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騎士団の結界

『グアアアアアアアアアア!!』


 ブラックベアーはレンガの山から這い出てきた。


「なんで、あれでも死なないの!」


「キララちゃん、さっさと逃げるのにゃ! こいつはニャーに任せるにゃ!」


「は、はい! トラスさんも早く逃げてください!」


「たった1頭のブラックベアーに負けるほど衰えてないのにゃ。元Sランク冒険者にゃめるにゃ!」


――いや、そうだったの。トラスさんもSランク冒険者だったんだ。だからあんなに強いのか。って感心してる場合じゃない。私は早く逃げて他の作戦を考えないと。


「こ、ここはお任せします! 私は大回りで騎士団に向います!」


「分かったにゃ! こいつをぶっ倒したらたらニャーも向かうのにゃ。言っておくにゃ。絶対にドリミア教会には行っちゃダメにゃ。あそこは教会なんかじゃなかったのにゃ」


「それって、どういう意味ですか! トラスさん!」


「あそこは、こいつらの……っつ!」


『グラアアアアアアア!!!!』


 ブラックベアーの四肢は既に変な方向に折れている。


 きっと内臓もほとんど破裂しているだろう。


 顔も半分以上潰れている。それなのにまだ動いていた。


 ただ動いているだけじゃない、音をゴキゴキと鳴らしながら四肢の方向が正常に戻っていき、普通に移動し始めるのだ。


「キララちゃん、早く行くのにゃ。そこにいたらニャーが全力で戦えないのにゃ!」


 トラスさんは背中越しに叫ぶ。


「わ、分かりました! レクー行こう!」


「はい!」


――ベスパ、トラスさんに何かあったとき、すぐ運べるようにブラットディア達と数匹のビーを配備させておいて!


「了解!」


 私はトラスさんにブラックベアーの駆除を頼む。


――今の私達は他にやる仕事があるから、まだ死ぬわけにはいかない。


 私達はぐるっと大回りして騎士団にまで向かう。


『ドガガガガガガガガ!!』


『ドガッ! バギッ! グシャッ!』


 トラスさんたちのいた中央街から結構離れているのに打撃音や破壊音が私の耳に聞こえてきていた。


「あんな化け物がいるなんて……。今、この街はどうなってるの。騎士団の人達に速く動いてもらわないと。こんな時こそ、騎士団の出番じゃないのかよ、全く!」


「キララ様、落ちついてください。彼らにも彼らなりの理由があるみたいです」


 ベスパは私の右斜め頭上を飛びながら話しかけてきた。


「え、街が危険な状態なのに動かない理由って何? 領主の息が掛かってるからって動かないでいい状況じゃないでしょ」


「その通りなのですが、噂によると彼らの家族が人質に捕らわれているみたいです。動こうにも動けない状況なのだと思います」


「な……。家族が人質。それってほんとなの?」


「真実かどうか分からないんです。情報の質が悪くてすみません。私達が人質を探しても見つからないのです。ただ……未だ探索していない場所が二カ所あります。ドリミア教会と領主邸です。この二カ所場所が有力候補なのですが、結界が張ってあり通常のビーでは中に入り込めません。私も、キララ様と距離が離れるとその分、繋がりが薄れて魔力の壁をすり抜けられないのです」


「つまり……。私が近くに行けば、すり抜けられるって言いたいんだね」


「はい。その通りです」


「思ったんだけど、ディアたちじゃダメなの?」


「ブラットディア達にもお願いしたのですが、魔力の壁を越えた瞬間、通信ができなくなるんです。どうやら阻害されているみたいですね。結界が他の魔力を防ぐ役割を担っているみたいです」


