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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
大口契約が決まって順調そのもの! ~でも、街の様子がやっぱりおかしい偏~
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ドリミア教会が動いたらしい

「ベスパ……戻って来てたんだ」


「はい、街の人から魔力を丁度吸い終えたところです」


「そうなんだ。それじゃあ、今のところ暴動は起こってないんだね」


「はい。ですが、少々面倒な事態になりました」


「え……何が起きたの?」


「ドリミア教会が騒ぎを聞きつけて行動し始めたようです」


「騒ぎって……。お菓子を食べたかった人たちの方?」


「それもあります。ドリミア教会にとっては、いいお金の木ですからね。あと、ウシ君の不自然な動きと5店の箇所に同じ店が現れた現象も、ドリミア教会が動いた切っ掛けになります」


「つまり……私達が原因という訳ね」


「そうですね。それよりも、どうしましょうか。ドリミア教会に魔力を探知する人がいた場合、キララ様の使役しているビー達は気づかれてしまいます。依存症の住民は私達がほぼ魔造ウトサの魔力を吸い出したので先ほどのように店に押し寄せては来ないでしょう。ですから『光学迷彩』を一度解除された方がいいかと思います」


「そうだよね……。面倒な事態になりそうだし、さっさと解除しよう」


「了解しました」


ベスパは木箱を私に渡すと上空へ飛んで行く。


街の建物よりも高い位置で停止したベスパは8の字に飛んだあと眩い光を一瞬放った。


私の背筋に怖気が走り、恐怖に耐えられずその場に座り込みながら耳を塞ぐ。


眼を閉じようとした時、地面には無数の黒い斑点の影が現れていた。


今……私の上空は地獄絵図になっているのだと想像してしまう。


黒い斑点の陰は一度纏まり大きな影となったあと、波紋状に分散した。


「ふ~。さすがにあの数を纏めるのは労力がいりますね~」


「今……。何匹いたの……」


「へ? 聞きたいですか、100……」


「やっぱいい……。言わないで」


私はベスパの言葉を遮り、目の前に現れたショウさんのお店の扉に向う。


押し扉なので私は肩を使い、グッと押し込む。


私の力で丁度動く重さの扉は、身体を支えながら45度傾いた。


私は肩を滑らせてお店の中に入る。


「よし……。やっと戻って来れた」


ベスパは壁をすり抜けて私の頭上を8の字に飛ぶ。


「あ、キララさん。大丈夫でしたか。外がやけに騒がしかったんですけど……」


「ショウさん。時間がないのでパッと見てすぐ判断してください」


「え……。わ、分かりました」


私は地面に木箱を置き、ふたを開ける。


木屑だらけで卵は見えなかった。


私は手を使って木屑をそっとかき分けていくと、卵の表面がようやく現れた。


「これは……卵ですね。しかもブラディ・バードの卵。またの名をエッグル。凄く珍しい卵ですよ。僕は久々に見ましたね」


「あ、そうなんですか。私、お菓子にはこの大きな卵を使っているのだと、てっきり思っていました」


「いえいえ、毎回こんな貴重な卵を使っていたら、お菓子の値段は倍以上になってしまいますよ」


「それじゃあ、いつもはどんな卵を使っているんですか?」


「いつもはもう少し小さいガルスの卵を使っています。まぁ、エッグルの方が美味しいんですが、貴重な食材ですから滅多に手に入らないんですよ」


「ガルス……。聞いた覚えのない動物ですね」


「ガルスはブラディ・バードより小さく大人しい動物です。1日に数個の卵を産むので、とても重宝されているんですよ」


「そうなんですか。でもここら辺では全く見ないんですけど……」


「それはですね、王都の方で独占しているんです。卵は何にでも使えますし栄養も豊富ですから」


「また、王都ですか……。田舎は辛いですね」


「はは……、でも田舎は田舎で良いじゃないですか。私は王都より田舎の方が好きです。王都は人が多すますし、大きな建物が1つの街に詰まっていますから、息がつまります」


「まぁ、それもそうですね」


