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女騎士の武装

 私はディアを掌に載せて地面に優しく下す。


 ディアは一直線に大きな袋のもとに走って行く。


 私が走るより何倍も速く、きっと空中を飛ぶベスパと同じくらいだろう。


「きゃ! ブラットディアが出た! むりむりむり~ 私この虫だけは無理なの~!」


 ディアはロミアさんの足もとを一瞬で通り抜ける。


 あの速さを目で追えるロミアさんも凄いが、黒の残像を残すほど早く動けるディアも虫とは思えない。


――ベスパ、ディアの動きがなんか速くなってない?


「そりゃそうですよ。キララ様の魔力を受け取っているんですから。能力が高まるのは必然です」


――それにしても飛躍しすぎな、気がするんだけど。


「キララ様の一番傍にいましたからね。あれだけ近くにいれば、さぞかし魔力を吸っているでしょう。その影響で数段階、能力が上がっているようです」


――私の魔力を流したり吸ったりしただけで能力が上がるって、おかしいでしょ。私の魔力どうなってるの?


「そうですね。私達にとっては活力の源でしょうか。なくても生きていけますが、与えられると最大限の力を発揮し、時には最大を超えた能力を開花させます」


――ちょっと危ない薬みたいじゃん。なんかやだな……。


 ディアが袋の中に飛び込み、甘い匂いと魔力を共に放った。


 その瞬間……。


「ぎゃあああ~~~~! なにこれ、なにこれ!」


 地下に隠れていたブラットディア達が現れ、床を黒く塗りつぶしていく。


 ロミアさんだけでなく、他の3人も失神気味になりながら、その場になんとか立っていた。


 今、目の前に倒れたら、黒光りする虫が這いまわっている床に飛び込むことになる。


 きっとそれを何としてでも阻止したかったのだろう。


 4人は足を踏ん張り、耐える。


 ロミアさんは目をギュッと瞑り、耳まで塞いでいた。


「皆さん、安心してください。特に何もしてきませんから」


「それは分かるけど、さすがにこの数は気持ち悪いよ~~!」


――確かに、床が黒くなるほどブラットディアがうじゃうじゃ沸いてきたら、ぞっとするよね。


 黒光りする虫は次々に袋に飛び込んでいく。


「それじゃあ、皆さん、私達は外に向いましょう。ブラットディア達は踏まれないように避けてくれますから、そのまま歩いてきてもらって大丈夫ですよ」


「無理無理無理!! この状況で動くなんて無理~!!」


 ロミアさんは、その場で硬直し、恐怖からか全く動けなくなっていた。


 ロミアさん以外の3人は靴の裏で床をじりじりと擦るように移動している。


――仕方ない。ベスパ、ロミアさんを持ち上げてきて。そのまま外に移動させるよ。


「了解です」


 ベスパはブラットディア達に命令し終わり、ロミアさんの頭上で静止して襟首を掴みながら浮上した。


「うわぁ。う、浮いてる。これってキララちゃんのスキルだよね」


 ロミアさんは浮き上がり際に体をバタバタと動かしていた。


「ロミアさん、じっとしてください。暴れたら、ブラットディア達の上に落ちますからね」


「は、はい! 絶対に動きません!」


 ロミアさんは固まり、息しているのを疑うほど静止した。


 私達は間の細い階段を進み、建物の中に戻る。


 その場にブラットディア達はいなくなっており、地下に移動しきったらしい。


――ベスパ、ロミアさんを下してもいいよ。


「了解」


 空中に浮いていたベスパはロミアさんを建物の床におろした。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。し、死ぬかと思った。あんなの、一生のトラウマだよ……。私、ブラットディアを見るたびにあの光景を思い出すんだろうな」


――ごめんなさい、ロミアさん。あなたの心に深い傷を負わせてしまった。トラウマの克服は難しいかもしれないけど、強く生きてください。


 私もトラウマの辛さを知っているので、共感できる部分がある。


 加えて、トラウマは中々消し去れないのも知っているので、申し訳なく思ってしまった。


「うわぁ……空が薄暗いですね。なんか嫌な感じです」


 マイアさんは建物の中から窓の外を覗いていた。


「ほんとだな。空気も重たい気がする」


 トーチさんは冷静になっていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。お腹が空いたわ。昨日の夜から何も食べてないから、今にでも倒れてしまいそう」


