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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
大口契約が決まって順調そのもの! ~でも、街の様子がやっぱりおかしい偏~
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魔力で作られたウトサ

「キララさんも見たと思いますが、狂人化です。お菓子を食べないと気が狂ったように暴れ出します。お金を出さなければ買えないので、借金する人や家の物を売ってお金にしてくる人もいました。皆さん、ウトサの悪魔に取りつかれたのです」


「ウトサの悪魔、最悪な響きですね。嫌な未来しか見えません……」


「僕は元々ウトサに耐性があるのか、そこまで酷い症状は見られませんでした。でも中には1枚のクッキーを食べただけで、全身の震えが止まらなくなってしまうほど、耐性の無い人もいたのです。僕はドリミア教会にすぐ向かい、話しました。『このウトサは危険だ』と……。ただ、彼らは笑いました。『最高じゃないか』と……。『これ以上金になる商品はない』とそう言ったんです」


「え……。お金になる?」


「はい、ドリミア教会はこのウトサを使ったお菓子を量産し売り捌く。すると、大量の依存者が発生し再度購入する。そうなると、購入した人のお金の歯車が回り始めます。働く者はより一層働き、お金を持っている者はより一層お金を払う。そう考えているのだと思います。ですが、そんな甘い話ではありません。僕が見てきたのは異常な狂人です。何度も騎士団にお世話になりました。ただ、街の人へ全く報道されません。どうやらもみ消されているようです」


「あ……もしかしてこの話、私は聞かない方がよかったですかね」


「大丈夫です。僕が話したと言わなければ、気づかれません。ドリミア教会が言うには『何かに異常なほど求める傾向』を依存症というそうです。その傾向のある人を依存者と呼んでいました。彼らは大量の依存者を出し、大金を巻き上げ、ウトサによる人の支配を進める見込みを立てているみたいです」


「な、何ですか……。その話……。訳が全く分かりません」


「そんな非現実な話と思われるかもしれませんが、現実に起ろうとしています。キララさんは決してお菓子を食べないでください。僕は大量の人の人生を狂わせてしまいました……。僕は裁かれるべきです」


ショウさんはどんどん暗い顔になっていく。


「ショウさん……。でも、ショウさんの作った高級なお菓子が大好きな人はいっぱい、いると思います。それに、まだ間に合いますよ。今から販売をやめれば、止められるんじゃ……」


「止められません。既に王都での使用を視野に入れているようです。魔造のウトサの危険な部分は教会によって隠蔽されるでしょう。このままではルークス王国が崩壊します。僕の大好きなお菓子が悪魔の遺物になるなんて……」


「悪魔の遺物。何ですかその物騒な名前」


「伝え話ですよ。世界を滅ぼしかけた悪魔たちの遺物は、今でもこの世界に残っているんです」


「この世界に悪魔なんているんですか。そんな話、1度も聞いた覚えがありません」


「まぁ、悪魔がいるかどうかは僕にも分かりません。ただ、教会の書物に悪魔が出てくるんですよ。何千年も前にはいたのでしょうね……。書物には『悪事を働いた悪魔を正教会の教皇が封じた』と伝えられています。あと遺物に関して一番なじみ深いのが瘴気ですね」


「瘴気……、あれが悪魔の遺物なんですか?」


「そう伝えられています。他にシーミウも悪魔の遺物です」


「シーミウ……。えっと確かソウルが取れる場所ですよね」


「はい。他にも多くの悪魔の遺物が残されています。そして、今回ドリミア教会の作ったウトサは間違いなく悪魔の遺物に匹敵するほど世界に影響を与えるでしょう。それを阻止できなかった、僕はいったいどうすれば……」