「なるほど……。まずは騎士団に行かないと真相が分からない。動けないのなら、話を聞いて本当はどうしたいのか騎士団の意見を貰わないと私達も行動できない」


「はい。この情報が真実なのか嘘なのかを確かめるためにも実際に出向いたほうがいいかと思います」


「それじゃあ、行き先は変わらず騎士団でいいね」


「はい。それが得策かと考えます」


「レクー、このまま騎士団に向うよ。疲れてないよね?」


「もちろんです。これくらいで疲れるような僕じゃありません!」


 レクーは鼻息を荒くし、余裕の表情を見せる。


「頼もしいね。よし、全速力で騎士団に向うよ!」


「了解です!」「はい!」


 私達はベスパ達に整備された道路を走り、騎士団に向う。


「はぁ、はぁはぁ……。騎士団にやっと着いた。でも、誰もいないように見えるけど……本当にいるの?」


 私は騎士団の中を柵の外から見ていた。


 グラウンドには人影がなく、建物内に設置されている魔石の照明も光っていない。


 武器がぶつかり合う音や話し声も聞こえてこず、ドアを開け閉めするような生活音すら聞こえてこない。


 私が見た限り、本当に無人地だった。


 私は正門に回り、誰か立っていないか確認するも、やはりいない。


「門番もいないなんて。騎士たちはどこに行ったの……。あ~もう、考えてるだけじゃ分からない。こうなったら、実際に中を調べるしかないよね。ベスパ、ここも結界が張られているの?」


「そのようです。ですから、私が中を見てきます。キララ様は私に魔力を送り続けてください。大きな魔力の壁に、キララ様の魔力で道を作っていただければ私がその中を通って騎士団の内部を調べられるはずです」


「分かった。すぐ始めよう。時間が惜しいから、一瞬で調べてきて」


「了解です。数匹のビーと共に騎士団の内部を探索してまいります。結界内では意思疎通が難しくなるかもしれないのでキララ様の身に何かあればすぐさまお逃げください。私はいくら死んでも構わない魔力体ですから」


「うん、知ってる。もちろん、ベスパに構わず逃げるよ」


「……そこはもっと、悲しがってくれてもいいんじゃ」


 ベスパは暗い顔で落ち込む。


「愚痴を言ってないで早く行きなさい。時間がないって言ってるでしょ!」


「りょ、了解しました!」


 ベスパは勢いよく飛んで行く。その後に続いて数匹のビーが追いかける。


 私はベスパとの魔力のつながりを強くする。


 長く太い紐を意識してベスパに向って魔力を押し流す。


『ズジジジジ!!』


 ベスパが結界に衝突したのか、私の魔力が一気に持っていかれる。


 騎士団の周りに張られている結界は弾力のあるゴムボールのように沈み込み、ベスパが思いっきり体当たりしているのが遠くからでも感じ取れる。


 ベスパは結界を貫通できず、魔力を無駄に消費している感覚があったので、私は作戦を変えた。


――ベスパ、今からめちゃくちゃ魔力を細くして勢いよく送るから、ベスパも出来るだけ小さくなってくれる。魔力体が大きな面でぶつかっているから貫通できないと思う。弾力のあるものにはとんがった細い物が有効なんだよ。


「なるほど、了解しました!」


 ベスパは肉眼では見えなくなるほど小さくなり、本当に針の先っぽほどの大きさになった。


 私は魔力を流す道を限りなく細くしてベスパに向って勢いよく魔力を流す。


『ぶすっ!!』


 何かが刺さる音が聞こえた。


 今、私の周りで音がするのはベスパと結界の衝突音くらいだと考える。


 どうやら、ベスパは結界を貫通できたらしい。


 私は魔力の道を一気に広げてベスパが通常の魔力体でも優に動ける大きさにした。


――ベスパ、どうかな。これくらいでいい?


「は……い……じゅ……ぶ……ん……」


――あまりにも声がガザガザだな。昔のラジオみたい……。それよりひどいか。ここからは忍耐の勝負だな。私の魔力量が無くなるのが先か、ベスパが騎士団の中を調べて戻ってくるのが先か……。ふぐぐ……!


 私とベスパを繋いでる魔力の道が結界に押しつぶされそうになるのを必死にこらえ、力強く魔力を押し流す。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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