表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
大口契約が決まって順調そのもの! ~でも、街の様子がやっぱりおかしい偏~
195/1149

お菓子の奪い合い

私の視界は街並みの風景から、人の頭に変わった。


「こっちに渡せよ!!」


「これは私のよ!!」


「おい!! まだなのか!! さっさと食ねえと死んじまいそうなんだよ!!」


「クッキー1枚でいい! 速く売ってくれ! な! おい、それは俺のクッキーだぞ!!」


「先に買った者勝ちだ! とろいんだよ!!」


――なにこれ……。


「見てもらっている通りですよ」


私の視線の先で多くの人がお菓子を奪い合っている。


店員さんは疲れ果て、倒れている人すらいた。


忙しすぎて助けすら呼びに行けないのか、店員の1人減った状態でお店を回していた。


――ショウさんはいるの?


「はい、おられますよ。様子を窺いましょうか?」


――うん、お願い。


ベスパは少し場所を移動し、ショウさんのいる調理室に向かった。


「早く小麦粉を持って来て! ベリーも! あ~~! どうなってるんだ、こんなの聞いてないぞ!」


ショウさんは、ボウルと泡だて器を持ち、思いっきり混ぜている。


ほかのパティシエさん達もせっせと働いているが、注文に全く間に合っていない。


――ショウさんの言動から察するに、きっとこの状況は想定外なのだろう。売れても売れても人が入って来るから、休む時間がないんだ。さすがに休まないともっと人が倒れちゃう。ベスパ、他の場所にお菓子屋さんはないの?


「え、他のお店ですか……。ありますけど、どうするんですか?」


――何店舗あるの?


「えっと、大小含めて5店舗あります」


――それじゃあ、その5店舗にビー達を向かわせて外観を『光学迷彩』の応用で『ベリーズ・スウィート』に見せかけてくれる。あと、本物のお店は『光学迷彩』で見えないように覆って隠して。


「なるほど、違う店を『ベリーズ・スウィート』にして客を移動させるんですね」


――そう。素面の思考なら引っかかる人はいないだろうけど、みんな気が動転してる。上手く行くかも知れない。


「了解しました! キララ様、今すぐお店の中に入って来てください。店の中にウシ君の映像を流し、客を追い出すのでその隙に」


――なるほど、頭いいね。


「キララ様ほどじゃないですよ」


ベスパの顔がニヤついているとすぐに分かってしまうのは、やはり私のスキルなのだなと実感する。


「レクー。私は、あのお店に行ってくるから、子供たちをお願い!」


レクーは頭を縦に振り、人気の少ない所に移動する。


私はお店から少し離れた所で、人がお店から出てくるのを待つ。


――ベスパ、お願い。


「了解しました。まずウシ君の激怒した映像をウシ君の形を模ったビー達に映し、店内に出現させます」


「ムオ~~!! フーーーフーーーフーーー!!」


(俺のミルク(雌モークル)をどこへやった! ぶっどばすぞごらーー! さっさとやらせろ!)


「な! 何でこんな所にモークルがいるんだ!!」


「しかもオスじゃねえか!! 逃げろ!! 殺されるぞ!!」


お店から大量の人が飛び出してきた。


私は両手をほぼ肩幅に離して地につけ、両足を前後に開いてかがんだ姿勢を取る。


「よ~~い……どん!」


私は人の隙間を掻い潜るように走り抜ける。


私には力はないが運動神経は結構いい方なのだ。


ショルダースカートを着ているので、激しく動いてもズレ落ちずとても走りやすい。


お店の中に残った人を追い出すために、入り口からウシ君の姿が現れた。


「うわ……こっわ。ありゃ、誰でも逃げるわ」


「ブロ~~~~ン!! ブルーーーー!! ブルルーーーー!!」


(ミルク! どこだ! 愛しのミルク!! おい! 誰も俺のミルクとやってねーだろーな!!)


「キララ様。店内からお客さんは全ていなくなりました」


――分かった。私が店の中に飛び込んだ瞬間、お店を消して他の5店舗を『ベリーズ・スウィート』に見せかけて。


「了解です。ウシ君は店の前で見張らせておきましょう。少しは時間が稼げるはずです」


――そうだね。でも、私が飛び込む時は分散させてよね。私、また気絶しちゃうから。


「大丈夫です。すでに、キララ様が近づけば分散するよう指示してあります。その後、また元に戻りますから」


――そんな高度な連携がとれるんだ。なら、思いっきり飛び込んでもいいんだね。


「はい、扉があるので気をつけてください」


――なら、私が飛び込む瞬間に開けて。


「了解しました」


「ブルルーー、ブルルーー」


(チ……チーズ……。違うんだ……。さっきは、なんかよく分からないんだけど……言わされて)


「はぁあ~~! てりゃあ!」


私は誰もいなくなったお店の入り口に向って、全力で疾走して飛び込む。


ウシ君の映像は一瞬で散り散りになり多数のビーが現れたので、私は目をすぐさま閉じる。


自分がどこにいるのか分からなくなり、店内に入るころには顔面から床に衝突したあと、すこし滑り停止した。


両手両足がパタッと床に着いたところで、私は全身から魔力が一気に無くなる感覚を味わう。


――うぅぅ……気持ち悪い。完全に魔力の使い過ぎだ……。ベスパ……どれくらいの魔力使ったの……。


「ざっとキララ様の体内にある80%の魔力を消費しました。5店全ての外装をこの店と全く同じように見せかけています。加えて、この店は今、周りの建物と同化しレンガの壁のように見えているはずです」


――そ……そう。どれくらいの時間もちそう。


「キララ様の魔力回復は尋常ではないほど早いので、半永久ですね。ビー達に停止を命令していただかないと、ビー達は寿命尽きるまでその場にい続けてしまいます」


――1日で十分でしょ……。えっと、外にいた人の動きはどうなってる。


「皆さん困惑していますが……、ちらほらと気づき始めたようです」


「おい! 店はどこに行った! ここにあったはずだろ!」


「あっちに、店があるぞ! 俺達が間違ってたんだ!」


「こっちにもあるぞ! 他の人に先を越されるな!」


店の前にいた人たちは5店に気づき、一目散に走る。


「だ、大丈夫ですか、お客様……」


店員さんの1人がうつ伏せで倒れている私に話しかけてくれた。


「大丈夫です、魔力を少し使いすぎただけなので」


私は腕の力を使って体を持ち上げようとするも、なかなか起き上がれない。


「そうですか……。それなら良かったです……」


店員さんは体から魂が抜けたように、その場に座り込んでしまった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