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魔造ウトサの対処法

「分かりません。7日前に街に来た時はもう少し時間があると思ってたんですけど……」


「キララ様。シグマさんも衰弱しています。病院に連れて行った方がよろしいかと思います」


ベスパは私の頭上で浮遊しており、シグマさんの様態を教えてくれた。


――そうだね。魔力を吸い取ったといっても体力は回復してないだろうから、リーズさんに一度見てもらわないと安心できない。


「トラスさん。シグマさんを病院に連れていきましょう。死ぬ心配はありませんが合併症を引き起こすかもしれません」


「合併症……ってなんなのにゃ?」


トラスさんは首をかしげて、猫口を作る。


「1つの病気にかかっているとき、それと関連して起こる別の病症のことを言います。今、シグマさんは凄く衰弱しているので別の病気を引き起こしやすい状態なんです。体力を早く回復してあげないと別の病気に掛かってしまいます」


「なるほどなのにゃ! 分かったにゃ。私がシグマさんを病院にまで連れていくにゃ!」


 トラスさんは大柄なシグマさんを優に担ぎ上げ、床が抉れるほどの脚力で走り去った。


 すでにトラスさんの姿はなく、ギルドには誰もいなくなる。


「は、速い……。脚の動きどうなってるの」


「どうやら、獣人族は人よりも身体能力が高いようですね。その力は人が『身体強化』をした時と同等だと思われます」


「へぇ……すごい。私は『身体強化』できないから分からないけど。ライトを見ている限り相当力が上がっているよね。前は大岩を拳で砕いてたし、その前は巨木を引っこ抜いてた」


「そうですね、推定15倍ほどに上がっていると思われます。でもライトさんの『身体強化』ですから、通常の『身体強化』はもっと低い倍率だと思います」


「確かにライトを基準にしたらだめだよね」


 私が呆気にとられていたころ……。


「キララ女王様! はぁ、はぁ、はぁ、やっと追いつきました!!」


「あ、ディア、お帰り」


 ディアはギルドの床を走りながら私のもとにやってくる。


 私は手の甲を下にして床に付けた。


 ディアは掌の上に乗り、私は胸の高さに持ち上げる。


「大通りで、荷台やバートン車に埋もれていた人は全て救出しました!」


「ご苦労様。えっと魔力を食べた後、体調の方は大丈夫?」


「はい! 食べた魔力は体内で全て浄化し、キララ女王様のもとに送りました!」


「え、そうなの? 嫌な魔力を受け取った気が全くしないんだけど」


「キララ様はディアから魔力を確かに受け取っています。それでいて、どちらにも影響がないというのは実質、作戦成功ですね」


 ベスパは緊張がほぐれたような表情を浮かべる。


「つまり、ディアは瘴気を食べれるの?」


「そのようです。キララ様に瘴気の対抗策が出来ましたね。あの巨大なブラックベアーはさすがに無理かもしれませんが、小さ目のアンデッドならディアたちが食べ、魔力をキララ様に送れば瘴気を消せます。実質、瘴気を食べて魔力を回復できるようになりました」


「へぇ、凄いね。聖水とか奇跡とか使わずにアンデッドを倒せるのは大きな収穫だよ。聖水は1本金貨50枚するみたいだから、一個人が買えるような金額じゃない。それを私はゼロ円で駆除できる。加えて、私の魔力にもできるなんて……。また、お金の匂いがしてきた」


「キララ様、顔が悪い顏になっていますよ。笑顔を忘れてます」


「あ、ごめんごめん。でも、ディアは本当にすごいね。ブラックベアーでも、瘴気は効いちゃうのに、ディアには瘴気が効かないなんて……」


「いえ! 瘴気は効きますよ! ただ、耐性があるため他の生き物より浸食されにくいみたいです。体内に入れば、どうってことはないんですけど空気に含まれている瘴気は私達でも浸食しすいみたいで、死にます」


