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体調の悪い領主

「はぁ、さてと。またお面を着けなければならないのか。部屋の中じゃ、ビー達の『光学迷彩』が使えないし、顔は知られたくないから、お面を着けるしかないよな」


「キララ様がビー達を身に纏えばどこでも『光学迷彩』が使えますよ」


「絶対に嫌。想像しただけで、怖気が走るもん。やっても気絶して真面に動けないよ」


「そうですか。ビー達を身に纏うのが嫌なら潔くこのお面を着けてください」


「分かったよ。着ければいいんでしょ」


 私は黒いお面をベスパから渡され、顔に着ける。


 お面は私の顔にぴったりとはまり、ゴムや紐が無くてもずり落ちてこない。


 言わば、化粧水パックのように、肌にぴったりと着き、眼以外が覆われている状態。


 お面は水で濡れているわけではなく、しっとりとしたゴムの材質に近い。


 それなのに口と鼻が覆われていても息ができる。


 訳が分からないほど快適なお面だった。


「さ、領主邸の中に入るよ。ベスパ、領主までの最短経路を示して。ディアたちは領主邸の中にある魔造ウトサを食べつくしてきて」


「了解!」


「分かりました!!」


 私はブローチに擬態しているディアを地面におろす。


 領主邸の周りにいたブラットディア達がすぐさま現れ、入口から堂々と入っていった。


 領主邸の外観はとんでもなく豪華で、貴族と言われても信じてしまうほどの家だった。


 白と金が基調の色で西欧さながらの横に長い家。


 入口は一か所しかないのに、なぜここまで大きいのかと疑問に思う。


 屋上の一部は壊れており、ブラックベアーが座っていたところだと分かった。


「さ、ベスパ。私達も行くよ」


「了解です」


 私は全く警戒せずに領主邸の入り口から中に入った。


 理由は簡単、ディアたちが領主邸を移動する際に設置されている罠を全て見つけてくれているのだ。


 その情報をベスパに送ってもらい、私は安全な道を移動できる。


「この方法さ、ダンジョンとかでも使えるのかな?」


「使えるんじゃないですか。私は空を飛ぶ方が得意なので地面にある罠は見つけるのに時間がかかってしまいます。ですが、ディアたちなら即座に見つけられるでしょうね。ディア達に魔法の罠は全く利きませんから」


「あぁ、そうか。魔法でも罠が作れるんだった。『魔法耐性』のあるディアたちなら魔法の罠も気にすることなく移動できるのか。でも、物理攻撃の罠だと死んじゃうよね」


「物理攻撃の罠はその場に存在している場合が多いはずです。加えて、人間や大型の動物、魔物用の罠が多いそうなのでブラットディア達にはほぼ当たらないですよ」


「何だろう……。ディア達が有能すぎて、ベスパ達がかすんじゃってるよ。私のスキル名前変えた方がいいんじゃない? 『虫使い「ブラットディア」』に改名しようか」


「ちょっと! キララ様。今、私が結構気にしているところをずかずかと突かないでくださいよ。私達も頑張ってるんですから!」


 ベスパは四肢を振り回しながら、弁解してきた。


「知ってるよ。ちょっとからかっただけ。ベスパ達がいなかったらここまで来れてないし、頼りにしてるんだから。そんな、なよなよしてないでもっと自信もちなよ」


「き、キララ様~~!」


 ベスパは私の方に飛んできた。


 なので、私は迷わず……。


『ファイア』


「ぎゃわーー! キララ様に燃やされるのうれ……」


――何だろう。今、ベスパが燃やされて凄く嬉しそうに見えたんだけど……。もしかしてそっちの方向に行っちゃったの。


 私はベスパが復活するまで五秒ほどその場で立ち止まる。


「ふぅ~。よく燃えました~。さ、キララ様、先を急ぎましょう! 領主ごとき、私達が捻り潰してやりますよ!」


 ベスパは復活し、大口をたたいて領主までの道を再度飛ぶ。


 ベスパの表情は悲し気な顔から、とてもすっきりした顔に変わっていた。


 どうやら私はベスパの悩みごと、体を燃やしてしまったらしい。


「大丈夫かな……」


 私は陽気なベスパに不安感を募らせながら、後を追う。


 ☆☆☆☆


「はぁ、はぁ、はぁ……。ベスパ、まだ着かないの?」


「はい、もう少し先の部屋にいます。何かの作業をしているみたいです」


 私は領主邸の窓から見える大きな時計台を見る。


 領主邸に入ってから10分ほど経っており、その間、私はずっと走っていた。


 それでも領主のいる部屋にたどり着かない。


――この屋敷、広すぎるよ……。


 その後、私は5分ほど走り、領主がいそうな扉をようやく見つけた。


「キララ様、ここです」


 ベスパは芸術家が作ったのではないかと思うほど、他の扉とは逸脱した扉の前で止まる。


――ご丁寧に綺麗な扉をつけてくれてるんだね。普通に開けて大丈夫なの?


「はい。他の者に待ち伏せされている形跡はありません」


――そう。なら、普通に入っちゃうよ。


 私は扉の取っ手を握り、押し込んだ。


「し、失礼します……」


「キララ様、何で普通に挨拶しているんですか?」


――いや、どうやって入ったらいいか分からなくて。ん……、あの人が領主かな?


「ブツブツブツブツブツ……」


 私が入った部屋は領主の書斎だった。


 だが、足の踏み場もないくらい書類が散らばっている。


 私の視界に映っている痩せこけた男性は、何かを呟きながら大量の書類に何かを書きこんでいる。


 その姿は机に噛り付く漫画家のようで、眼の下のクマが真っ黒だった。


 もう何日寝ていないのか分からない。


 どう見ても体調が悪そうだ。


「あの、少し話をしてもいいですか?」


 私は意を決して領主に近づいていく。


「ブツブツブツブツブツ……」


「あの、聞いてますか?」


「ブツブツブツブツブツ……」


――だめだ、私に反応すらしない。もっと裏で糸を引いているような悪い人だと思ってたのに、何でこんなに弱ってるの。


 私はさらに近づいて領主の体を揺すってみようと思った。


 その時。


「ブツブツブツブツブツ……。うわぁぁぁぁぁぁぁああ!!」


『グラアアアアアアア!!』


「な! い、いきなり何!」


 領主が叫ぶと、外にいる巨大なブラックベアーも叫んだ。


 寸分のずれもなく同時に叫んでおり、関係がないとはさすがに思えなかった。


「ふぐぐ……、うぐうぐぐ……、あ、あがガガガ……」


 領主はいきなり頭を抱えて机に突っ伏した。


 口から泡まで吐き、白目をむいている。


「お前は誰だ……」


「え……?」


「お前は誰だと聞いている」


 領主の若い声ではなく、お爺さんの声が気絶しているはずの領主の口から出て来た。


――ベスパ、なにこれ。何かの魔法、それともスキル?


「そのどちらかであるのは間違いないでしょう。名前を聞いてくると言うことは話し手がキララ様を認識していると言うことになります。相手が誰かも分からない状況でキララ様の情報を話すのは危険すぎます。ここは出来る限り情報を出さないように喋った方がいいですね」


――そうだよね。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


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毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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