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黒い塊の弱点

「さてと……。あの黒い塊を無くせば、抜き取った魔石からは黒い塊を作り出せないはず。魔石を取り除いた時点でブラックベアーの形状を保てなくなってるし、私の推測はあたってるのかな」


 私は黒い塊を遠目で観察する。


「キララ嬢。俺があの物体に攻撃を仕掛ける。その間に何か掴んでくれ。俺は頭より体を使う冒険者だからな。指示や命令は出来るが突破策は考えられねえ。よろしく頼むぜ」


 ドルトさんは大斧を肩に担ぎ、黒い塊に向っていく。


「ちょ、ちょっと。ドルトさん、危ないですよ。まだ何してくるか分からないんですから!」


「それを、見極めるのがキララ嬢だろ。そう言うの結構得意そうだしな」


「私、戦った経験何て殆どないですよ!」


「経験と才能は違うからな。キララ嬢は天才肌ってやつなんじゃねえの。色々と頭が回る様だし、俺らよりも先を行ってる感じだ」


「わ、私はただ……」


――人生経験の少しある、元アイドルなだけで……天才なんかなくて、ですね。本当の天才は新しい魔法を作ったり無詠唱で放ったり、魔法やスキルを使わず木の剣で鉄を切っちゃう人を言うんですよ。でもアイドル時代、仕事上仕方なく人を観察してきた私は観察眼を無駄に養って来た。その観察眼が上手く使えるかどうかは分からないけど、突破口らしい何かを得られれば……。


 私はドルトさんと黒い塊に視線を向ける。


 ドルトさんは黒い塊の前に立った。


「さっきは、ものすごい威勢だったのに、今はスライムみたいになっちまってどうしたんだよ!」


 ドルトさんは大斧を黒い塊に真上から切りつける。


『ゴーーーーン!』


「硬ったああああ!!」


 ゲル状の物体からは想像もできないほどの強度で、塊に傷一つ付いていなかった。


 黒い塊は何事もなかったように、黒い触手を伸ばし続けている。


――あれ、何でドルトさんの攻撃には防衛しなかったんだろう。自分が硬いと知っているから、打撃や斬撃には耐えられると踏んでいるのかな。


「ただ打ち込んでも意味ないか! これならどうだ! きさまを真っ二つにした魔法だ!『ギガントアックス』」


 ドルトさんが大斧に魔力を込めた瞬間。


『ズリュルルルルル!』


「な! 今度は反応しやがった!」


 黒い塊からドルトさんの大斧と全く同じ大きさの斧が出現し、ぶつかり合う。


「ぐううううう! おらああああ!」


 ドルトさんの『ギガントアックス』と黒い塊から出ている大きな斧がぶつかり合い、火花を散らしている。


 ドルトさんは大声を放ち、ムッキムキの腕や広い額に太い血管が浮き上がる程、力を入れているが一向に押し込めない。


 しまいには……。


『ズリュルルルルル!』


「な!」


 塊の側部から黒い触手が生え、鞭のようにしなりながらドルトさんの腹部に攻撃を加える。


「がはっ!」


『ボガンンッ!』


 ドルトさんは木棒(バット)で打たれた野球ボールのように弾き飛び、直線の軌道を描きながらレンガの壁に衝突。


 そのまま、何枚もの壁を破壊しながら転がり、100メートルほど飛ばされた辺りで停止した。


「ドルトさん!! 大丈夫ですか!!」


 ドルトさんはピクリとも動かない。


――ありがとうございます。ドルトさん、今の攻防であの黒い塊が魔力に反応すると確認できました。やっぱり、何かしらの魔法に弱いから、魔力に反応するようになってるんだ。さっき私が魔法を放とうとした時もそう。ドルトさんが魔力を使って攻撃を強化した時だってあの黒い塊は反応した。ブラックベアーの時と違って『物理攻撃耐性』が付いて、何かしらの魔法が弱点なんだ。


「でも、その弱点が何の魔法なのか分からない。私の使える魔法の属性は火、風、水、雷、土、氷くらい。どれも最強と言うには程遠い、初級魔法しか使えないけど、黒い塊の弱点さえ分かれば、他の人でも倒せるはず。なら! 片っ端から、放てばいいだけ! 『ファイ……』」


『ズリュルルルル!』


「ひゃ!」


『ドサッ』


 私が詠唱を言おうとした瞬間、黒い触手が私の顔面目掛けて伸びてきた。


 私はまたしても体の反射に助けられ、レクーの背中から落ちる。


「痛てて……」


 私はすぐさま立ち上がってレクーの上に再度乗り、黒い塊から距離をとった。


「魔法を発動しようとした瞬間に攻撃されて、発動できなくされる。物理攻撃で倒せれば一番いいけど、ドルトさんの攻撃でも傷一つ付かなかった。そうなると、相当硬いよね。なら魔法を当てるしかないけど、どこから魔法を放てば反応しなくなるのか分からない」


 私が魔法を確実に当てられる射程距離は15メートル。


 ベスパの目印があると、100メートルほど。


 今はベスパがいないため、15メートルほどの距離からしか魔法を放てない。


 でも、今いた場所が多分15メートルくらいの距離。


 ベスパがいない今、あの黒い塊に私が魔法を当てるのは不可能。


「なら……、ベスパが戻るまで身を隠すしかない」


 私は200メートルほど黒い塊から距離を取った。


 未だに黒い触手は天高く伸び続けており、ベスパを追っているみたいだ。


「ベスパ。どう、黒い触手は追ってきてる?」


「はい! 未だにしつこくおって来ています! それにもう距離が100メートルほどしかありません! このままだと追いつかれてしまいます! キララ様、魔法で迎撃をお願いします!」


「いや! どう考えても無理だよ! 今、ベスパはどの位の高さにいるの?」


「今、私は上空8700メートル付近にいます」


「いや……、そんな高い所に魔法なんて絶対にとどかないよ! 私の射程距離の87倍あるじゃん!」


「いや、とどきます。お忘れですかキララ様。魔法は魔力からできているんですよ!」


「え……。そりゃそうでしょ、魔法なんだから」


「なら、あの魔法陣が使えるはずです。私は魔法を発動させられませんが魔法陣なら展開できます。キララ様が魔法陣の展開に慣れるまで、距離の間はビー達で補いますから、魔法の準備をお願いします」


「ちょっと待って、もしかして……。『転移魔法陣』を使おうとしてるの?」


「そうです。私の後方に『転移魔法陣』を展開し、キララ様の魔法を上空までとどけてください」


「た、確かに、ライトの言ってた理論上は出来るけど。上手くいくかどうか……」


「やってみないと分かりません」


「ま、そうだよね。何でもやってみないと分からないよね。よし! それじゃあ、ベスパ、やるよ!」


「はい! 今から、ビーを1000メートルおきに配置します!」


 遥か上空で、流れ星のような光が放たれた。


 すると、街の至る所から8本の彗星のような光の軌跡を描きながら私からベスパの間に直列する。


「『転移魔法陣』展開!」


 ベスパが叫ぶと、私の目の前に『ファイア』が丁度入る程度の『転移魔法陣』が展開された。


 私は目を少し細めて空の方を見ると、薄く光り輝く魔法陣がいくつも見えた。


 おそらく他のビー達も光輝き魔法陣の核になっているのだろう。


「それじゃあ、行くよ!」


「はい! おねがいします! もう距離が10メートルもありません!」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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