を撃ち込んだのと同じ疲労を感じているのか。でも『ファイア』を百発分って、魔力を酷使した後の私でもそんなに一杯放てるの?


「キララ様の魔力回復速度はそれだけ速いのですよ。加えて私達ビーとブラットディアが空気中から集めた魔力もキララ様に送られますので計算するのも面倒なほど速く魔力が溜まっていきます」


――まぁ、魔力が溜まりやすいのはありがたいんだけどね。枯渇するたびに頭痛がするのは困りものだよ。


 だが、私はベスパと話している最中に頭の頭痛が治っているのに気づく。


「さすがに早すぎる気もするけどな……」


 私は掌を広げて『ファイア』を浮かび上がらせる。


 それを見ていると魔力が私の中に戻ってきているのを感じた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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