ショウさんは頭を抱えてテーブルに突っ伏した。


「ん~、どうしたらいいんですかね……。とりあえず、魔造ウトサを見せてください。食べたりはしないので」


「へ……?」


ショウさんは泣きそうな顔で私を見てきた。


私は魔造ウトサがどのような物なのかを知ろうと思った。


考えるよりも行動するのは私の得意分野。


即行動すれば、そのあとに考える時間はいくらでもつくれる。


まず問題点を見つけて、改善案を考える。


考えてから行動するより、きっと行動してから考えた方が結果に結びつきやすいだろう。


私の経験談で言うとだが……。


「分かりました。僕に着いてきてください」


ショウさんは立ち上がり、私達は場所を移動した。


私は倉庫らしき場所に案内された。


倉庫の中に入った瞬間に私は驚いてしまい、呼吸が止まってしまった。


「何ですかここ~! 凄い~! これはソウル、こっちはウトサ。調味料がこんなにいっぱいあるなんて!」


「それは高級品のウトサ。少しのざらつきと湿った感覚、指で擦るとべた付くのが特徴です」


私の目の前に宝の山がある、大きな袋に入れられた宝が大量に……。


「えっと、この量のウトサはさすがに値段が高いですよね。小袋でも金貨50枚とか訳分からない金額ですし」


「そうですね。でも、僕は王都から大量に取り寄せているので、その分まけてもらっています。まぁ……それでも金貨5000枚は超えるんですけどね」


「き……金貨5000枚」


今……私は目の前にある大量の粉に、それほどの価値があるのだと改めて痛感する。


ショウさんは倉庫の中から1つの袋を持ち上げ、持ってきた。


「今、僕の手に持っている袋に入っているのが、魔法によって作られたウトサ。純白でとてもサラサラしているのが特徴ですね。ざらつきはほとんど同じで指で擦っても、べた付きは少ないです」


私はショウさんの持つ袋の中を覗くために顔を少し近づける。


目に飛び込んできたのは真っ白な絵の具にハイライトを入れたような光沢をもつ粉。


私はこの手で触れてみたくなった。


手を入れようとするとショウさんは魔造ウトサの入った袋を後ろに下げ、私から離れさせる。


「何しているんですか! 危険です」


「ご……ごめんなさい」


私は手を引いて腕を握る。


――ベスパ、あの白い粉の成分を調べられる?


「可能です。魔力で作られた粉でしたら、魔力である私が調べられないわけありません。では少し調べさせていただきます」


ベスパは魔造ウトサの真上に飛んで行き、川に飛び込むように突っ込んで行った。


――ベスパ……。どう、分かった?


べスパからの返信が無い。


――どうしたんだろう。また私の命令を聞かない状態に入ってしまったのかな。


私は不安になり、再度袋を見下ろす。


純白の色は全く変わらない。


――ベスパ、ベスパ。返事して。


「す、すみません……。キララ様、一度死んでしまいました」


――ベスパ、大丈夫だったのって……え、一度死んだ。


「はい、あまりにも悪質な魔力で私の体内を犯されました。大量の魔力を一気に取り込んだからかもしれません。ただ、瘴気でも何とか耐えられた私の体が即死するのは、相当危険な粉かと思います。粉の正体はウトサのような結晶物状に変えられた魔力で間違いありません。しかも微量に魔法の力を感じます。『幻覚魔法』と『精神魔法』の2種類の魔法を感知しました。『幻覚魔法』で味を操作して甘みと感じさせ『精神魔法』で心を操作し幸福感を与える。ウトサの風上にも置けない代物ですね」


――そんなに酷い粉だったなんて……。そりゃあ、この粉でお菓子を作ったら頭おかしくなっちゃうよ。もしこの粉が王国中にバラ撒かれたら、いったいどうなっちゃうのかな。


「崩壊するのは、ほぼ確実なのではないでしょか。大量に摂取し続ければ人格が崩壊し死に至ります。少量だとしても、不安、苛立ち、不快感、憎悪、倦怠感、あらゆる不幸感情をいだき、それを解消するために同じ魔造ウトサを使ったお菓子に手をつける。依存者の確立です。この粉を推奨するドリミア教会とは……いったい何者なのでしょうか」


――ほんとだよね。お菓子をこんな風に悪用するなんて。許せない……。


「ショウさん! 少しどいてください。その魔造ウトサを私の魔法で燃やし尽くしてやります!」


「あわわわ! ちょ、ちょっと待って! それはダメだ!」


ショウさんは慌てて袋を抱きかかえ守る。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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