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Aランク冒険者の増援

 私の場所からでは、たとえベスパの最高速度でブラックベアーのもとにたどり着いたとしても『ファイア』の速度が間に合わない。


 ただ、無駄だと分かっていても、何かをやらないとトラスさんが確実に潰される。


 それだけは避けなければと思った。


 私はゼロコンマ数秒の間で思考を回す。


――ベスパ! 全速力で本物のブラックベアーのもとに移動。加えて『転移魔法陣』を展開!


「了解!!」


 ベスパは光の筋となり、私の頬を掠って移動した。


 ベスパの速さはさすがに異常で、私の眼ではもう追えない。


 ビーがあの速さで動けるわけないのだが、魔力のおかげか光に限りなく近かった。


 ベスパ自体は私のスキルなのでどれだけ速く移動しようとも、どこにいるのかは何となく感知できる。


 どうやら今は、落ちてくるブラックベアーの目の前にいるらしい。


 私の指先には『ファイア』の魔法陣と『転移』の魔法陣が連なっており、ベスパの背中に繋がっている。


――これなら、射程距離が1000メートルまでならゼロ秒でベスパに当てられる。


 こんな秘策を一瞬で考え付くあたり、私の頭は結構優秀なのではないだろうか。


『ファイア!』


『ドッゴオオオオオオオオ!!』


「くっつ!」


 私の詠唱とほぼ同時に爆発音と爆風が一帯に吹き抜ける。


 私の長めの髪は靡き、先端は熱波でチリチリと焼け焦げた。


『グラアアアアアアア!!』


『ズシャン……』


 ブラックベアーの声と共に巨体が地面に落ちる音が聞こえる。


「ど、どうなったの……」


 領主邸の広い庭に黒煙が立ち昇り、私の位置からではトラスさん達の様子が分からない。


「キララ様。ブラックベアーの体を吹き飛ばし、落下位置を変えることに成功しました。トラスさんは無事です」


 ベスパはすぐに復活し、私の頭上に移動する。


――そう、よかった……。



「ただ、偽物の巨大ブラックベアーの攻撃でトラスさんの体の骨が数本骨折し、脚の骨に罅が入ってしまいました。このままだと二頭の相手は難しいかと思われます」


――そうだよね。でも、小さい方も残ってるのにここでトラスさんが離脱なんて……。


「今、トラスさんが戦闘不能になると巨大なブラックベアーの注意を引き寄せていられなくなります。こちら側に攻撃が集中するかもしれません」


――ぐぬぬ……。どうすればいいの。圧倒的に人手が足りないよ。死なないブラックベアーの倒し方がせっかく分かったのに。


 「どうしよう……。どうしよう……」


 私は頭を抱えてしまう。


「キララちゃん、大丈夫にゃ。まだ時間は稼げそうにゃ」


 トラスさんは黒煙の中から出てきた。


 ただ、頭や腕、脚などから血を流しており、私でも戦えないと分かるほど怪我をしていた。


「大丈夫じゃないですよ! ひどい怪我じゃないですか!」


「ニャーはちょっと休むのにゃ。その間は今、来た4人に任せるのにゃ」


「4人?」


「そうにゃ。今、バルディアギルドが出せるAランク冒険者の4人にゃ……」


「え、それって」


 トラスさんの後ろから、見覚えのある男の顔が2人。


 初見の顏の似ている可愛らしい少女が2人、現れる。


「トラスさん、無茶しすぎですよ。ここからは僕達が変わりますから」


「そうだぜ。あんたはもう年、がはッツ!」


 この土壇場に現れたのはノルドさんとブレイクさんだった。


「今から戦闘不能にするのにゃ……。ブレイク……」


 トラスさんは血みどろの拳をブレイクさんの顎に食らわせる。


 だが、その反動で前屈みに倒れ込んだ。


「って、トラスさんもうふらふらじゃないですか。メル、回復魔法を掛けてあげて」


 倒れ込んだトラスさんをノルドさんが受け止めた。


「はい。ノルド様」


 ノルドさんの傍らにいた緑髪の少女がトラスさんに触れる。


「『回復(ヒール)』」


「ラル、トラスさんとメルを安全な病院へ連れて行って」


「了解です。ノルド様」


 赤髪の少女がトラスさんと緑髪の少女に触れる。


「『転移(ワープ)』」


 赤髪の少女が言葉を発した瞬間に3人は消えた。


