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黒い雨

――よし。まずはディア一匹で試すから。成功したら他のブラットディア達も上空に一気に送るよ。


「はい。私が死ななければ、仲間のディアたちも死にませんからね」


――そう言うこと。それじゃあ行ってらっしゃい。


「行ってきます!!」


 私はディアの頭上に『転移魔法陣』を展開した。


 そのまま『転移魔法陣』に魔力を流すと神々しい輝きを放ち、上空の魔法陣も光り出す。


 ディアは私の掌から飛び跳ね、翅をバタバタとはためかせながら苦しそうに飛ぶ。


 何とか魔法陣にたどり着き、ディアは姿を消した。


 ディアを転移させたにも拘わらず、ビー達を中心にしている複数の『転移魔法陣』は未だに展開されている。


――さっき『ファイア』を送った時は燃えて無くなったのに、ディアは問題ないんだ。


 まだベスパからの連絡がないので、ディアが魔法陣を通り抜けていない可能性もある。


 最悪、ディアが魔法陣の中で死んだのかもしれない。


 そう思っていた矢先。


「キララ様。ディアが無事到着しました。どうやら成功のようです」


――ほんと! よかった。ディアの様子はどう?


「魔法陣から飛び出した瞬間、魔石に食いつき始めました。貪食にもほどがありますね」


――はは……。さっきもいっぱい食べてたのにね。いったいあの小さな体のどこに入ってるんだろう。


「ブラットディア達は食べ物をすぐ魔力に変換して体に溜めるんですよ。少し食べれば何も食べなくても余裕で1ヶ月過ごせるみたいですから。逆に食べすぎると凄い繁殖するらしいです。1日で1匹から100匹ほどまで増えるらしいですよ」


「うぇ、気持ち悪い……」


「キララ女王様!! ひどい!!」


――あ、ごめん……。思わず言葉に出してた。それじゃあ、他の魔石の所にもブラットディア達を送るよ。


「お願いします!!」


 私はレクーから一度降りる。


――地面に『転移魔法陣』を展開して。ブラットディア達を呼ぶ。その後、上に送ればいいか。


 私は地面に直径2メートルほどの魔法陣を展開した。


 すでに魔力を流しているので神々しい光を放っており、ブラットディア達が飛び込こめば魔石に転移されるはずだ。


「よし、ブラットディア達集まれ!」


『ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……」


 黒い地面が私の方に寄ってくる。


「うげぇ、集まりすぎ! 魔石は8個だけだから80匹くらいいれば十分だよ。お腹空いてない個体以外は解散!」


 私が解散と言ってもブラットディア達は私の前から全く離れない。


 どうやら皆おなかが空いているみたいだ。


 騎士団の地下には相当な量の魔造ウトサがあったのに、あれを食べてもまだお腹が空いているというのか。


「あ、キララ女王様。私達は常にお腹が空いていますので食欲は無限大ですよ!!」


「それを早く言って。それじゃあ、前列から八列目までのブラットディア以外は解散!」


『ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……』


 ブラットディア達は行儀よく10匹で一列並んでおり、それがずらっと並んでいたが、八列目以降は即座にいなくなった。


「よし、それじゃあ君たちは、その魔法陣に飛び込んで行ってね」


『ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……』


 ブラットディア達は『転移魔法陣』に躊躇なく飛び込んでいく。


――ベスパ、ちゃんと送れたかな?


「はい、8個の魔石に10匹ずつ送り込まれました」


――ベスパとディアは魔石が無くなったら降りてきてね。


「了解です」


「分かりました!!」


――よし。これで、あの巨大なブラックベアーが二頭以上増えなくなった。冒険者さん達も続々と領主邸に入っていってるし、何とかなるかも……。


 私はレクーの背中に再度乗り、負傷者を探しては下で待機しているビー達かブラットディア達にお願いしてリーズさんの病院に運んでもらった。


「もう、誰もいないかな。それなら、私達も領主邸の庭に……」


「ぐあぁああああ!」


『ドガッツ!!』


「へ……」


 私の目の端が空中を吹き飛ぶ人を捉えた。


 その人はレンガの壁に突っ込み、意識を失っている。


――いまのはさっきまで戦っていた冒険者さんだ。早く手当てしないと。


「きゃああああ!!」


『ドガッツ!!』


 またしても私の目の端が人を捉えた。


 その人もレンガの壁に突っ込み、意識を失った。


――魔法使いさんまで。あんな遠くから何メートル吹き飛ばされてきたの。ベスパがいない今、私が戦いの中に行っても何もできない。なら、戦っている人たちの手当てくらいしないと。


