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糞の味がする魔力

「オリーザさん! 入りますよ! いいですね!」


私はオリーザさんの返答を待たずに、お店に入った。


「うぐっぅぐうげろろろろ……。はぁ、はぁ、はぁ……。じょ、嬢ちゃんか……。すまねえが、今日は体調不良で……うぐっぅぐうげろろろろろ」


「オリーザさん!!」


オリーザさんは真っ青な顔で床を這いながら移動していた。


床に嘔吐しているが固形物は無く、胃液と混ざった水分だけ。


酸性のすっぱい胃液臭が店内に籠っている。


オリーザさんは床を這っていた為、体のお腹側が嘔吐物塗れだったが、私は気にせず、肩を貸してトイレまで運んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。すまねえな、嬢ちゃん。まさか俺まで体調を崩しちまうとは思っていなかった……。体の頑丈さだけが自慢だったんだがな……。うぐっぅぐうげろろろろ」


「ドリミア教会が配っていたクッキーを食べたんですね」


「な……、よく分かったな。コロネがあまりにも上手そうに食べるから……、つい食っちまった」


「それじゃあ、コロネさんも同じ体調不良を起こしているんですね」


「ああ……、やせ細って今にも死んじまいそうだ……。おれもな、うぐっぅうろろろろ」


「そんな、コロネさんまで」


――ベスパ、オリーザさんとコロネさんの中にある悪質な魔力を吸い取って。


「了解です!」


ベスパはオリーザさんの首元にお尻の針を刺しこみ、淡く光り始める。


緑っぽい光がしだいに黒くなり、ベスパの体は瘴気を吸い取った時と同じ色になった。


「はぁはぁはぁ、この量は……人の体内に残っていたら致死量になりますね。コロネさんの方も今すぐ吸いだしに行きます」


「お願い」


ベスパは悪質な魔力に犯されているが、重そうな体を何とか飛ばし、お店の2階に向かう。


「大丈夫ですからね、オリーザさん。今、害悪な魔力を吸い出したので、体調はしだいによくなるはずです。コロネさんの方も心配しないでください。必ず助けますから」


「…………」


オリーザさんは気を失っており、私の声が聞こえているか分からなかった。


ただ、顔色は褐色が良くなってきていたので、きっと命に別状はないだろう。


ベスパが2階に向ってから、約5分後。


『べちゃっ!』


「え……ベスパ! ど、どうなってるの。ベスパ、返事して!」


ベスパは原形をほとんど留めておらず、瘴気に侵されてゲル状になっていた。


「き、キララ様……。何とか、吸い取れました……」


「どうしよう、このまま焼いたら瘴気の煙が生まれちゃう。でも、瘴気に侵された魔力をほって置けないし……」


「ディア……私を、食べてください」


「分かりました!! ベスパ様!! 食べればいいんですね!!」


「な、ディア。そうか、ディアには『魔法耐性』がある。でも、瘴気に侵されてるのに大丈夫なの?」


「分かりません!! ですが、食べてみれば分かります!!」


ディアは私の胸元から飛び出し、ゲル状のベスパに近づく。


「ではベスパ様、いただきます!!」


ディアはベスパのゲル化した体を食べていく。


実際は私の魔力を食べていると言ったほうが正しい。


それでも、私から見れば捕食する側とされる側に分かれており、とても痛々しかった。


ディアはほんの数10秒でゲル化した魔力を食べきってしまった。


ベスパは私の魔力から復活し、ディアの状態を見守る。


「ディア。大丈夫?」


私は心配になり、全く動かないディアに近づく。


「うぐぅぐぅぐぅぐぅぅぅ……」


ディアは震えだす。


「ディア! しっかりして!」


私はディアの様態がおかしくなったと思い、さらに近づいた。


「キララ様、危険です。ディアが襲ってくるかもしれません!」


ベスパは私の前に飛び出して、脚を止めさせる。


「でも、ディアが凄く苦しそうだよ。凄い震えているし、このままじゃ死んじゃうかもししれない」


「問題ありません。ディアは苦しいから震えている訳ではないようです」


「え……」


私はディアに視線を送ると、震えが止まっていた。


「うっまああああああああいいいいい!」


ディアはその場で飛び上がった。


回転しながら空中を飛んだあと、地面に着地し、私の方に走ってくる。


「こんな最悪な味は食べた覚えがありません!! 本当に糞の味がします!!」