「さ、これでトラスさんに休んでもらって、私達であの化け物二頭を引き付けますよ。ブレイク」


「は! 俺に指図するな。俺は俺のやりたいようにする」


「はぁ……、せっかく難しい依頼をやり遂げたというのに、全く成長しませんね」


「うるせえ。今回の依頼、俺、ほとんどいらなかったじゃねえか。それじゃ、依頼泥棒だぜ。面倒だが、金を貰うためにはここで稼がねえとな!!」


「その自覚があるのなら十分です!!」


「ノルド。お前は、魔力が漏れてる方。俺は本物を受け持つ。生誕祭の時見たく、油断して死にかけるなよ!!」


「あんな思いはもうしたくないですから。油断なんてしませんよ!!」


『グラアアアアアアア!!』

『グラアアアアアアア!!』


 巨大な二頭のブラックベアーが咆哮を放つと、黒煙が吹き飛び2人の髪が靡く。


 ブレイクさんは赤みがかった服の裾が、ノルドさんは青みがかった服の裾が、風圧ではためいていた。


「よし! 行くぞ、ノルド!」

「ええ! 行きましょう。ブレイク!」


『身体強化!』

『身体強化!』


 ブレイクさんとノルドさんは互いに『身体強化』を使い、全身から淡い光の魔力を放出する。


 その状態で剣を引き抜き、巨大なブラックベアーに向っていった。


――まさか、あの2人が丁度来るなんて。


「どうやら、トラスさんはあの2人が既に近くに来ていると、においで分かっていたようですね」


――そうなんだ。でも、ほんとにギリギリの到着だったよ。もう少し遅れてたら、トラスさんが危なかった。


「そうですね。でも、キララ様の攻撃のおかげでトラスさんは助かったんですよ」


――え、そうなの? てっきりあの2人が助けたのかと思った。


「あの2人はキララ様がトラスさんを助けたあと、黒煙の中に飛び込んだと思われます。なので、キララ様の機転が利かなかったらトラスさんは今頃、ぺちゃんこでしたよ」


――ほんとに危なかったんだね。ベスパが凄く速く動けなかったら助けられなかった。


「キララ様の機転のおかげですよ。まさか『ファイア』の飛ぶ間をなくしてしまうんですから」


――いや、あれは……ライトの作った『転移魔法陣』が優秀過ぎるだけだよ。


「ほんとそうですよね。私達の弱点の一つであった、距離と時間の問題を解決してしまいました」


――でも、危ないよ、この魔法。1000メートルの範囲ならゼロ秒で爆発させられるとか不意打ちに最適じゃん。ベスパは姿も消せるし、見えない爆弾が『ファイア』で爆発するなんて……。危なくて多用できないよ。


「ただ、魔法陣は消せないので浮かび上がってしまうのが弱点ですね。私が消えても後ろにある『転移魔法陣』は発動時に見えてしまいます」


――でも、ほぼゼロ秒で爆発だよ。気づいた時には爆炎で見えないよ。


「確かに、それもそうですね」


 私達は凄く危険な魔法を開発してしまった。


 人に使うのは避けなければ。


 でも、凄く心強い魔法にも感じる。


「さ、ベスパ! 私達は目の前にいる小型のブラックベアーたちを片付けるよ。そのあと、巨大な方に増援に行かないと」


「了解です。今、ドルトさんを起こしていますのですぐ、来ると思います」


「起こす? どうやって起こしているの」


「他のビー達が針でめった刺しにしています。刺激で起きるでしょう」


――す、すごーく嫌な起こされ方だ……。私のトラウマ全開放だよ。


 ドルトさんは、案外早く戻ってきた。


「す、すまない。どうやら気絶していたみたいだ」


「ドルトさん。あの魔物の倒し方が分かりました。体内から魔石を取り除いたあと、火属性魔法を当てれば倒せます。冒険者さん達には既に伝えてあるので、ドルトさんも増援お願いします」


「当たり前だ。気絶して伸びていたぶん、きっちりと働くぜ!」


 ドルトさんはブラックベアーもどきの前に立ちはだかり、攻撃を繰り出していく。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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これからもどうぞよろしくお願いします。

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