『女王の輝き(クイーンラビンス)』
「ん……。何で握ってるの?」
「え、握ってほしいんじゃないのか?」
「違うわ! 何でこの状況で握手しないといけないの」
「まぁ、そうだよな。でも、お前の手ってこんなに小さかったんだな」
「そりゃ、子供だからね。手が小さいのは当たり前でしょ」
「そうだけどさ。今の俺は、この手に守られてると思うと情けないなと思ってよ」
「別に気にしなくていいんじゃない。守られてればいいと思うけど」
「だけどさ、男として情けないだろ」
「なら強くなればいいでしょ。剣でも魔法でも、強くなる方法ならいくらでもあると思うけど」
「そうだけど……。俺のスキル、戦うためのスキルじゃないし……」
「スキルに頼らなければいいだけだよ」
――私はまるっきり頼ってるけど。でも、スキルを貰う前から鍛錬はしてたし、別に使えるものを最大限使っているだけだからいいよね。
「スキルがあるやつと無い奴では強さが全く違うんだぞ。凡人じゃ、才能のあるやつに勝てないだろ」
「勝ち負けとか関係ないから。レイニーが守りたいのは子供達でしょ。子供達を守りきったらそれで勝ちなんだから。今のレイニーはただ逃げているだけ。剣と魔法なら練習すればそこそこ上手くなれる。そこそこ上手く成れば剣と魔法が全く分からない子にも教えてあげられるでしょ。子供たちに教えれば、自分で身を守れる知識を手に入れられる。辛い世の中でも抵抗できる。まぁ、何が言いたいかと言うとレイニーはさっさと動き出せってこと」
「うぅ……。その通りで返す言葉もない……。でもよ、誰に教わったらいいんだ?」
「はぁ。仕方ないから、今度、魔法でも教えてあげる」
「本当か!」
「まぁ、7日に1度くらいだけど」
「それでもいい。魔法が使えれば、少しでも働きやすくなるぞ!」
「根気が必要だから。逃げ出さないようにね」
「もちろんだ。どんなにつらくても耐えて見せるぜ!」
「言ったね。取り消せないよ、今の言葉」
「あ……。え、えっとぉ……お手柔らかに」
「私、手加減苦手なんだよねー」
「うぐ……」
レイニーは固まる。
「まぁ、魔法をおしえられるのは今日を生き残れたらだけど」
私達は、ドリミア教会に到着した。
「で、でかい……」
「そうだな……」
ドリミア教会の周りには礎盤がなく、柱身は緩やかに膨らみ、簡素な柱頭をもつ白い柱が沢山並んでいる。
それに囲まれるようにして巨大で真っ白なドリミア教会が立っていた。
騎士達は未だに柱の奥に進めていない。
「はぁあああああ!!」
『ドガッッツ!!』
『グラアアアアアアア』
「くっ!! 何でこんなに凹んでるのに死なないの!!」
女騎士のロミアさんが大きな斧をブラックベアーもどきの頭上に叩き込んでいる。
私達が教会に到着したとき、男性騎士達は既にボロボロだった。
対して、柱の周りにいるブラックベアーもどき達は未だ無傷、数は領主邸と同じく10頭。
そいつらが柱の周りを守っていた。
騎士達で立っているのは私の魔力を浴びたせいで体が光っている女騎士の4人のみ。
他の人たちは疲労困憊で立ち上がれないみたいだ。
ロミアさんはブラックベアーもどきの頭を蹴りつけ、跳躍した後、空中を舞う。
「くっ……」
『ズシャン』
ロミアさんは地面に着地して大きな斧を叩きつけて立ち上がる。
私だけレクーから降りる。
「レクーとレイニーは地下水路までの道に何か障害物が落ちていないか見てきて。もし動かせそうもないものが邪魔していたら、別の経路を探して」
「わ、分かりました」
「俺にこのバートンを預けてもいいのかよ」
「この場でレクーを乗りこなせそうなのは、レイニーしかいないでしょ。私にはまだやることがあるから、レイニーにしか頼めないの」
「分かったよ。しかたねえな。それじゃあ、ちょっくら見てくる!」
「お願い」