 マイアさん、トーチさん、フレイさんも、ロミアさんの後に無事到着し、街の雰囲気の違いを感じ取っていた。


「トーチさん、ここから正門に出るためにはどこが一番の近道ですか?」


「キララちゃん、こっちだ」


 トーチさんは廊下を走り始める。


 フレイさんとマイアさんも何とかついていく。


「ちょ、待ってよ! 3人とも!」


 ロミアさんだけをその場に残し、他の3人は全速力で走って行く。


「ロミア、さっさと立ち上がれ! 私達だってお前をいつも助けてやれるとは限らないんだぞ!」


 トーチさんは大きな声でロミアさんに声をかけた。


「うぅ、わ、分かったよ。立って、動けばいいんでしょ! それくらい私にもできるよ!」


 ロミアさんは震える足を何度も強く殴り、刺激したあと足裏を地面に付け、一気に立ち上がった。


「た、立てた! 立てたよ!」


 ロミアさんは初めて立てた子供のように悦び、叫んでいた。


 そのまま、半泣きになりながら私達の後をついてくる。


 トーチさんは廊下を少し走ったあと、ある一室の前で止まった。


「私達はここで着替えていく。キララちゃんはここで少し待っていてくれ」


「分かりました」


 薄暗い部屋に輝く4人が入っていく。


 入口の隙間から、銀色の光沢を放っている鎧が見えた。


 私は部屋の名前を確認すると更鎧室と書いてある。


「ここは鎧を着替えるための部屋なんだ。だから入口が少し広めなのかな」


 私は時間を数えている訳じゃなかったが1分足らずでトーチさん達は出てきた。


「よし、外に行こうかキララちゃん」


 鎧を着たトーチさんはもう男性だった……。


 トーチさんは胸がもともとあまりないので、鎧の胸当て部分に膨らみがほとんどなかった。


――すごく親近感を覚えてしまう。


 トーチさんは高めの身長に短めの青髪、中性的な顔立ちからして、女性だと全く思えない。


 右手に長槍を持っているのを考えると、きっと使う武器は長槍でなのだろう。凄く扱いが難しそうだ。


「トーチ、ちょっと早いですよ。もう少し余裕を持ちましょう」


 マイアさんは4人の中で一番女性らしい。


 長いゆるふわの金髪に整った容姿、西洋人形のような可憐さだった。


 胸も大きく、鎧の胸当ては膨れている。


 顔や体つきのせいか鎧が全くにあっていない。


 ただ、銀色の剣を腰に掛けており、それを見ると全体がまとまっていた。


「2人とも、鎧と武器の点検はしたの? 何が起こるか分からないんだから、出来る範囲でやっておきなさいよ」


 フレイさんの鎧姿は凛としていた。


 どこかの王城の姫だと言われても信じてしまう。


 長い赤髪が魔力によってキラキラと輝いている。


 ぼん、きゅ、ぼんの完璧な体型にそって作られたかと思うほど鎧を着こなしていた。


 それこそ、ゲームに出てくる戦姫のようだ。


 身長ほどの大剣を持っているため、一番強そうに見える。


「皆、早すぎるよ~ 私、まだ半分も着てないのに~」


 ロミアさんは下半身にだけ鎧を着ており、上半身はまだ着替えておらず、ブラジャーのまま出てきた。


 控えめな身長の割に豊満な胸は体型にあっていない小さ目のブラジャーに押し付けられ、苦しそうだった。


 ロミアさんは大急ぎで両手に抱えている上半身の鎧を着こみ、安定させる。


 加えて、床に置いてあった大きな斧を両手に持ち、顔を上げた。


「皆さん、カッコイイです。前見た時は鎧姿じゃなかったので、半信半疑だったんですけど、本当に騎士なんですね」


 私が褒めると4人は照れくさそうに目線を反らす。


「キララちゃん、子供用の鎧もあるけど、着てく?」


 トーチさんが尋ねて来た。


「ん~~。やっぱり鎧って重いですよね」


「そうだな、子供用でも結構重たい」


「私、力がそんなにないので、重たい鎧を着るのは止めておきます」


「だが、鎖帷子くらいは着ておいた方がいいかもしれない。何があるか分からないしな」


「鎖帷子ですか……、確かにそうですね。素肌よりかは安心できます」


「ちょっと待ってて、今、取って来るわ」


 フレイさんが部屋の中に入り、子供用の鎖帷子を持ってきた。


「はい、1人で着れる?」


「大丈夫です」


 私はフレイさんから鎖帷子を受け取る。


――あ……これも結構重い。でも、着れない重さじゃないな。


 私は鎖帷子を着る。


 体が少し重くなったが耐久力は上がった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


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毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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