ベスパの友達、オメちゃん
昼食を終えた皆は集合し、30分ほどの休憩をとる。
昼食と合わせて約1時間の休み時間。
私は日の傾きで時間を測り、しっかりと休ませる。
そうしないとブラック企業まっしぐらだからね。
騎士団の人みたいに目の下にくまが出来るほど働かせたら、ブラック企業の仲間入り。
――7日に一度の休みも班に分けて取らせよう。そうすればお爺ちゃんの負担を減らせる。
私は30分間昼寝をした。
そうしないと体がもたない。
私は10歳児の体なのだ。
早朝に起きれば昼に活力は尽きる。
だから、活力を補充するために昼寝をする。
私は、ベスパを目覚まし時計の替わりにして建物の日陰で横たわり目を瞑る。
30分の昼寝をバカにしてはいけない。
たったこれだけで、午後を快活に動けるのだ。
睡眠が好きな私の欲求にも合っている。
「キララ様、30分経ちました。午後の仕事が始まります」
「うぅ~~ん、よく寝た~。よし、それじゃあ午後も仕事も頑張っていこうか」
お母さんはチーズを作る担当なので家にいる。
ベスパに頼んで作り終えたチーズを倉庫へ運んでもらう。
その間、私はレモネを栽培しに向かう。
子供たちの皆は朝と同様モークルの乳を搾り、ライトの『ファイア』と『クリア』で一瞬にして殺菌。
安全な牛乳に変えたあと牛乳パックと瓶に注いでいく。
出来るだけ在庫は増やしておきたい。
菌のいない状態で密閉されている牛乳であれば、1ヶ月は持つ。
これからも注文が増えていくとなると、在庫は多い方がいい。
たとえ作り過ぎて余ったとしても、元手はゼロなので赤字にはならない。
私達が午後の仕事を淡々とこなしていると夕方5時の鐘が鳴った。
どうも午後からの時間は早く過ぎていくようで、私は本当に午前中と同じ長さなのかと疑ってしまう。
「午後5時か、仕事は終わりだね」
私は子供たちにお疲れさまと言いながら、ビーの子が入った袋を手渡していく。
皆嬉しそうに受け取ってくれて、小走りで家まで帰っていく。
私は小腹に丁度いいビーの子を手渡したあと、残りの作業を行いに休憩所の裏へ向かった。
「さてと。このうん……を干して乾燥させて堆肥にしよう。この草も刈らないといけないし、地面も耕す。私1人じゃさすがに無理だから。ベスパ、連れてきてくれた?」
「はい、適任のお友達が向かってきていますよ」
「そうなの。その子に頼めば、地面を耕してくれたりする?」
「もちろんです。凄い食欲旺盛なのであっという間に耕してしまいます。土も元気になるので、キララ様の要望に応えられると思いますよ」
「へぇ~、いったいどんな虫なの?」
「虫ではないのですが、あ……丁度到着したみたいです」
「え……」
ゴゴゴゴッという地鳴りのような音が聞こえたあと、草だけの地面からピンク色の頭が出てきた。
「え、え、え……、いやデッカ……。キモイ……」
地面から這い出してきたのは超巨大なミミズ。
まだ地面に埋まっている部分があるため全長は分からない。
太さは電柱……いや、太い木の幹くらいある。
「この子がベスパの友達……。いや、ちょっとまって」
巨大なミミズが『敵意はないよ』と言いたいのか、私に頬ずりしてくる。
「キララ様。この子は『オリゴチャメタ』と言います。土や枯れ草、木などを食べる森の掃除役です」
「オリゴチャメタ……。それは、ビーって言うのと同じ、この大きな子をみんな総じてそう呼ぶの?」
「はい。そうです。私の本名はビーですが。キララ様にいただいたベスパと言う名を名乗っております。ですからこの子にも名前を付けてあげてください」
「そ、そうだね……。ん~」
――いや……。どう見ても巨大なミミズなんだよな。ミミちゃん。安直すぎるか。
「雄雌どっち?」
「両方です。そういう生き物なので」
「そう、雄雌同体ってやつか……。それじゃあ『オメ』で」
「何ですかその安直な名前……。キララ様には名前を付ける感覚がほんとに皆無ですね」
ベスパは呆れた顔をして、空中に浮遊している。
「それは否定しないけど。いいじゃん、オメで。それじゃあ、オメちゃん、これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いしますわ」
――ん? 男の声なのに、女の人っぽい喋り方。あ、雄雌同体の生き物だとこんな風に聞こえるんだ。それだったら、逆がよかったな……。女の声なのに男っぽい喋り方の方がまだよかった。オメちゃんは、おかまちゃんだったんだ。
「どうしたの、キララ様。私、仕事いっぱい頑張るから美味しいもの、いっぱいちょうだい」
オメちゃんはくねくねと動きながら喋る。ちょっと悍ましい。
「美味しいものって何? 果物とか」
「ベスパちゃん、あれ持ってきて」
「は~い」
オメちゃんがベスパにお願いすると、友達っぽい喋り方で返事し、どこかへ飛んで行く。
案の定ベスパはすぐ戻ってきた。
「キララ様、これです」
「え……、これって牛乳パック、それに牛乳瓶。こんなんでいいの?」
「ええ、これすっごく美味しいのよ。ベスパちゃん、投げてちょうだい」
「行きますよ、そりゃっと」
ベスパがオメちゃんに牛乳パックと瓶を投げると、オメちゃんのつるッとしていた頭が、グわっと開いて、無数の尖った歯が見えた。
オメちゃんは牛乳パックと瓶を上から覆いかぶさるように食べている。
――あぁぁぁ……。何、あの尖った歯の数。100や200じゃないよ。え、草木とかを主食にしているんじゃないの。そんな歯要らないでしょ。あと、あんなに口開く必要あった。私くらいなら飲み込まれそうなんだけど。
私はオメちゃんの悍ましい捕食場面を見て体が震える。
「う~ん、やっぱり美味しいわ。こんなに美味しいものが貰えちゃうなら、頑張って働かいないとね」
「よ、よろしくお願いします」
「キララ様、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。オメちゃんは滅多に人を襲いません。人や動物、魔物の死骸を食べたりしますが主に食べるのは草系なので」
「そうだよね。ベスパの友達だし、安全だよね」
「そうよ、キララ様。私はそんなに怖くないんだから」
「ごめんなさい。見かけで判断したら失礼でしたよね。改めてこれからよろしく、オメちゃん」
私はオメちゃんの胴体に抱き着く。
――ぷにぷにで滑らか……、ちょっと高級なウォータベッドみたいだ。
「それで、私は何をすれいいの?」
「オメちゃんにはここの敷地を耕してほしいの。草と土を食べて地面を軟らかくしてくれる。広さは……」
私は木の棒を拾い、地面に印をつけていく。
私の大きく開いた足幅で5歩ずつ、感覚としては5メートル四方にしたつもりだ。
「この中を一度耕してみて。オメちゃんには少し狭いかもしれないけど」
「そうね、この大きさなら。私の子供達でも十分そう。みんな出てきてちょうだい」
オメちゃんは頭で地面を叩くと、地面が所々持ち上がってきた。
すると、5匹くらいのオメちゃんに似ている個体が現れた。
ただ、大きさはオメちゃんと全く違い、手のひらに乗りそうなほど小さな個体だった。
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