――私も東京にいるときはずっと苦しかったな。お爺ちゃんとお婆ちゃんのいた福井に年末に行くのが毎年の楽しみだったし。やっぱり都会はどこの世界も息がつまるのか……。


「それで、このエッグルを売ってもらえるんですか?」


「はい、そのつもりです。相場はいくらくらいなんですかね?」


「そうですね……。金貨50枚が妥当なんじゃないでしょうか」


「やっぱりそのくらいなんですね。えっと、買ってもらえますか?」


「ええ、もちろん買わせてもらいますよ。エッグルを使ってお菓子を作るのは、菓子職人の誉れですから」


「本当ですか。ありがとうございます。おじさんも喜ぶと思います」


「おじさん……?」


「はい、このエッグルは露店のおじさんが売っていたんですけど、値段が高すぎて誰にも買われていなかったんです。そこで私は提案したんです。『買ってくれそうな人がいるから貸してください』と。『もし売れたら分け前をください』と付け加えてお願いしたら、許しを貰えたんです」


「はぁ……、キララさんは商人の様な考え方の持ち主なんですね」


「確かにそうかもしれませんね」


「それじゃあ、待っていてください。残りの金貨50枚を持ってきます」


ショウさんは奥の方へ向かい、数分で戻って来た。


「この袋に金貨50枚入っています。えっと……重いですけど、持てますか?」


「とりあえず、ショーケースの上に置いてもらえますか」


「分かりました」


ショウさんは透明なショーケースの上に金貨50枚の入った袋を置いた。


――ベスパ、あの袋を持ち上げてくれる。ついでに金貨50枚が、ちゃんと入っているか重さで確認して。


「了解しました!」


ベスパは革製の大きな袋の口紐を持ち、空中へ浮かせた。


「……はい。金貨50枚、確かにあります」


――そう、良かった。


「へぇ、物を浮かせる魔法ですか、凄いですね。でも、魔法なら魔法陣が見えるはずなんですが……」


「えっと、これは魔法じゃないです。一応、私のスキルなんですよ」


「物を浮かせるスキルですか、凄く便利ですね。キララさんの職業に合っています」


「あはは……そうですね。確かに便利ですよ」


「私のスキルは『手芸(ハンドクラフト)』ですから。この職業を選びました。やはりスキルに合った職業をするべきですね」


「そ、そうですね……」


私は最後に見たかった食べ物を眺める。


ショーケースに飾られていたお菓子はどれもキラキラと輝いていた。


照明など当てておらず、ただケースの中に入れられているだけなのに、私の目を引くのだ。


金貨の光沢などとは比べ物にならず、赤い木の実でさえ宝石に見える。


――こりゃあ、値段が高くても買う人がいるのも納得だな。どう考えても美味しいでしょ……。ショウさんのスキル『手芸(ハンドクラフト)』はパティシエにとって最高の恩恵を与えてくれるんだろうな。


「それじゃあ、ショウさん。私はまた7日後に来ます。あ、言い忘れてましたけど、もうすぐドリミア教会の人が来るので軽くあしらってください。作ったフリでも何でもいいので、出来るだけ刺激しないよう穏やかにお願いします」


「え……。あ、はい。分かりました」


ショウさんは何が何だか分かっていない様子だった。


私はエッグルの入った木箱をショウさんに渡して店を出る。


「さてと、ベスパ。どうしようか」


「どうしようかとは?」


「魔造ウトサだよ。あんなウトサがばらまかれたら、きっと酷い世の中になっちゃう。今でも貧乏な人がたくさんいるのにさらに搾取されたら、生きていけないよ」


「ですが、私達には難しい話ですよ。教会と私達では規模の大きさが違います」


「そうだけど……。何もしないのは、知ってしまった身として、いけ好かないと言うか、何と言うか……」


「そうですね。あ、キララ様、とりあえず移動しましょう。すぐそこまでドリミア教会のバートン車が迫っています。ショウさんのお店を目指しているようなので、見つかると厄介です」


「そうだった、急ごう」


私達はレクー達の待つ荷台に走る。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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