「そんじゃいくぞ、キララのバートン」
「僕の名前はレクティタです。あだ名はレクーですよ」
「そうか。じゃあ、レクー行くぞ!」
「分かりました」
レクーとレイニーは地下水路のある方向に駆けていった。
「よし、これで避難経路を確保できる。私は、あの化け物たちを倒さないと」
私は一番近くにいたロミアさんのもとに駆けつけた。
「ロミアさん! ブラックベアーの魔石を露出させてください。そうすれば私が倒します!」
「え、キララちゃん。どうしてここにいるの? 領主邸の方に行ったんじゃなかったの?」
「領主邸の方のブラックベアーもどきは全部倒しました。ただ、領主は止められませんでした」
「キララちゃん、あの化け物を倒したのか。あいつら、どんな攻撃をしてもすぐ再生してくるんだ。魔石に描かれている魔法陣が関係していると思うんだが、何を試しても上手くいかなくて困っていたんだよ」
トーチさんが私達に駆け寄ってきた。
ロミアさんとトーチさんは他の騎士たちに比べてまだまだ動けそうな表情をしていた。
「2人とも、結構戦ってると思うんですけど、まだ動けるんですね」
「そうなの。この光を纏ってから全然疲れないんだよ。まだほとんど光の量が変わってないから、全然動けちゃう」
「ああ、キララちゃんの魔力が私達の体力の替わりに消費されているみたいだ。おまけに力まで増している。これはいったい何の魔法なんだ?」
「いや……、そう言われましても……」
――ただ、練り込んだ魔力を降り注がせただけなんだよな。特段凄い魔法じゃなくただの魔力なんです。何て言っても説得力がない。
「それだけキララ様の魔力が膨大なんですよ」
――ついさっき魔力を全部使っちゃったし、また倒れても困るから、ここにいる人全員に同じことは出来ないよね。
「そうですね。あれは小規模だからできた荒業ですから。これだけ範囲が広がっていると難しいかと思われます」
――じゃあ、残っている4人に頑張ってもらわないとダメだね。
「そのようです。ですが、彼女らは中々優秀な様ですよ。キララ様の魔力がほとんど減っていませんから、攻撃を上手くかわしているようですね」
――攻撃を受けると魔力が減るの?
「おそらく。動く時よりも攻撃を受けた時の方が体の負担が大きいのですよ」
――なるほど。私の魔力がちょっとした予備体力になってるのね。
「それに加えて『身体強化』『疲労回復』などの効果も少なからず付与されているようですね」
――何か、色々とつきすぎて中途半端になってない?
「いえ、どれも高水準だと思われますよ。ライトさんが一種類の強化魔法を使った場合はさすがに勝てませんが、並大抵の魔法使いの強化魔法くらいになら勝てるかと思います」
――いろんな効果が着いてるのに?
「はい。名付けて『女王の輝き(クイーンラビンス)』どうですか、なかなかカッコいい名前ですよね」
――変な名前つけないでよ。
「いいじゃないですか。女王様が与えた輝きが騎士を強くする魔法なんて、すばらしい魔法じゃないですか」
――ロミアさんたちは私の騎士じゃないよ。どっちかと言うと、ベスパ達が私の騎士じゃん。
「まぁ、私達はキララ様の魔力ですから魔力を使うときは輝くんですけどね」
――魔力を使うと光るのはだれしも共通なのかな。
「そうですね、光る強さは魔力の純度で変わると思いますよ。ただ、スキルを使うときは、ほぼ光りますね」
――じゃあ、何でベスパはスキルなのに、魔力を使うときも光っているの?
「分かりやすいからですね。別に光らないようにも出来ますよ」
――自分で光るか光らないか変えられるんだ。
私はベスパに話しかけられ、意識が完全にベスパの方に行っていた。
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