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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
全くいらない”蜂と仲良くなれる”スキル『虫使い「ビー」』を貰いました。 ~10歳偏~
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高そうな服を着た冒険者

 ――おい! 爺、どこだ! 爺! 私の方からきてやったんだ! 顔をさっさと見せやがれ!


 真っ黒なバートンは村を間違えていることに気づかず、山を超えた別の村を走り回っていた。


「う……うわ! ど、どこのバートンだ! それにしてもデカすぎだろ! 皆、家に避難するんだ!」


 村の男が真っ黒なバートンに気づき、声を上げる。


「冒険者に連絡を!」


「は、はい!」


 ――ち! 人間どもが、ちょこまかと……。あの爺、私をここまで待たせるなんて。許せねえ……。ぜってえ蹴飛ばしてやる。


 数刻たち、真っ黒なバートンは広い牧場を見つけ、考えをまとめる為に柵を飛び越えて中にいる他の動物たちをはじき出し、思いっきり走る。


「あのバートン、いったい何をしているんだ……」


「とりあえず今のところは村を襲う様子はなさそうだ……。今の内に早く冒険者を」


「近くの街にいる冒険者が向かっていると伝書鳩が届きました」


「そうか、頼む……。早く来てくれ、いったいいつ暴れ出すかわからん」

 村長が冒険者の要請を出し、数時間経ったころ。


「冒険者が到着しました」


 村長の所に冒険者がやってきた。


「チわ~す! それで、暴れているバートンがいるって聞いてきたんすけど、どこにいるんっすか?」


「おお、冒険者殿、来てくださったんですね!」


「バートンくらい私にかかれば、ちょちょいのちょいですよ! 任せておいてください!」


 高そうな靴、高そうなマント、高そうな服、高そうな剣、その姿を見て村長はこの冒険者なら大丈夫だと確信した。だが……。


「あのバートンなのですが……」


 真っ黒なバートンは村の牧場を乗っ取り、意気揚々と走っている。


「え……、あれはバートン何すか?」


 冒険者は目を丸くし、苦笑いを浮かべる。


「はい。確かにデカいですが。形からしてバートンかと」


 冒険者は明らかに動揺していた。


「なるほど、なるほど! バートンであるなら余裕で倒すことが出来ますね。ではちょっと行ってきます」


「よろしくお願いします」


 村長は頭を深々と下げる。


 ――いやいや……。あの大きさのバートンを倒すとか初心者の俺じゃ普通無理だろ。だってデカすぎじゃん。俺のお高級な服が汚れたらどうするんだ……。まぁ、適当にあしらって撤退するか。


 冒険者は柵を飛び越え、牧場の中に入る。


 ――うわ……。なんだこれ、この場の空気が変わったような……。こ、ここは戦場か? 肌が震えるんだが……。


 冒険者にのしかかる重圧、その場だけ空気の圧力が変わっているかのようなそんな感覚が男を襲う。


 ――足が重い? どういうことだ。ただ牧場に入っただけだぞ。


「ブロロロル……」

(何だ、人間! 私の邪魔をするのか……)


 真っ黒なバートンは冒険者を威圧する。だが、冒険者は、バートンがただ鳴いているようにしか聞こえない。


 ――近くで見るとさらにデカいな……。どうやって退出しようか。


「ブロロロロロ……」

(こう敵対する人間を見ると……昔を思い出すな。私の背中にはいつもあの爺がいたな……。ち! めんどくせぇ、こんな時に頭の中で出てこなくていいんだよ。現実に姿を現しやがれ!)


 真っ黒なバートンは頭を振り、前方にいる冒険者に視線を向ける。


「ブロロロルロ……」

(人間、爺がどこにいるか知らないか?)


「何鳴いてやがる……。ここは逃げるために牽制をするか。『ウォーターショット!』」


 冒険者は手の平を広げ、詠唱を言うと手もとに難解な円形の文様を顕現した。詠唱と共に放った魔法はバートンの足もとに当たり、地面を抉る。


「ブロロロロッツ!」

(この人間、魔法を使うのか……。面白れぇ私の血が騒ぐ、遊んでやろうじゃねえか!)


 真っ黒なバートンは魔法に臆せず、一度旋回し、冒険者から離れる。


「どうしたんだ……。いや考えるよりも今は逃げよう……」


 冒険者が柵に向って移動すると、真っ黒なバートンは冒険者に向って全力で走る。


 バートンの走った地面は抉れ、ボコボコになっていく。真っ黒なバートンの後方に土煙が舞いその姿はまるでブラックベアーのようだった。


「待て待て待て……。そんな勢いでぶつかってきたら、死んじゃう、死んじゃうって!」

 森で山菜を摘んでいる親子はあまりにも異様な光景を……見た。


「ねえ! お母さん! なんか黒い球が飛んでるよ! すごい、凄い!」


 少年は空を見上げながら叫ぶ。


「何言ってるの? え……」


 母親はそれを見るや否や、持っている山菜を捨て息子を抱え走り出した。


「何あれ……。ビーの群れなの……。それにしても多すぎる……。どういうこと! 数十匹程度ならファイアで燃やせるけど、あんな数……ありえないわ!」

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