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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
大口契約が決まって順調そのもの! ~でも、街の様子がやっぱりおかしい偏~
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市場にいる、おじさんのもとへ

「キララ様、来ました。あれがドリミア教会のバートン車です」


私達が荷台に丁度着いた頃、私達の真横を車体が真っ白でギラギラの宝石を付けまくった豪華なバートン車が過ぎて行った。


「うわぁ、趣味悪……。教会の人なのに欲望丸出しなんですけど……」


「ビーにバートン車のあとを追わせていますので話の内容を聞けますが、どうしますか?」


「一応聞いておこうか、あんまり乗り気はしないけど」


「分かりました、繋ぎますね」


ベスパが一瞬光ると、聞き覚えのある声が頭の中に聞こえてきた。


「チッツ! いったいどうなっている。なぜ、同じ店が5店も現れたんだ!」


「落ち着いてください、神父様。今は元通りになったとの報告を受けております」


「そうか、だが……なぜだ。以前までは多くの人が行列を作っていただろ!」


「はい、理由は分かりませんが依存症の者が一斉にいなくなってしまったのです」


「それが1番の問題だ……。我々の作ったウトサが継続して依存させられないとなると、儂の将来が危ぶまれる。まだ王都へ送る前でよかった。今すぐ調べつくさなくては……」


――なるほど。魔法の持続時間を気にしているんだ。確かに魔力だから体から抜けたら依存しなくてすむんだよね。食べて魔力が一瞬で抜けたら依存させられない。それをあの人たちは恐れているんだ。もしそうなったらお金の木は一気に枯れる。加えて、いい情報も手に入れた。まだ王都に送ってないんだ。調べるのも時間が掛かるだろうからまだ余裕はありそう。その間に何か手を考えないと……。そう言えばこれ、盗み聞きだけど今日のご飯を食べないくらいの罰を課せば神様に許してもらえるかな。


「ベスパ、もしドリミア教会の人達が魔造ウトサを王都へ送ろうとしたら私に知らせて。それまでに解決策を考えよう」


「そうですね。さっきの話を聞く限りではまだ時間はありそうです。私達に出来る仕事であれば何でもお手伝いします。私はキララ様のスキルであり魔力ですから」


ベスパは胸を張って、威張った。


「はは……、そうだね」


この時、人生を賭けて戦わねばならないほど強大な敵だと、キララは、まだ知らない。


「あ、キララちゃん。戻ってきたんだ、お疲れさま」


セチアさんは荷台の帆から顔を出して私に手を振った。


「はい、凄く疲れました……。でも、いっぱい稼げたので万々歳です。もう一度市場に向います。売上金を分けないといけないので」


「それじゃあ、また何か好きな物を食べてもいい!」


セチアさんは相当食いしん坊みたいだ。


「まぁ、少しなら……」


食べ物を得られると聞いた3人は両手を天にあげて喜んでいる。


その姿を見て、私はちょっとばかし嬉しくなった。


現在の時刻は午後5時を過ぎている。


まだまだ明るいので急ぐ必要はないが、早く帰った方が安全なので移動を少し急ぐ。


市場は朝頃と同じくらい賑わっていた。


朝頃は冒険者さんが多かった印象だが、今は私服(しふく)の女性が多い。


多分、街の住民だろう。


市場で夕食の買い物をしている人が多く、見ている限り主婦の方が多かった。


目を血眼にして安い商品の中から品質の良い物を選んでいる。


いい商品が他の人に取られないように眼力を飛ばしあっていた。


どこの世界でもお母さんは強い。これは当たり前の摂理らしい。


私はレクーを少しずつ市場の中を進めていき、エッグルを売っていた露店に向う。


その間、何度か3人が食べたい物をおねだりしてきたので、買って食べさせていた。


私は人の波に流されるように進んでいき、ようやく目的の露店が見えてきた。


私は荷台を早めに降りて全く人気のない露店のもとへ向かう。


「はぁ~。全く売れねぇ……。そりゃそうか、干し肉は冒険者の方がよく買ってくしな……。俺も新鮮な肉を仕入れてみるか。皮は加工してからの方がいいかもな。はぁ、金があればな。何であんな卵買っちまったんだろう。俺ってバカだな……」


露店のおじさんは肘をつきながらブツブツと何かを言っていた。


近寄りがたい雰囲気を放ち、干し肉を買おうとしているお客さんを遠ざけていたのだ。


私はベスパに金貨50枚の袋を持たせて足早に露店に向っていく。


「おじさん、顔が怖いですよ。もっと笑った方がいいです」


私は初っ端に一番の改善点を提示する。


笑顔がなければ売れるものも売れない。


多少、顔の良くないアイドルでも笑顔が150点あれば、可愛いアイドルの70点の笑顔に勝る。


それと同じだ。


「君は、朝の嬢ちゃん。どうしたんだい。おじさんの顔が怖いのは生まれた時からだよ」


むっすりとしているおじさんの表情は怒っているのか悲しんでいるのか分からない。


「いい知らせがあります。聞きたいですか?」


「いい知らせ……。まさか、もう売れたのか!」


「その通りです。しかも金貨50枚で売れました。本物だったみたいですね。という訳で、おじさんには金貨40枚をお渡しします」


私は金貨10枚を抜き取った革製の袋をベスパに運ばせ、露店の台上に置いた。


「おおお! ありがたい。こんなに早く帰って来るとは思わなかったぞ。調べてもいいか」


「はい、もちろんです」


おじさんは瞳を金色に光らせて台上に10枚ずつ積み上げていく。


4本の金の柱が出来上がり、おじさんは満面の笑みになった。


「おじさん! 今の顔を維持しながら接客してみてください。きっと驚くほど売れますから」


「な、何だよいきなり……」


「その金貨を袋に早く入れてください。今、これだけ人がいるんです。商品の売り時ですよ。私が、おじさんの商品を見たところ、悪い点は特に見当たりませんでした。あとはおじさんの力量しだいです。売れないとぼやくのではなく、売る努力をしましょう!」


「き、聞いてたのか……。そうだな、気分の上がっている今なら売れるかもしれない」


おじさんは金貨を袋に入れ露店の後ろに閉まった。


「ふぅ~。よし、えっと……魔物から作った干し肉はいりませんか。冒険者に人気の食材となっております。日持ちもして、いつでも食べられる干し肉です。美味しいですよ。美味しいですよ~。魔物から作った干し肉はいりませんか……」


おじさんは頑張って接客するも、人があまり寄り付かなかった。


顔が怖いのもあるが絶妙に需要を捉えていない。


冒険者の人が多い朝ならそれでいいのだが、今いるのは家庭持ちのお母さん達だ。


そこをうまくつかないと、人はよってこない。


別にほっておいてもいいのだけど、私のお節介な性格が呼び起こされる。


――はぁ。まぁ減るもんじゃないし、少しくらい手伝って上げようかな。エッグルのお金分くらいは働かないと。あ、神様……。今、から人助けするのでさっきの盗み聞きと今からする小さな嘘を許してください。


私は心の中で神様に向って満面の笑みを浮かべる。


きっと私の笑顔なら神様でもいちころだろう。


神様がいるかは置いておく。なんせ、私の良心を傷つけないための配慮だからだ。


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