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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
大口契約が決まって順調そのもの! ~でも、街の様子がやっぱりおかしい偏~
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おじさんの手伝い

「だ、ダメだ……。やっぱり朝よりも売れ行きがよくない」


「おじさん、へこんでいる場合じゃないですよ。いいですか、今この市場に沢山いるのは誰ですか?」


「え……、誰って人だろ」


「確かに人ですけど。どんな人ですか?」


「女性が多いな、それに私服だ」


「つまり……」


「家庭を持っている主婦の可能性が高い。夜食の為に買い物に来ているのか」


「その通りです。そこを突いて接客しましょう!」


「だが、どうやって接客したらいいんだ。俺には主婦がどうしたら買いたくなるのか、まったく分からん」


「はぁ……しかたないですね。私がお手本を見せてあげます」


「お手本……。嬢ちゃんがか?」


「はい。私、結構得意なんですよ。特に笑顔がね」


私は満面の笑みをおじさんに見せる。美少女の200万点の笑顔なら、どんな美女にも負けない。


――よし、笑顔の準備運動は完了した。干し肉の値段も覚えたし、使えそうな情報も他の奥様方のお喋りから拝借した。あとは元気よく、はきはきと伝えるだけ。ベスパ、準備しておいて、きっと忙しくなるよ。


「了解しました! 数匹のビーを向かわせます。『光学迷彩』を使用し、あたかもキララ様が魔法で浮かせているかのように繕いますね」


――それでよろしく。私の気が散らないていどの数にしてね。翅音を鳴らされると私、動けなくなっちゃうから。


「了解です!」


ベスパは露店の上空を8の字に飛ぶ。すると数匹のビーが集まり、露店上に待機した。


私は露店の前に立ち、身振り手振りを使いながら大きな声で呼びかける。


1人でも引っかかればこちらの勝ちだ。


――よ~し、やるぞ!


「魔物から作った干し肉はいりませんか~。高級なモークルの肉よりも断然安く買えますよ~。人によってはモークルの肉より美味しく感じる人もいるくらいです。小刻みに切ってスープに入れれば旨味がたっぷり出て、味を付ける必要はありません。高級なソウルやウトサを使う必要がなく、食卓を彩れます~。そのまま齧っても美味しく食べられますし、お子さんの小腹もみたしてくれます。お酒のお供にも最適です~。私のお父さんもいつも食べています。一度食べたら抜け出せなくなる美味しさです! きっとはまってしまいますよ~、銅貨5枚からばら売り出来ます~。まとめて買うとお得になりますよ~。ぜひ、この機会にお買い求めくださ~い」


主婦の心を掴むためには、安い、使いやすい、家族が喜ぶの3点を攻めれば釣りやすい。


「あの……、銅貨5枚分貰えませんか?」


――ほら釣れた……。私たちの勝ちだ。1人掛かれば連鎖していくのが主婦の心理。


「ありがとうございます~。銅貨5枚を空中に投げてください。奥のおじさんが金額を確認しだい、干し肉をお渡ししますので」


「そうですか、分かりました」


一人の女性は手に持っていた銅貨を頬り投げた。


ベスパとビー達が素早く移動し、銅貨を掴む。


そのまま、おじさんの方に運んで行く。


おじさんが金額を確認したら、金額分の干し肉を包んで台の上に置く。


それを見たビー達が、干し肉の入った包をすかさず持ち上げ、女性に届ける。


この工程を踏めば、私は呼び込み係、ベスパとビーたちは運ぶ係、おじさんは確認と干し肉を包む係、の3つに分担して行われる。


一番働けるビー達はとんでもなく早かった。


目にも止まらぬ速さで、お金と包みを運ぶ。


ベスパが空中で短い脚を組みながら、漂うほどの余裕を見せていた。


私が睨むと、ベスパは両手両足をブンブンふり、猛ダッシュしているように見せる。


その場から全く移動していないのに何をしているのかと思ったら、いきなりスーッと動き始めた。


翅を使って移動するということを、どうやら忘れていたらしい。バカすぎる。


「こっちにもちょうだい~!」


「こっちにもよ! 銀貨1枚分ね~!」


「おいおい! 多すぎるだろ。こんなの経験した覚えねえぞ!」


「おじさん、頑張ってください。今日で最高売上を更新しちゃいましょう!」


「エッグルでとっくに更新してるんだよ!」


「あらら……」


おじさんの露店前には人だかりが出来ていた。


ちょっとした人気地下アイドルが集められるほどの人が詰め寄り、硬貨を投げまくっている。


初詣の神社並みだ。


硬貨の雨に打たれそうになりながら、私は笑顔で呼び込みを続ける。


雨のように降り注ぐ硬貨と、大量の包みをビー達は運んでいる。


それなのに、なぜか一度も間違えない。


誰が、どれだけの金額を払っているのかを分かっているようだ。


「私がちゃんと記憶しているからですよ。ビーの司令塔である私がね」


ベスパが空中を漂いながら私に伝えてきた。


――なるほど。観察して命令するためにずっとそこにいたんだ。さっきは睨みつけてごめん。


「いえいえ、さっきは本当にさぼってましたから」


――あぁ?


「い、今はちゃんとやってますよ~」


「おい嬢ちゃん! もう干し肉がなくなるぞ」


――あ、やりすぎたか。


「すみません! 今日の販売は終了いたしました。またのご来店をお待ちしております」


商品が無くなってしまっては何も売れない。当たり前だ。


私の深々としたお礼を見て、買えなかった人たちは残念そうに帰っていく。


「ほら、おじさん、明日来てくれるかもしれない人がどっか行っちゃうよ」


「ああ……、えっと……。今日、買えなかった方は明日優先して販売させていただきますので、優先券をお持ちください!」


私がベスパに作らせておいた紙質の優先券。


この紙を貰ったら最後、明日この露店に来たくて仕方なくなる悪魔の紙。


人は優先されると嬉しくなっちゃう生き物だから、効果はあるはず。


昨日はいっぱい稼げたのに今日は全然ダメだ……、なんて悲劇でしかない。


毎日少しでも稼げたら、明日も頑張ろうと思える。だからこそ、常に稼ぎ続けないと。


おじさんは買えなかった人に優先券を配り顔と身なりを一致させていく。


常連さんになってくれるかもしれない人達だ、いい心がけだ。


優先券を受け取った人たちや、周りにいた人たちは露店の前からいなくなった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


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毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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