「でも、今回は空気に含まれている瘴気じゃなくて、物質化している魔力に含まれている瘴気だから全く問題ないよね」


「はい! 大丈夫だと思います!」


「よ~し! そうと分かったら、こっちのものだよ! ディア。今の個体数は?」


「私、含めて10匹です」


「ベスパ。この街にいるブラットディアの個体数は?」


「ブラットディアは無数に増えるので、推測できません。少なくとも1憶匹以上はいるかと思われます」


「うん、全く想像できないね。ディア、片っ端からブラットディアを集めてきて。私達は魔造ウトサを確保しに行くから」


「分かりました!!」


 私はディアを床におろす。


 ディアはギルドの床を物凄い速さでさがさと移動し、数回体を発光させる。


「うわうわ……、いっぱい出てきた。やっぱりぞっとするよ」


 ギルドの隙間という隙間から多数のブラットディアが現れた。

 既に50匹を超えているのではないかと思う。

 ディアを先頭にピラミッド型を形成し、ギルドの扉から外に出て行った。


「よし。これで、魔造ウトサがいっぱい見つかっても、ブラットディア達に食べてもらえば大丈夫。ベスパ……」


 私は命令しようとした瞬間にベスパは喋り始めた。


「はい、分かっています。魔造ウトサの位置ですよね。すでに調べてあります」


「仕事が速くて助かるよ」


「お褒めいただき、ありがとうございます。では、ご報告します。すでにいくつもの魔造ウトサが見つかっており、ショウさんのお店を含んだお菓子屋さん6店。騎士団にも貯蔵されていますね。特に大量に貯蔵されていると考えられるのが領主亭とドリミア教会です。中に入ることが出来ないので推測でしかありませんが、7日前よりは増えていると思われます」


「はぁ、結局このお面を使わないといけないのか。そうだ、レクー用にも作ってくれる。レクーは目立つから顔を覚えられたらお終いだよ」


 私は懐からビーの顔を模した黒いお面を取り出す。


「そうですね。了解しました、すぐ作ってまいります!」


 ベスパはギルドの入り口から外に飛び出していった。

 私はギルドの中に取り残される。


「さて、今から元凶のお菓子作製を止めさせて、これ以上被害を拡大させないようにしないといけないよね。それにはまず、お菓子屋さんに向かわないといけない」


 私は無人のギルドから出る。


「キララさん! ベスパさんに何かよく分からない物を着けられました!」


「ちょっと、レクーさん。まだうまく着けられてないんですから、動かないでください」


 レクーの顔にベスパが張り付き、振り回されている。


「ベスパはレクーの顔を隠すためのお面を作ってくれたんだよ。だから、レクーはおとなしく、お面を着けてもらってね」


「僕の顔を隠す……。なぜですか?」


「まぁ、バレない方が都合はいいんだよ。私もお面を着けるし、お揃いだね」


 レクーはおとなしくなり、ベスパにお面を着けてもらった。

 本当に競走馬のような見た目になり、とてもよく似合っている。


「うん、いい感じだよ。これで誰にも覚えられずに済む。犯罪まがいな行いをするから顔を覚えられないようにしないと、あとで捕まるかもしれないからね」


「でも犯罪はしちゃいけないんじゃ……」


「そうだね。でも、ドリミア教会の人達はさすがにやり過ぎた。これ以上は見過ごせない。私達は、この現状を治すために行動する。それだけの話だよ」


「死傷者は今のところ出ていませんが、このまま行くと確実に出てきますね。これ以上依存症者を出さないためにお菓子屋さんに早く向いましょう」


ベスパはレクーの頭に乗り、お面が取れないか調整していた。


「うん、急ごう!」


私はレクーにまたがり、ショウ・ベリーズ以外のお菓子屋さんに向う。


――5店もあるんだから、一店一店を急がないと被害がどんどん拡大しちゃう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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