 私は怪我した人たちの容体を見て空から運ぶか地面から運ぶかを判断する。


「こっちの冒険者さんは頭から血を流してるし、意識も無いからビー達に運んでもらおう」


 私はビー達にお願いして冒険者さんを病院に運んでもらった。


 その後、すぐさま魔法使いさんの方に向う。


「こっちの魔法使いさんはまだ意識が少しあるから、地面からでも大丈夫」


 私はブラットディアにお願いした。


「きゃああああああああ!!!」


 魔法使いさんはブラックベアーに吹き飛ばされたよりも恐怖に満ちた声を上げていた。


 まぁ、分からなくもない。自分を運んでいるのがゴキブリなんだから……。


☆☆☆☆


 ベスパとディアが戻ってこないまま、数分が過ぎた。


 冒険者さん達も頑張っているがブラックベアーに傷を与えられないので攻めあぐねている。


 決定打が見つからないまま、冒険者さん達の体力だけが削られていた。


 今のところ半数で戦い、半数は休む形を取っている。


 でも、それだとブラックベアーの攻撃を捌ききれず、敵が暴れるたびに冒険者さん達が数人吹き飛ばされていた。


――やっぱり、巨大なブラックベアーを倒すのは難しそう。それなら、領主を見つけて止めさせるしかない。


「ベスパ。まだなの……」


「キララ様。ただいま戻りました」


「ベスパ、珍しく遅かったね」


「いえ……私が遅かったのではなく、ディアが遅かったのです」


 ベスパはディアを睨みつける。


「すみませんキララ女王様、魔石を食べるのに手間取ってしまいました。魔石の再生速度が思ったよりも早く、10匹では足りなかったので増殖して魔石を食しました」


「え……増やした。空中で?」


「はい。もうすぐ皆返ってきますよ」


「ん?」


 私は空を見上げた。


 珍しい、こんな天気は初めてだ。


 もしこの世界に天気予報があるのだとしたら、きっと最悪の天気と言えるだろう。


「まさか、ブラットディアの雨が降るなんて。ははは……」


 私の視線の先には黒い斑点がいくつも落ちてきていた。


「傘はない、どうしよう。このままいくと私はブラットディア塗れになってしまう。どうにかして……」


「『転移魔法陣』展開」


 ベスパは私の頭上に肩幅程度の魔法陣を展開した。


「え? ベスパ。ああ、なるほど……」


 私は『転移魔法陣』に魔力を流した。


 すると、魔法陣は神々しい光を放ち、発動する。


 そこに落ちてきたブラットディア達は別の『転移魔法陣』に転送されるため、魔法陣の下にいる私にはブラットディアが掛からなかった。


「危なかったぁ。もう、ディア、増やしすぎだよ」


「すみません。あれくらい増やさないと魔石をすべて完食しきれませんでした」


「まぁ、それなら仕方ないんだけどさ。せめて遠い別の場所に飛んでいくとかさ、配慮してほしかったかな」


「そうでしたね。次から気を付けます」


「いいですか、ディア。私達はキララ様が快適に過ごせるようお仕えしているのです。キララ様を不快にさせるなど、あってはならないのですよ!」


「はい、その通りです」


――何か、ベスパが先輩ずらしてるよ。そもそもベスパ達がいるだけで私の生活は常に不快なんだよな。


 仲間内で話している間にも、多くの冒険者さん達が次々に吹き飛ばされていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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