ディアは私の掌の上に乗り、はきはきと喋る。


「ディ、ディア。体の方は大丈夫なの?」


「はい、今のところ問題ないようです!!」


「ベスパ、あの量の瘴気を食べたら普通、無事では済まないよね」


「他の生き物なら確実に死にますね。私に実体があれば、すぐアンデッド化してたでしょう。その量を食べてこれだけ元気なのは異常です」


ベスパも目を疑っているのか、ディアの周りをクルクルと飛び回っていた。


「そうだよね。えっと、ディア以外のブラットディアが食べたらどうなるんだろう」


「確かに試してみたいところですが、そんな時間はないようです。オリーザさんとコロネさんを病院に連れて行った方がよろしいかと思います。しだいに心拍が弱まっているので、このまま行くと衰弱死、してしまうかもしれません」


「そ、そうなの! それを速く言ってよ! 今すぐ病院に運んであげよう。ベスパ、2人を荷台に乗せて」


「了解です」


「ディアは瘴気を一滴も残さず床を綺麗にして。嘔吐物も食べられる?」


「もちろんです!! 私達に掛かれば食べられないものなどありません!! ありがたくいただきます!!」


私はディアに店内の掃除をさせ、ベスパにはオリーザさんとコロネさんを運ばせる。


私は荷台の前座席に座り、準備完了の合図を待った。


「キララ様、積み込み完了しました」


「キララ女王様、店内の汚物を食べきりました!!」


仕事を終えた二匹は私のもとに戻って来る。


「よし、それじゃあ、リーズさんの病院に運ぼう。レクー、お願い」


「はい!」


レクーは走り始める。


ただ、少し移動したところで、街の悲惨な姿を目の当たりにした。


「な、なにこれ……。バートン車が沢山転がってる。これじゃあ、うまく走れない」


病院まで向かう途中、いつも通っている大通りが多数のバートン車で塞がれていた。


「どう見ても事故だよね……。こんなにいっぱい、ぶつかって転がるなんて普通あり得ない」


「キララ様、街を徘徊しているビーからの伝達です。人間が操作するバートン車が衝突事故を多数起こしているもよう。注意力が散漫になっているのが原因のようです。お店に突っ込むと言った被害も拡大しているようなので注意してください」


「そんな。注意するもなにも道が塞がれてたら通れない……。ベスパ、この道を開けるのにどれくらいかかる?」


「それほど時間は掛かりません。ですが……この先も同じ状況が考えられます。それを全て開けながら進むと結構な時間が掛かるかと」


「それじゃあ、まずはオリーザさんとコロネさんを病院に連れて行かないといけないから、ビー達でリーズさんの病院に運んで。私達は、バートン車に巻き込まれて動けなくなっている人たちの人命の救助をしよう。ベスパ、怪我人をリーズさんの病院に随時運ぶから、そのつもりでお願い!」


「了解です! ではまず、お二人を運びます!」


ベスパはオリーザさんとコロネさんの上空を飛び、発光する。


すると、ビー達の群れが集まり黒い球となった。


2人は黒い球に包まれ、浮き上がる。


そのまま、リーズさんの病院がある方向に飛んで行った。


私はその間、耳と目を確実に塞ぐ。


「キララ様、もう大丈夫です」


「う、うん」


私はベスパの合図で、眼を開ける。


「よし。ディアと残りのブラットディアは、バートン車や瓦礫に挟まれて動けない人を探して」


「分かりました!!」


ディアは私の胸元から飛び出していき、私達が走るよりも速い動きで地面を移動する。


荷台に乗っていた10匹のブラットディア達もディアについてき、放射状に広がっていく。


ディア達はどんなに小さな穴からでも人がいそうな場所に潜り込み、怪我人を探していく。


「ベスパ達はディア達が怪我人を見つけしだい、救出して病院まで運んで」


「了解です!」


「私とレクーはギルドに行ってくる。冒険者さん達なら、クッキーをまだ食べてないかもしれないし、人命救助の手助けも頼みたいから!」


「はい! 私もすぐ向かいます」


私はレクーと荷台を繋げている縄を解く。


そのあと、レクーの背中に乗って体が安定するように脚に力を入れる。


「レクー、荷台の間をすり抜けていくよ。無理な場所は飛び越える。準備はいい!!」


私は少し前傾姿勢になる。


「もちろんです!!」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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